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罵られ捨てられた少年と魔物使いの少女  作者: 儚月
第一章 少年の出会い
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第八話 シンの覚悟

僕たちが見守る中シンさんと騎士の戦闘が始まった。その戦いは壮絶を極め、あらかじめ撤退していたこちらには被害はなかったが巻き込まれた敵は軒並み吹き飛ばされていた。


『お前だけは許さん。絶対に殺す』


憎悪がこもった声で伝えるのは明確な殺意。かなり離れている僕らの背中にも悪寒が走った。


「怖いですね。もっとも、それができればの話ですが。」


相対する騎士はまだ余裕のようだった。


『あの時のようにはもうさせない!』


全力で繰り出される無数の斬撃は騎士に届かず、騎士が振るう剣はシンさんの体を切りつけていった。シンは過去と何も変わってないことをまだ理解できていなかった。


「そろそろ飽きてきましたね。もう終わらせましょう」


そう言った騎士の振るった剣がシンさんの横を通り過ぎると、その風圧だけで地面が抉れて言った。その様子を見てもまだ真の頭の中は怒りと憎悪によって支配されていた。


「シン! 何やってるの。冷静さが一番大切だって教えてくれたのはシンでしょ!」


カレンがそう叫んでいるがシンには聞こえていないようだった。だが、シンと相対している騎士がカレンの言葉に反応した。


「ほぉ。あれがお前の新しい仲間か。今回も楽しめそうだ。」


そう言い終わらないうちに僕たちに向かって駆け出した。気づいた時には騎士はカレンに向けて剣を振り下ろしていた。遠くでシンさんがその光景を見て冷静さを取り戻し、戻ってきているが間に合いそうにない。無我夢中で僕はただの障壁を全力で展開していた。その障壁が騎士の剣を受け止めるとバラバラに崩れてしまった。騎士は深い層に2撃目を繰り出そうとしているが、そんな呑気なことをシンさんが許すはずもなく、戻ってきたシンさんに無防備な腹に一撃入れられていた。

吹き飛んだ騎士は空中で体制を整え、距離をとって様子を見ていた。


シンは思った、まるであの時と同じだと


.........



その昔、シンがまだ若かったころのお話。


若かったころのシンは自分の種族的な強さに驕っていた。実際、彼の周りには彼より強いものは誰もいなかった。彼はその態度のせいでほとんど友達がいなかった。そんな中よく一緒に過ごした親友が一人いた。彼の名はコウといい同じ狼の仲間だった。


そんな時、事件が起こった。

自分の力を過信していたシンは魔王領の端へ侵入していた。コウはもちろん止めたが結局シンに言い負かされてしまい二人で一緒に行くこととなった。未知の場所を楽しんでいるシンは時間を忘れいろいろなところに行っていた。


そんな彼らは運悪く巡回中だった黒騎士の隊長班に見つかってしまう。コウは戦闘がほとんどできずシンが一人で戦っていた。最初に4人いたうちの3人を倒し一対一となった時に悲劇は起きた。最後の一人になるまで傍観を決め込んでいた大剣を背負った騎士は剣を抜くと縦に一閃振り払った。その先にいたコウがまともに受けて吹き飛んだ。


『コウ!』


シンが叫んでコウのもとへ向かいだすと。


「戦闘中によそ見とは、ずいぶん余裕ですね。」


その言葉とともにシンも吹き飛ばされる。吹き飛ばされた先でコウと一緒に倒れこむ。


「やれやれ。最近は侵入者が多くて困ります。」


そう言ってゆっくり騎士が歩み寄ってくる。


「あなたたちは何でここに来たんですか?」


そう問いかけてくる。シンは黙って睨みつけると。


「まったく。半端に力があるから面倒くさい」


本当に面倒くさそうに肩をすくめると、シンから目を離しコウの方へ向けた。


「そっちのちっこい狼。なんでここに来たか理由を話せ」


強く口調で言われたためかコウの肩が振るえる。そんな様子を見た騎士が剣に手をかけると


『おい! コウに手を出すんじゃねぇ!』


シンが横から飛びついて止めようとする。騎士は飛びのいて回避すると何かを思いついたように。


「では、こうしましょう。私の攻撃から1分間そっちの...コウでしたっけ?を守ってください。守り切れたら見逃してあげますよ。」


そうして有無を言わせず始まった攻撃はシンの全力でも一歩足りないものだった。まだ守れてはいるものの今にも攻撃が届きそうになっていた。


「おや。結構やりますね。では少し本気を出すとしましょうか。」


30秒ぐらい経過したとき、唐突に騎士がそう言った。

今までの攻撃とは比べ物にならない量が殺到しついにコウに届いてしまう。


『グワァ』


コウが悲鳴を上げるとその攻撃の手はやんだ。


「はい。これで私の勝ちですね。では、質問に答えてください。」


コウが切られたことで頭に血が上っていたシンは騎士の言葉など聞こえてはいなかった。


『殺してやる。』


シンは殺意を騎士に向ける。だがシンの本能が拒絶していた。こいつには勝てない逃げるべきだ、と。さっきの猛攻でシンは理解してしまった。この騎士と自分にある差を。そこに騎士が剣を振り上げる。ただそれだけの行為。しかし、限界まで警戒していたシンの体はそれだけで飛びのいた。そんな中コウがシンに笑いかける。


『シン。お前は俺を置いて逃げろ。なに、安心していい、時間ぐらいは稼いでやる。』


そう言ったコウの瞳には何としてもシンを生きて返すという決意が宿っていた。


『でも、コウ。それじゃあお前が...』


そう反論しようとしたシンの声をかき消すように


『行け!』


それを聞いたシンは駆け出した。あそこまでなったコウを説得できないのは知っていた。せめて自分ができるのは、コウの思いを無駄にせず逃げ切るだけだ。


「頑張ってくださいね。」


後ろから騎士の声が聞こえてきた。そんな声を聞くと自分が情けなくなる。何が最強だ、全然弱いじゃないか。もっともっと強くならねば。そう思い無我夢中で足を動かしていった。

何とか間に合いました。休日だ~ 書き溜めするぞー...え、まだやること残ってる?

(;´・ω・)そんなぁ



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