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罵られ捨てられた少年と魔物使いの少女  作者: 儚月
第一章 少年の出会い
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第七話 魔王軍侵攻

今回はちょっと短めです。

日常の終わり。それは唐突にやってきた。商都連合を滅ぼした魔王軍が周辺地域を領土化するために掃討作戦を決行したのだ。当然その範囲には僕たちがいる森も入っている。ここよりさらに商都連合側にあった魔物の住処はもう滅ぼされていた。当然今、魔王軍へ向けての準備が行われている。知者の石から今回使えそうな魔法を一通り覚えているところにシンさんがやってきた。


「相手は魔王軍ですけど大丈夫ですか?」


僕がそう聞くと


『少し厳しいかもしれん。だが、最も警戒すべき魔王はまだ城の中に引きこもったままらしい。十分に勝機はあるさ』


穏やかな口調でそう返してくる。今回は森の魔物たち全力での反撃となる。普段仲が悪い種族の者たちが協力することになったのは、ひとえにカレンの力のおかげだろう。そんなカレンも今、魔物たちとともに作戦を立てている。


「僕は今回どうした方がいいでしょうか?」


少し不安そうな顔を向けると


『お前は後ろから模倣を放ってくれるだけでいい。あんまり緊張するな』


そう言いシンさんも準備に戻っていった。言葉は優しいものだったけどその足取りは少し重くなっていた。




それから数日がたった。ある日の昼前、森全体に魔法で増大した声が届く。


『聞け、愚かなる森の民よ。我らが魔王軍の傘下へつくのであれば慈悲を与えよう。決断は今日の正午まで。正午になったら我らは侵攻を開始する!』


そんな宣告で魔王側へ寝返るものなど誰一人としていなく、そのまま時は過ぎ正午となった。


『貴様らは我らが元へ下らなかった。その愚かさをその身で味わえ』


こうして、森と魔王軍の戦いは始まったのである。魔王軍の先陣はいろいろな魔物の混成集団だった。シンさんが言うには明らかにこのあたりのじゃない魔物も含まれているらしい。前線では森の賢狼(フォレストウルフ)(フォレスト)巨人(ジャイアント)が敵と渡り合っている。その少し後ろから糸を飛ばしてアシストしているのが老蜘蛛(エルダースパイダー)たちだ。余談ではあるが彼ら一匹一匹が上位に匹敵する強さであり、それに拮抗する魔王軍に人間の国家が渡り合えるはずもなかった。


僕らの役割は後方から前線へのサポートとカレンと魔物たちのテレパシーの維持である。シンさんは護衛兼敵の指揮官の撃破要員ということで周りを見渡せるここにいてくれていて、カレンは戦場全体の指揮を執っている。カレンは指揮の才能があったみたいで戦況を見ててきぱきと指示を飛ばしている。


「賢狼隊と巨人隊はそのまま正面を維持、土蜘蛛隊は回り込んでくる敵を各個撃破して。右側が少し押し込まれてるわ。トレント隊は援軍に向かって」


戦場を見ると指示に合わせて魔物たちが動いていく。カレンの能力の強化と的確な指示で魔王軍を圧倒とはいかないものの抑え込めていた。僕はというとドライアードさんたちと空を飛んで攻撃してくる敵を魔法で撃ち落とし続けていた。空の敵は小さいが打ち放題なので良い練習になっている。

なんとかなるかと誰もが思い始めたときに戦況に変化が訪れる。


魔王軍の先陣が後ろへ下がって行き、変わりに漆黒の鎧を着た騎士のような者たちが前に出る。いままで押し込めていたが軍団が変わってからは逆にこっちが押し込められている。その中にひと際巨大な剣を持った騎士が前に出てこちらの魔物を紙のように切り裂いていく。それで生まれた隙間に騎士たちが入っていってこちらの前線が今にも崩壊しそうになっている。

そんな様子を見ていたシンさんがつぶやいた


『あいつだ。あいつが俺の友を殺したんだ。』


そうつぶやいたシンさんの顔は怒りに歪んでいた。


「待ってください。今あなたが行けば味方にも被害が出ます。」


そうなだめて見るが効果は薄いようだった。


「みんな撤退の用意をして。シンさんがそっちに行きそうだから」


カレンが撤退の準備を始めている。


『今度は殺す。俺はもう弱くない。』


シンさんから殺意が漏れ出している。かなり危ない状況だ。


「みんないったん引く準備ができたって」


それを聞いた途端シンさんが駆け出した。ソフィなんかとは比べ物にならない速さ、軽やかに駆ける足取りとは裏腹に背中には何か重いものを抱えているようだった。


風すらも置いて駆けるシンさんはすぐに騎士のもとへと到着した。


『殺す。もう昔のようにはさせない』


テレパシーを通じてシンさんの会話が届く。対面にいるのは巨大な剣を背負った騎士だった。


「昔? なんのことだ?」


騎士は煽っているのではなく単純に忘れているようだった。シンさんはその態度で怒りが頂点に達したのか騎士に向かって飛びつき前足を上げた。


「その動き、思い出した。いつぞやの情けない白狼君か。」


そうやって二人の戦いがはじまったのだ。


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