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「おい、起きろ!」


 心地よい眠りがバーツの声で遮られる。


「なんだよ。まだ外は暗いじゃねーか。」


 眠い目をこすり不機嫌に答える俺。


「寝てる場合じゃねーんだよ。王都に動きがあった。奴らとうとうおっぱじめる気になったみてーだぜ。とっとと顔洗ってリビングまでこい。ロベルトもそこで待たしてある。」


 俺はあわてて飛び起きると顔を洗い、寝間着のままリビングに向かった。


「まずは状況を聞こう。」


 俺はリビングの椅子に腰掛け、用意されていた紅茶をすする。


「はい、たった今届いた早馬によると、王都にて国王陛下が崩御されたよしにございます。日付は昨日。時刻は未明とのことです。」


 ロベルトが立ち上がり報告をはじめる。


「で、王都の様子は? 」


「はい、宰相ロマーニャ公爵をはじめとする貴族達の軍、約2万が王城に突入。近衛隊や王太子殿下を守る騎士団を一蹴するとそのまま王城を占拠した模様です。」


「ずいぶんと思い切ったことをしやがったな。まあ、奴らに取っちゃ待ちに待った一瞬ってことか。」


「で、兄上の様子は? 」


「はい、武装解除されそのまま東の塔に幽閉されている模様です。」


「王都にいた他の貴族達の動きは? 」


「みな、宰相の命で領地に返されています。今、王都には宰相を支持する貴族しかいません。」


「ロマーニャ公爵もなかなかやる。貴族の中に犠牲者を出せば内戦になってしまうからな。仮に王家を支持する者がいたとしても連携がとれず各個撃破されてしまうってことか。」


「で、我らはいかがいたしましょう。」


「先にお前達の意見を聞こうか。」


「では、私から。」


 ロベルトはバーツに目線で許可を求め自身の意見を述べ始める。


「まずは今後の展開ですが、大きく分けて2つが考えられます。王太子であるフランク殿下が生存していた場合と死亡した場合の2つに。」


 俺はウンと頷き話の続きを促した。


「まず、王太子殿下がご健在であった場合、宰相派は殿下を即位させ傀儡となし、その新王の命を持って最大の脅威であるアシュレイ王子の討伐を行うでしょう。」


「まあ、そうだろうな。しかしあの兄上が素直に従うとも思えん。なによりあの弱った体で幽閉に耐えることは出来ないだろう。残念だが早晩兄は亡くなる者と考えた方が良いな。」


 俺はこの世界で唯一優しく接してくれたあの病弱な男の死を予感していた。


「では、お亡くなりになる、と言う前提で話を進めさせて頂きます。そうするとアシュレイ王子の立場は微妙になってきます。何しろ王位継承権一位となるのですから。宰相も王子を迂闊に亡き者にすることはしないでしょう。」


「殺さない。と言うことか。」


「はい、恐らく幽閉でもして宰相の長男であるアルフレッド殿あたりを王に指名するよう言ってくるはずです。アシュレイ王子が王位を辞退してしまうと王位継承権一位となるのは、カスティーユ公になってしまうのでこれは避け、王子の身柄を確保することによって辞退ではなく後継者の指名という形でアルフレッド殿に王位を継がせる考えかと思われます。」


「なるほど、殺されるのも幽閉されるのも避けたいところだな。」


「なあ、よくわかんねーんだが、宰相は現実に王都を押さえ、大半の貴族に支持されてんだ。いまさら王位継承権だのなんだの言わなくても、自分がそのまま王様になっちまえばいいんじゃねーのか? 」


「バーツ副長の言われることももっともなんですが、それを強行するにはこの国の長い歴史が邪魔になるのです。」


「その辺がよくわからねー。強いもんが王を名乗る。それじゃだめなのか? 」


「この国は600年もの長い間ヴァレリウス家を主君と崇め成り立ってきました。貴族の間でも民の間でも王といえばヴァレリウスを名乗る者なのです。それをいくら力があるからと言って他者が王位を僭称すれば貴族達はもとより民の間でもその者を王とは認めないでしょう。王になるにはヴァレリウスの血が流れていなければならないのです。そしてそれは濃ければ濃いほど良い。その濃さを見えるようにしたのが王位継承権、と言う訳ですね。」


