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2 エン無き衆生は度し難し

2 エン()無き衆生は度し難し


 折角異世界転生で特殊スキル『ネットスーパー』を貰い、前世の記憶も有るのに、まさかの異世界で円建て!

 どうすればいいんだよ!

 聞かなかったぼくが悪いのか?

 そりゃあ、新しい電気製品とかゲームとかの説明書とかは、はじめの操作方法を少し読んだら困るまで見ない方だけど……異世界だぞ、異世界! 普通、現地通貨が使えるって考えるよな。もしくは電子マネーに換える手段があるとか……まぁ、異世界に電子マネーとか無茶言ってるのは分かるけどさ。

 流石に円建てはないだろ、円建ては。

 もしかして、「日本のネットスーパー」って言ったのがいけなかったのか?

 円が無ければ購入することが出来ない。

 その円がこの異世界では手に入らずどうしようもない。

 つまり、宝の持ち腐れ……。

 終わった……って言うか、完全に欠陥能力じゃないか! これじゃ能力ないのと変わらない。

 頭を抱えたくなるが、如何せん、手が短すぎて抱え込むことができない。

 自分が前世、保険会社に勤めていたせいか『充実のサポート体制』という言葉が頭にちらつく。

 仮想通貨を使えるようにしろとか言わないけど、せめて現地通貨が使える様にはしておいて欲しかった。

 ん? 仮想通貨に換える手段? 説明文に何かヒントはないか?

 ボクはそう考え、確かヘルプ画面みたいなのがあったと思い出し開いてみることにした。

(ネットスーパー オープン!)


 画面? を開くとあの薄紫ツインテール少女神が何処かの制服らしきものを着てペコリとお辞儀するアニメーションが出てくる。

 うん、取りあえずこれに関しては目を瞑りヒントを探すことに集中することにしよう。

 ……。

 ……。

 ……。

 あっ! あった!

 ある事にはあったんだけど。


   *   *   *


 《教えて!パスティエルちゃん》

   困った時の説明書


   *   *   *


 ……。

 何かとても不本意だが、仕方なく《教えて! パスティエルちゃん!》に意識を集中して説明文を読んでいく。

 どうやら意識を集中すればボタンを押したような動きになるらしい。 

 さてさて、何かヒントになるようなことはないだろうか。

 画面が変わったと同時に、パスティエルマーケットの画面に薄紫ツインテール少女神のデフォルメキャラが踊っているのが目に入ってくる。

 何と無く今はあんまり連続して見たくなかったなあこの顔。

 というか何だろうこの踊り? そこはかとなく蠅叩きか何かで叩き落としたくなるような衝動に駆られるんだが。赤子で身動きも取れないのがもどかしい。

 自分でもわかるくらいひくつく表情を抑えつつ、何かヒントになりそうな事が書いてないかと読み進めていく。

 すると一つ、目に止まった項目があった。


   *   *   *


 『来店ポイント』 一日一度だけ来店の際に既定のポイントが溜まります。

  (365日会いに来てくださいね。あっ、閏年は366日会いに来てくださいね)


   *   *   *


「これだ!」

「正に救いの手!」

 捨てる神あれば拾う神あり……って、どっちも薄紫髪ツインテール少女神だよな。マッチポンプかよ。

 しかも、コメントが微妙だぞ。

 で、この来店ポイント。既定のポイントが貯まるという事だが、更に読み進めていくと現在は1日1ポイントしかたまらないらしい。

 はあ、一日の補償が1ポイントか。

 一体ちゃんと買い物が出来る日は何時になる事やら。まったく、気が遠くなりそうだよ。

 まあ、兎に角、これで全く使えないスキルではなくなった。

 限りなく使い勝手が悪いのは変わらないが、ゼロよりはマシと思うしかないか。

 後はどのくらいで貯まるかだな。

 いや、1日1ポイントずつなのは分かっているんだが、この異世界……この世界がどのくらいの周期で一年を形成しているかを知っておかないと、この先のライフプランを立て難いしね。

 絶対、このコメントにある365日って、元の日本の感覚そのままだよな。

 おそらくは、日本のネットスーパーの画面をそのまま流用しただろうことが、円建ての件と合わせてこれで証明できた気がする。

 手を抜いたのか、うっかりミスなのかは判断が付かないけどね。

 そんな事を考えていると、部屋の外でガサゴソと音がして複数の人の気配がした。

 この状況なら十中八九親が入ってこようとしているのだろう。

 ガタッと音がして、案の定、ゆっくりドアが開いて、この世界の両親らしき若い男女が入って来た。

 見た感じ両親ともに18歳位かな? あの薄紫ツインテール少女神が魔法のある世界って言っていたからファンタジー世界をイメージ、具体的には中世ヨーロッパ風をイメージしていたので、両親の顔立ちもヨーロッパ系を想像していたんだけど、どうやら予想通りだったらしい。

 母親であろう人は銀色の髪を肩口辺りまで伸ばしている。顔は優しそうで凄い美人という訳でもないが平均よりやや美人といった感じだろうか。

 父親の方もイケメンって程ではないが中の上ってところだろうか。彫りは深い。結構鍛えている感じはするかな。

 この世界の基準でどうかは分からないけど、まあ、容姿は普通の優しそうな父親と母親のようで、一先ず良かった。

 妹たちが暇潰しにと病室に持って来てくれていた異世界転生物の小説の中にあった、攫われて来たスタートとか、捨てられていたスタートとかでなくて安心したよ。

 今のこの状態で、このスキルだけじゃ放置されたらまず間違い無く餓死するしかないだろうな。しかも自我有りの状態で……うわあ、そう考えると、赤ちゃんの頃から自我が有るこの状態って、自分が前世患った病気と重なって来て何か胸が締め付けられるような恐怖感に襲われる。

 思わず声が出てしまう。この赤ちゃんの身体にボクの精神が引っ張られているのか感情が抑えられなかった。

 と言っても口から突いて出た言葉は意味不明の鳴き声の様にしかならなかったが……。

 それに反応して、両親が慌てたようにこちらに近付いてくる。

 つい醜態をさらしてしまったか。申し訳ない事をしてしまった……って、自分は現在、赤ちゃんか。

 それはさておき、丁度良かった。まあ、すぐにとはいかないだろうけど、何でもいいから情報が欲しいところだったし、赤ちゃんである以上、自分から質問して答えてもらえるのは大分先の事になりそうだが、耳を傾けていればヒントも出るだろうからそこから類推することも可能だろう。

 両親がボクが寝ている揺り籠に近づき、母親がボクの身体を抱え上げて顔を見つめて来る。ちょっと照れくさい。父親も隣で覗き込んでくる。二人ともなんか幸せそうだ。

 そして、

「!”#$%&’()」

「*+{><」

(えっ!)

 何言ってるか分からない。

 そんな!

 円建てに引き続き、

 言葉が解らない、だと!

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