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罵られ捨てられた少年と魔物使いの少女  作者: 儚月
第一章 少年の出会い
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第六話 戦火の予兆

「あんたたちは一体なんなんだ」


戦士の男にそう聞かれた


「どこにでもいる子供ですよ」


「嘘だ!」


否定されてしまった。どうしよう、本当にただの子供なのに。


「なんでただのガキが森の賢狼と一緒にいるんだよ」


なるほど、ソフィと一緒にいるのはおかしいと言っているのか。


「この子は僕と一緒にいるわけじゃないですよ。彼女、カレンになついているのです。」


そう言うと皆の視線がカレンに集まる。


「ひ...緋色の目。」


一人がそんなことを口走る。場の空気が固まってしまう。たしか忘れていたが緋色の目は差別されるんだった。


「おいリーン、いくらなんでもそれは無いぞ。こいつらは俺らを助けてくれたんだぞ。」


そんな様子を見て戦士の人がたしなめる。


「俺はカイザー。この冒険者パーティー「草原の風」のリーダーをやってる者だ。坊ちゃんたちにはいろいろと聞きたいことがあるが、とりあえずよろしくだ」


戦士のカイザーさんが手を差し伸べてくる。その手を握り返して


「僕の名前はレイです。よろしくお願いします。」


「おお、礼儀ができてるじゃないか。でも、俺らの前では気楽にしていいぞ。こいつらは俺の仲間の...」


そこから自己紹介が始まっていく


「マリナです。このパーティーで魔術師をやっています。」


「クルトっす。軽戦士をやってるっす。」


「リーナよ。さっきはごめんなさい。弓を使って援護する役割よ」


「んで、そっちの嬢ちゃんの名前って何だったか?」


カイザーさんがカレンを指さして聞いてくる。


「あの、カレンって言います。よろしくお願いします。」


「兎にも角にも助けてくれてありがとうよ」


「「「ありがとうございます」」」


なんとなく打ち解けていった時、ずっと固まったままだった御車台の少年が動き出した。


「なっ、なんで緋色の目なんかがこんなところに」


そんな言葉に場は固まる。


「坊ちゃん、この方は俺らを助けてくれたんだぜ」


「そうっすよ。せめてお礼ぐらい言いなさいっす」


そんな言葉が投げかけられるが、


「そんなこと知らん」


そっぽを向いてしまった。まあ、気にしないでおこう。


「ところで、なんで森側なんか通ったの? ちょっと離れたところに安全な道があるでしょ。」


カレンがそう聞くと皆は少し驚いたような顔を浮かべ、


「お嬢さん、もしかして魔王の話を知らない?」


「魔王? なんのこと? 知らないわよ」


「ほんとに知らんのか。はは、ちょっと長くなるが聞いてくれ」


聞くと今回現れた魔王と名乗る魔物は歴代のどの魔王より強大な力を持って生まれたそうだ。その力で配下の魔物を強化し戦力を蓄えていたらしい。つい最近、魔王の配下を名乗る者から城壁都市に宣戦布告があり、その後すぐに城壁都市は落ちたそうだ。同じ者がこの近くに商都連合にも現れ、同じように宣戦布告した。住人や商人たち色々な理由を付けては大慌てで街から逃げ出し、逃げ遅れた自分たちは坊ちゃんの護衛として逃げ出そうとしたらしい。そしたら坊ちゃんが回り道になる街道じゃ間に合わないと言い出し、無理矢理危険が多い森のそばを通ることになった。そこで運悪くゴブリンたちに見つかってしまい戦闘になった。なんとか持ちこたえていた時に僕たちが現れたんだと。


「その話だと、もうすぐこの辺りに魔王軍が現れるの?」


僕がそう聞くと


「ああ、だから早めに逃げておいたほうがいいぜ。といっても、もう遅い方だけどな。ははは」


カイザーさんが豪快に笑っている。シンさん達はどうするんだろう。僕がそんなことを考えているとカレンが質問してくる。


「私たちも逃げたほうがいいのかな?」


「そうかもね。とりあえずシンさん達にこの事を伝えてどうするか聞こう。」


「そうね。じゃあ帰りましょうか」


まだあまり時間が経っていなかったが、魔王のことをシンさんに伝えなければいけないのでもう帰ったほうがいいだろう。


「そろそろ帰らないといけないので。みなさんお元気で。」


「短い間だったけど、楽しかったぜ。じゃあな」


そういうとソフィに乗って帰りはじめた。後ろで「草原の風」の皆さんが手を振ってくれている。坊ちゃんと呼ばれていた子供はそっぽを向いたままだった。


森に着くとシンさんが迎えてくれた。




『随分早かったな。何かあったのか?』


そう聞くや否やカレンは


「聞いてよ、もうすぐ魔王軍がやってくるんだって。早くみんなで逃げようよ。」


『そうか、奴らがくるのか』


シンさんは首を横に振って


『それはできん。我は一人でも残って戦う。お前達は先に逃げておけ』


「なんでよ一緒に逃げようよ」


シンさんはずっと黙っていた。


「昔何かあったんですか?」


恐る恐る聞くとシンさんは


『奴らは友の…親友の仇だからな。』


「じゃあ一緒に戦うわ。独りよりも二人の方がいいでしょ。あ、レイもいるから3人ね」


僕の参加は確定しているらしい。


「大丈夫よ。私だって力の練習をしてきたんだから」


シンさんは納得したようにして


『分かった。それとレイにはこれを渡しておこう。流石に無属性だけじゃ辛いだろうからな』


そう言ってシンさんが渡してくれたのは燻んだ赤色の石だった。


「これは?」


『賢者の石、と言いたいとこだが違う。劣化版賢者の石、さしずめ知者の石というところか。』


「どうしてそんな物を僕に?」


『言ったであろう、無属性だけじゃ辛くなると。少し前のだが一応すべての魔法と知識が記録されているぞ、もちろん禁呪などは除くがな。』


「ありがとうございます」


『最初は石から情報を引き出す練習をするといいぞ』


そうしてそんな日常は続いていく。もうすぐ終わるとは知らずに。

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