「なるほどなー。歴史のある国ってのはそんなもんなんだな。俺様みたいな東の小さな国の出身者にはわからねー感覚だな。」


「それに、宰相側は謀反をおこしたという事実を塗り込める大義名分が必要です。そうでなければいつ力をつけた貴族が王位を狙ってくるか分かりませんから。」


「なるほど、自分がしたことは許せるが他人には同じ事をされると困るというわけか。で、宰相派の大義名分ってのはいったいなんだ?」


「まだ声明が発表されたという情報がありませんのであくまでも予測となりますが、おそらく彼らの言い分は、『北の帝国に対し弱腰外交続ける国王と王太子に国を任せることは歴史あるヴァレリウス王国を破滅に向かわせる。よって宰相派は王の崩御を機会に新たにふさわしい国王を戴く為、この儀に及んだ。  我々はあくまでヴァレリウス王家の忠実なる家臣であり、その目的は王家の打倒などではなく、平和裏に覇気にあふれた新王を立てることのみである。』まあ、このような感じでしょうな。」


「別に帝国にへりくだっているわけではないだろう?現にこないだもやっつけたばかりじゃないか。」


「やはり昨年の大敗が響いていますな。あの折、第二王子のレット様は討ち死になされ国王陛下はあわや生け捕りにされるところでしたから。

 そのあとの交渉でヴァレリウスは北方の三郡、いまのスフォルツア領を割譲するという話まで持ち上がったほどですしね。」


「まあ、勝てばなんとやらと言うしな。いまさら大義の論議をしても始まらないか。」


「そうだな。まずアンタはここから逃げることを考えなきゃな。ここに居ても殺されるか捕まるかの二択しかない。」


「でもなー、ただやられっぱなしで逃げるってのも性ににあわないんだよな。」


「アンタが行方をくらますだけで宰相には十分いやがらせになるんじゃねーの? アンタが指名してやらなきゃそのアルフレッドとかいう坊ちゃんは王になれないんだろ?」


「そうですな。それにあのカスティーユ公が黙っているとも思えません。なにしろ王子についで高い第二位の継承権者ですし。宰相がいくら既成事実を主張したところでカスティーユ公から横槍が入れば何も出来ますまい。彼こそこの王国一の貴族なのですし、その意向は絶大な影響力をもっていますから。」


「そうか、なら俺は逃げるとしてお前達はどうするんだ? 」


「俺はアンタに付き添うぜ。姉御からの命令だし。」


「私もお供いたします。」


「なるほどな。なら、今度は俺の意見を言おう。」


 二人は真剣な表情で耳を澄ます。


「俺が思うに状況は最悪だ。恐らくこの国に俺の居場所はあるまい。で、あるならお前達の言うように身を隠すのがこの場合最良だろう。お前達親衛隊だが、バーツは俺についてきてもらうとしてロベルト、お前には頼みたいことがあるんだ。」


「なんでしょうか。」


「お前は親衛隊の連中を引き連れ、レイラと合流してほしい。そしてスフォルツア男爵の庇護の元、なんとか隊を維持してくれ。男爵とレイラへの手紙は俺が直接したためる。お前はそれを持って無事に合流出来るよう細心の注意を図れ。」


