第二十三話 これから
あらすじ モルテは逃げて帰ったよ
『今後、どうするのか相談がある』
そう言ってシンさんは僕たちに真剣な顔を向けてくる。
『学園は壊れてしまったが他の場所に行けばまた通えると思う、だがそれはやめてほしい。』
「なんでですか?」
『これ以上カレンやお前たちに危険が迫るのは我としては好ましくない。もしそれでも行きたいというのなら、我のもとでしっかりとした修行を行ってからにしてほしい。』
確かにこれからモルテみたいなのに襲われるかもしれないのは心配になる。
「なるほど。カレンはどう思う?」
僕は横にいるカレンに話しかけると、
「私たちは大丈夫だよ! 絶対なんとかなるって!」
頬を膨らませて必死に抗議している。
『今回だって我が来なかったら危なかっただろう。だからせめてあのリッチ相手に自衛ができるくらいにはしておかないと』
「でしたら私たちのところにくるのはいかがでしょう?」
僕たちが話し合っているとさっきまで離れていた騎士団長さんが近くまで来て、声をかけて来た。
『お前はさっきの騎士。”私たちのところ”とはどういうことだ?』
「申し遅れました。私は暁闇騎士団、団長のクリスというものです、以後お見知り置きを。
それで私たちのところとは簡単に説明すると勇者の仲間を育成するところだ。」
『勇者の仲間? 勇者ではなくてか?』
「あまり言わないでほしいのですが魔王の侵攻のせいで近々国で勇者召喚の儀式が行われる。その勇者の補佐を教育しているところです。どうですか? 安全は我々が保証しますし力をつけながら王都などの観光もできますよ。」
『だが…しかし…』
「私はそれでいいです!」
シンさんが悩んでいると横からカレンが元気よく手をあげそう言った。
「シン、安全らしいからいいじゃない。それに強くもなれるし。」
『うーむ。クリスといったか? 本当に安全なんだろうな。この学園と同じことになる可能性はないのか?』
「大丈夫です。場所は王都ですので警備はここより圧倒的にいいですよ。まぁ本来は学園の卒業者から優秀なものを選んで推薦するのですが、今回は事態が事態ですから。もし、合わないと思ったら私にいってくれればすぐに戻すこともできる。」
『わかった。だがソフィの同行は当然許可してもらうぞ。』
シンさんは隣にいたソフィの頭に前足を置き、睨みつけるようにそういった。
「ええ、もちろんです。あそこには従魔士の人もいるので。」
『わかった。レイ、お前はそれでいいのか?』
「僕は大丈夫です。強くなってモルテとかと戦えるようにならないと。」
団長のクリスさんはそこで、
「では、決まりですね。我々騎士団はここの後片づけがあるので一週間後ぐらいを目安に王都に向けて出発します。その時までの宿などはこちらが手配しましょう。出発の一日前になったら使いのものをよこすことになると思う。」
『わかった。我はもう森へ帰るため彼らの安全は任せたぞ。』
シンさんはそこで一旦言葉を区切り脅すように
『何かあったら我が王都まで襲撃に行くからな。』
「わかってます。」
クリスさんはそれを涼しい笑顔で受け流す。
シンさんはこっちに向き直り、
『では、我はこれで帰るとする。何かあったらすぐに知らせるんだぞ。』
シンさんは多分森がある方へと向かって駆け出していった。
ものの数秒で姿が遠方の点へとなった。
「では私が皆さんの宿へと案内したいと思いますが、ここでやって置きたいことはありますか?」
するとカレンが手をあげて
「あの、この子達はどうすればいいんですか?」
カレンの見ている方には、さっきの戦いで生まれた大量の白い動物がいた。
「彼らに自然に帰れるか聞けますか?」
「できます。やって見ます。」
カレンは白い動物たちに近づくとなにやら話し始める。
少したったあとカレンはこっちの方に向けて、
「ちょっと待っててくださーい」
といいまた動物の方へ向き直った。
いくばくかの時間がすぎた時、動物から一斉に魔法陣が現れカレンの方へ向かって行く。
カレンはそれを手の甲で受け止めると、こちらに小走りで戻ってきた。
「これでもう大丈夫だっていってました。」
僕たちが動物の方を見ると全員がカレンへと向けて手を振りながら街とは反対方向へ向かっていった。
「では行きましょう。」
クリスさんを先頭に僕たちは街の方へと戻っていった。
街は飛んできた岩などに少し壊されていたが全体的に見て無傷といっていい状態だった。
騎士の格好が目立つのか道ゆく人々は僕たちの方へ視線を向けている。
「つきました、ここですよ。」
クリスさんが止まった場所には如何にも高級そうな宿屋が佇んでいる。
「えっと、本当にここですか?」
僕がそう聞き返すとクリスさんは笑顔で、
「こっちの事情で色々と巻き込んでしまっているのでこれぐらいは当然です。遠慮なんてしないでいいですよ。」
そういって緊張する僕の背中を押して中へ入れてしまう。
カレンは一見平気そうに見えるが同じ手と足を動かしていたからかなり緊張しているのだろう。
クリスさんがそのまま受付へといき、僕たちも仕方なくついていく。
「この子達二人部屋で一週間お願いします。」
クリスさんは受付へそう言うと受付の人は目を丸くして、
「ええと、お子様二人だけでのご利用ですか?」
確かにこんな見るからに高級そうな宿に子供二人と言われては混乱するのだろう。
「そうですけど何か問題があったのですか?」
「いえ、そう言う訳ではないのですけど…」
受付が言いづらそうにしているとクリスさんは、ハッとした表情で、
「確かに護衛がいなければ危ないですよね。どうしよう私としたことが…」
「いえ、護衛とかそれ以前の問題なんですけど…」
二人揃ってなんとも言えない雰囲気を醸し出しているとカレンがクリスさんの方へ近寄って。
「あとソフィも忘れないで。たぶんソフィ一人いれば護衛、いらないと思うんだけど。」
クリスさんは確かにと頷いた後に受付に、
「なんの問題もありませんでした。後、従魔用の小屋を一つ追加でお願いします。」
「わかりました。ですが、当店のものを破損した場合弁償となることをご理解お願いします。」
受付はそういって名簿か何かを取り出すと、「お名前お願いします」、といって渡してきた。
字は学園のおかげもありかなり綺麗にかけたと思う。それを受付の人に返し、クリスさんがお金を払い部屋の鍵をもらった。
クリスさんは部屋まで一緒に行くと、「これここ一週間の生活費」と、言って硬貨の詰まった袋を渡してきたあと、そのまま学園跡地の方へ戻って行った。
総合評価50point超えました。
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