第十九話 冥府の闇
「『虚無闇』!」
モルテがそう唱えた瞬間、あたり一体から光が消えた。
「なんだこれ!」
「周りが見えないよ〜」
なにも見えない中ソフィは速度を落とし慎重に進んでいく。
「光の精霊よ、我が魔力に応え、周囲を照らしたまえ『小光源』」
僕が光を作る魔法を唱えても明るくならず一寸先も見えない状態が続いた。
そんな中ガタッ、と何かが動く音が横から聞こえて来る。急いで見るとそこには暗闇の中に浮かび上がる一体のスケルトンがいた。
「ソフィ!」
カレンが咄嗟に声を上げる。ソフィがそれに反応して横に避ける。
不思議なことにこの暗闇の中でもアンデットは離れてもはっきり見えている。
「カカカカカカカカカ」
スケルトンは骨だけの体で音を鳴らす。
すると周りから一体、また一体とスケルトンが浮かび上がっていく。人型だけでなく獣や鳥など種類も豊富だ。
そしてあっという間に囲まれてしまう。
「光の精よ、我が魔力に応じ、ここにその力を顕現せよ。それは絶対不可侵なる聖なる領域なり。今ここに不浄なる輩を通さぬ結界を創る『聖域』」
唱えたのはアンデットや悪魔の侵入を拒む結界魔法。
暗闇のせいで光などが全く出てないが今まで近寄ってきたスケルトンたちが止まったのがわかるので一応発動はしているだろう。
僕は足の止まっているスケルトンたちに向けて聖の光線を放っていく。
一発受けると倒れてしまうような弱いスケルトンたちだが、倒しても倒しても無限のごとく湧き出てくる。
「ソフィ、あのモルテとか名乗ったリッチの居場所わかる?」
僕がそうソフィに問いかけると帰ってきたのは力強い返事だった。
「僕が魔法でスケルトンたちはなんとかするからそっちの方へ向かっていって」
ソフィにそういったところでカレンが苦しそうな顔をしていることに気がついた。
「ソフィ、やっぱりちょっと待って。カレン、何かあった? 大丈夫? 辛そうだけど」
「ちょっとね。スケルトンたちが苦しそうに叫んでいるのを聞くとね、ちょっと気分が悪くなっただけだから。」
「叫んでる?」
「あれ? レイには聞こえないの? ずっと『まだ生きてたかった』『こんなはずじゃなかった』『騙しやがって』とかそんな感じのことを叫び続けてるんだよ」
僕にはただ骨がカタカタなっている音しか聞こえない。ただ、言われてみればその音も何かを訴えかけてきているように聞こえることもないような気がする。
「なんかね、みんな魔王のことを恨んでるっぽい?」
ん? どういうことだ? 確かモルテは魔王の配下とかいっていたはずだが。
「えと、魔王軍に入るのを断ったら殺されてアンデットにされたらしい」
「つまり、無理矢理戦わされているってことか」
伊達に魔の王と呼ばれているわけではないのか、やることがひどい。
「とにかくモルテのところに急ごう。カレン、耐えられそう?」
「うん、大丈夫だよ」
ソフィは走り出すと周りが見えているかのように的確に動き、モルテのところへ向かって行く。
約数分走ると周りに光が戻ってきた。後ろを振り返ると中がまったく見えない黒い球体がそこにあった。
学園はもう遠くに離れているだろう。黒い球体はかなりの大きさがあった。
「ほう、冥府の闇から抜け出せたのですか。」
パンッ! とモルテが手を叩くと後ろの球体が音もなく消え去った。
残っているのは破壊された建物と横たわっている人達だ。
「よくも人の魂を利用して! 絶対に許さないぞ」
僕はそう叫ぶとソフィの背に乗ったまま魔法をモルテへと放つ。
「私がどう使おうとあなたの知ったことではありませんよ」
モルテから放たれる魔法の数々をソフィが悠々と回避し、こちらが打った魔法も飛んで回避される。
そんな決め手に欠ける戦いが続いていった。
だが、そんな戦いも時間が立つにつれて少しずつこちらが押され始めた。
モルテはアンデットであるため疲労などを感じないのに対し、こちらは絶えず蓄積していく。
ソフィの動きが鈍っていくにつれ余裕がなくなっていく。
「『速力強化』」
補助魔法をかけつつなんとかしのいで行く。
いつの間にかこちらが防戦一方になっていた。
「いつまでも、ちょこまかとこざかしいですね」
モルテはそういうと攻撃の手を一層強める。
ついに、一発の魔法弾がソフィの足元にあたり転倒してしまう。
絶体絶命、まさにそんな状況になってしまった。