「お供できないのは残念です。が、分かりました仰せに従います。」


「俺もこのまま終わるつもりは毛頭無い。お前からレイラに伝えてくれ、俺の旗が立ったら、いかなる困難を越えてでも必ず合流しろと。」


「分かりました、その日を楽しみにしております。生きて必ずお会いできますことを祈っております。」


「俺を誰だと思っている? 銀鷲のアシュレイだぞ。あんなハムスター男にどうこうされるほど甘い作りはしていないさ。」


「では、早速準備を。手紙を頂いたら出発いたします。」


「ああ、あとあの馬車も使え。俺には必要ない者だ。」


「は、分かりました。お預かりしておきます。」


 俺はバーツに荷造りを命じ、部屋に戻って机に座る。文字はここに来て初めて書くのでうまく書けるか心配だったが思ったよりすらすらとに2通の手紙を書き終えた。署名の横に蝋をたらし、紋章の刻まれた指輪を押し当て刻印する。綺麗に折りたたんだ後封筒に入れ、やはり蝋に刻印をして封をする。


 その後、身の回りの整理をし、下着や日用品、水筒などを執事に準備させる。毒殺でもされたら堪らないので、水筒の水は自分で入れる。長期間の旅になるかも知れないので着ていく服は丈夫そうなのを選んだ。

 

 黒の綿シャツにベージュの革パン、それに靴下を履き、ブーツは膝下まであるロングブーツ。上着は紺地に白の刺繍があしらわれたお気に入りの一品。半袖で裾は股下までの長さがあり、それをベージュの剣帯を兼ねた太い革ベルトで締める。荷物は背負い袋にひとまとめにして放り込み、腰に剣を佩く。


 ベルトについたポーチには火打ち石など小物を入れた。初夏とはいえまだ夜は冷えるため雨具を兼ねた焦げ茶色の外套を羽織る。外国では通貨が異なり、ヴァレリウスの通貨を持っていると怪しまれると言った執事から、金貨に代わり、砂金の入った袋をもらう。


 手紙をロベルトに託し、出発する間際、第二報を持った早馬が到着する。それによれば、昨日午前、騎兵のみ1000を率いたロマーニャ公爵とその妻スザンナが王都を出立。西の砦に向けて進軍中、速ければ明後日には到着するだろうとの報告だった。俺はその早馬にこれからはスフォルツア領にいるレイラに

情報を届けるよう命じ、ロベルトの出立を見送った。


 俺は砦にとって返し、執事に命じておおきなノコギリを持ってこさせる。ノコギリと荷物を愛馬にくくりつけ、バーツを伴い出発した。すでに空は明るくなっており、朝露に濡れた草花がキラキラと日の光を反射する。


 こうして俺は、この世界に来て一ヶ月とちょっとで王子から無職に転職した。


「おい、何処にいこうってんだ、このまま進むとロマーニャ公爵の軍にぶちあたるぞ。」


 バーツが馬上で叫んでいる。俺はその声を無視して先を急ぐ。


 前方に川が見えた。俺はここで釣りをしたのを思い出したのだ。


「こんなとこきてどーすんだよ!まさか呑気に釣りなんかするつもりじゃねーよな?」


「まあ、釣りと言えば釣りだな。釣るのは魚じゃなくてハムスターと豚だがな。いいからこっちに来て手伝え。」


 俺は馬を下りるとおもむろに小川に掛かる橋桁をノコギリで切り始める。


「橋を壊して時間稼ぎでもするってか? 大した時間稼げるとは思えねーけどな。」


「ホントアホだなお前は、それじゃあ面白くも何ともないだろ? 」


「んじゃどうしようってんだよ! 」


「いいか、ロマーニャ公爵はあの豚連れだ、必ず馬車に乗っている。だからこの橋桁を何本か切って、残りには切れ目を入れとくんだ。騎兵は問題なく通れるけど、重い馬車が通った瞬間、橋が落ちるように細工するんだよ。」


「かぁぁぁ、よーくそんなくだらねぇ事考えつくな。とっとと逃げた方がいいだろうに。ま、でも面白そうではあるな。」


「だろう? 分かったらそっちの桁を切れ。俺達が馬で渡ってギシギシゆがむぐらいが丁度いいだろう。」


「あいよ。そうときまりゃとっとと片づけちまうか! 」


俺達は橋に細工をし、その時に出た材木で立て看板を作る。『人にあらざる豚、この橋を渡るべからず。』と。それを橋の下の目立つ位置に設置して俺達は来た道を駆け戻る。引っかかったスザンナがどんな顔をするか直接見れないのが残念だ。




