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33 エン心力

33 エン()心力


 そろそろ年が暮れようとしている。

 この世界の一年は336日だ。

 そしてボクは3才になっていた。

 そんな、とある日。

 ネットスーパーの能力の中の一コーナー《教えて! パスティエルちゃん》に新たなイベントが出現した。

 それは《年末恒例 大福引き大会!》というものだった。

 福引き?

 去年の年末にはなかったよな?

 と、言う事は……。

 あの薄紫髪ツインテール少女神、あっちの世界の時間の流れでイベント進行させてるのを慌てて修正して来たか、いきなり思い付きで始めたかのどちらかだろうな。おそらく、その両方だとボクは思う。

 というのも、時々こっちの世界では時季外れの『ウィンターセール』のイベントとか、こっちでは日にちがずれてる『19日はオトク(十九)の日!』とか、そもそもこっちにはない『勤労感謝の日には肩叩き券を!』とか、ちょくちょく広告が入っていた。最後のは売りものか?

 あと、一ヶ月28日のこの世界で『29日は(ニク)祭り』ってなんだよ!

 ねえよ、29日! 閏年うるうどしふくめて。

 明らかにあっちの日にち感覚で送ってきてるだろ!

 と思っていたら、今回は時期があっているか。

 恐らく、ちょいちょい修正しているのだろう。

 何気にいつの間にか一日一回の来店ポイントの説明文の「365日」が「336日」になっていたし。

 そう考え出すと、あの薄紫髪ツインテール少女神のことだから、たまたま、向こうの世界と時期が合っていたという線もまだ捨てきれない気がして来た。

 今頃はクシャミでもしてるだろうか? ……神様ってクシャミするのかな?

 まあいいや。

 どっちにしろ、買わないと福引き券なんててにはいらないから、今のボクには関係ないや。

 こういうケースには前にも心当たりがある。

 少し前に見つけた10パーセント割引チケットの時は

『お会計の際、現金でお支払いの時のみご使用になれます』

 とかだったり、

『一回のお会計が1000円以上からご利用になれます』

 だったしな。

 まっ、まあ、これは想定の範疇はんちゅう内だったし、前もって心構えもできていたからそれほど精神的にダメージも受けなかった。

 って、自分の能力の説明文でメンタルをきたえられてるって、どうなんだろ?

 と、思いながらも一応(ひま)だし詳細を読んでいったら……。


   *   *   *


 今回は福引き券を3回分サービス!


   《OK》


   *   *   *


 おおっ!

 今回はなかなかいきはからいをするじゃないか!

 と言う事は間違いなく何かしらの前世地球の品物が手に入ると言う事になる!

「う~ん」

 折角の福引券だし

 これはやるしかないでしょ。

 前にエストグィーナスお姉ちゃんと話したときもボクの運が上がっているはずって言っていたし。

   ~   ~   ~

『セイルは我の加護があるからのう。土に関する魔法の成功しやすさや他の精霊に遭遇しやすさなどの運気はかなり上がっておるぞ』

「本当!? もしかして普通の運も上がってたりする?」

『うむ、断言はできぬが、我の加護じゃ、恐らくは多少ではあるがあがっているであろうな』

「やったー!」

『そうか、セイルは運気が上がってうれしいのか』

「あい!」

   ~   ~   ~

 エストグィーナスお姉ちゃんも一緒になって喜んでくれていたし。

 で、景品は? っと、

 ……。


  《特等賞(金色)……豪華! ギリシア旅行!》


 ……。

 いきなりコレか。

 異世界でこれ当ててどうしろと? あの薄紫髪ツインテール少女神め、やっぱり思い付きであっちの画面を流用したな。

 直したのはイベントスケジュールだけかよ!

 仮に特等賞を当てたとして、異世界でどうしろと!

 向こうに転移でもさせてくれるのか? ……ないな。

 仮に会ったとしても赤ちゃんの今の自分じゃ、どうすることも出来ないし……。


   《1等賞(赤色)……50型薄型テレビ》


 コレ、当たっても電気とか電波とか来てないんだけど。受信料の徴収員ちょうしゅういんだけはしっかり来そうだな。


   《2等賞(青色)……お楽しみ、当商店街グルメ詰め合わせ箱》


 おお、まともに見える。

 まあ、特等賞も1等賞も、ここが異世界でなければまともなんだけどなあ。

 って、言うか、当商店街って何処だよ!


   《3等賞(黄色)……当商店街のみ有効、商品券一万円分(中位:おつりは出ません)》


 だ~か~ら~、当商店街って何処だよ!


   《4等賞(緑色)……防災用飲料水(1箱、2l6本を3箱)》


 うん、地域の商店街の福引っぽい。

 っていうか、妙に現実味のある景品が来たな。


   《5等賞(ピンク色)…………トラベルグッズセット》


 もう、この辺は福引の定番っぽくなってきたなあ。

 となるとお次は。


   《6等賞(白色)……ポケットティッシュ》


 うん、やっぱり。

 事実上のハズレだな。福引だから外れなしという事で。

 だけど、何だろう。今の状況じゃ、特等賞の『豪華! ギリシア旅行!』より、6等賞の『ポケットティッシュ』の方が役に立ちそうではるかに価値があって貴重だ。

 一等賞も仮に当たったとしても使いようがないし。

 それとも、当たったら使えるように神様パワーで、なんとかしてくれるのだろうか?

 ないな。

 それにしても、賞品のラインナップから見て、完全に何処どこかの地方の古き良き時代の商店街の福引イベントの流用じゃないか。

 商品の中身は新旧織り交ざっているみたいだけど。

 あれっ? でも?

 もしかしたら、

 この3等賞の「当商店街のみ有効、商品券一万円分」っていうの、このネットスーパーで使うことが出来るのでは?

 俄然がぜんやる気が出て来た!

 ねらうは3等賞!

 次点で2等賞か4等賞ってところかな。

 よしっ! やるぞ!

 右下には法被はっぴを着た薄紫ツインテール少女神のパスティエルが片手でクジのガラガラの箱のハンドルを回し、玉が出るともう片方の手に持っているハンドベルを鳴らす様に振っテイルアニメーションがループしている。

 ほんと、毎回毎回このアニメーション暇なのか? ……そんなわけはないと思うんだけど。


 ガラガラガラガラガラガラ


 コトン! コロコロコロコロ


 玉の色は白。


   *   *   *


   『6等賞、ポケットティッシュです』


   《OK》


   *   *   *



 《OK》ボタンを押すと、

 いきなり目の前の空間が黒くゆがみ、そこから音も無く何かが出現した。

 それが今当てたポケットティッシュであろうことは想像がつくので、ボクはそれを拾い上げてマジマジと観察する。

 異世界初の地球の品物だ。

 感慨かんがい一入ひとしおだな。

 ……。

 ……。

 ……。

 デカデカと「残念賞!」とこれ見よがしに書いてある。

 なんだろう。初めてのなつかしい前世の地球の品物を手に入れたというのに、この言い表せない感情は?

 ……考えるのはよそう。次だ次!


 ガラガラガラガラガラガラ


 コトン! コロコロコロコロ


 白、6等賞、ポケットティッシュか。


   *   *   *


   『6等賞、ポケットティッシュです』


   《OK》


   *   *   *


 う~ん。やっぱりそううまくはいかないよな。

 これで最後か。

 頼む! ボクの運気よ!


 ガラガラガラガラガラガラ


 コトン! コロコロコロコロ


 おっ、ピンク!

 何等だっけ?


   *   *   *


   『おめでとうございます! 5等賞、トラベルグッズセットです!』


   《OK》


   *   *   *


 えっと、5等賞、旅行セット、か。

 ……ボクのクジ運なんて、所詮しょせんこんなもんか。

 まあ、こんなもんだよな。

 そうそう都合よくいくわけもないか。

 今回は初めて金券らしきものが手に入る可能性が出て来たことが分かっただけでも良しとしておこう。

 気を取り直して、ビニールポーチに入っている中身は、圧縮ミニタオル、携帯用歯磨きセット、ミニ石鹸、ミニシャンプー、髭剃り用カミソリ、くし綿棒めんぼう、入浴剤、化粧水か。

 結構多いな。定番といえば定番だけど。男女兼用っぽいし。

 まあ、石鹸は有り難いかな。

 シャンプーも何回か使えそうだし。

 ようやく、前世地球の品物を手に入れたという感動が込み上がってきた気がする。

 のだけど……。

 さて、折角始めて前世地球の品物を出せたはいいけど、

 コレ、どうしようかな?

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