「急げ!王子を捕えた者には恩賞は思いのままぞ! 」


 ロマーニャ公爵は焦っていた。ここしばらく彼はろくに眠れていない。彼の率いる騎兵隊は王都を出てすでに2日。後半日で目的地に到達する。


 事の発端はいつもの通り、あの王子だ。

 王子が絡むとろくな事が起きない。宴で罵倒された愛しいスザンナはあの日以来ヒステリーの度合いを増していた。妾腹とは言え、彼女は王家に連なる身、そのプライドは山のように高い。


 宰相として、王国の実質的な運営を司っていた私。そんな私にとって、その妻スザンナは王家への忠誠と家庭の温かさを体現してくれる何よりも大切な人だ。王子の陰謀により美しかった彼女は肥え太ってしまったがそんな事は私の愛情をいささかも損なわせる物ではなかった。


 今回の出来事は彼女にとって耐え難いものだった。

 今までも王子と顔を会わせる度、嫌味をぶつけていた彼女だが、王子の方から反撃を受けたことはない。過去に大きな罰を受けた王子は彼女の無礼を受け流していたのだ。


 今回もそうだろうと高をくくっていた私は少々過ぎた妻の暴言も咎めることなく苦笑いをして見守っていた。ところが王子はしたたかな逆撃にでる。王子の追求は厳しく、私にも責任を問うてきた。あの夜のことは思い出すのもおぞましい。


 そうだった。あの王子は恐ろしい人間だったのだ。

 すっかりおとなしくなっていたため忘れていたが、若いころから今まで幾度煮え湯を飲まされてきたかわからない。

 王子の行動は、あの強面の先代カスティーユ公と王子に厳しく接する国王陛下の二人によって制限されてきたのだ。

 先代カスティーユ公はすでにこの世の人ではなく、国王陛下も明日をも知れぬ病床にある。もしも今、国王陛下が崩御なされたら、あの王子を咎めるものは誰もいなくなってしまう。後継者の王太子殿下はなぜかあの王子と馬が合うらしく、彼の暴走をいつもニコニコして眺めているだけだ。


 国王の崩御された後の世界。想像するだに恐ろしい。

 アシュレイ王子の暴走を咎めるものは何もなく、抑圧されてきた王子がここぞとばかりに私を狙い執拗な嫌がらせを行って来ることは火を見るよりも明らかだ。


 そうなる前に何とかしなければ。以前、彼に狙われ精神を病んだ貴族に面会したことがある。その貴族は実年齢の倍は老けて見えた。精魂尽き果たしたのだろう、その目はうつろで、口からは止めどなくよだれが流れていた。


 私は将来の自分の姿をその記憶に思い重ね、やらなければやられる、との思いを強くしていた。


 そんな折、国王陛下が崩御された。最後の希望を失った私はしばし呆然としてしまう。だが気を取り直し、以前より周到に準備を進めていた計画を実行に移した。


 この日の近い事を予感していた私は演習を口実に、王都の近くまで自分の兵と私と志を同じくする貴族たちの兵とを進めていた。

 あの王太子が即位すればアシュレイ王子の行動を掣肘するものは誰もいなくなる。その恐怖を訴えた私にほとんどの貴族が賛同を示した。



 王城に軍兵がなだれ込み、突然のことに対応が遅れた近衛兵や王太子を守る騎士団を一蹴する。予定通り王太子の確保に成功した彼は、王太子の幽閉を指示し、次の策に移る。


 実質的に王国を支配している私にとって、唯一ひっかかるのは王位継承権だ。私の息子アルフレッドはすでに18歳。親の欲目を外してもその器量は抜群で王にふさわしい人間だろう。しかし彼の王位継承権は第四位。一位は王太子殿下、二位はあのアシュレイ王子、そして三位はこの国最大の貴族で、英邁の評判高いカスティーユ公ロレンツォその人だった。


 私は一計を案じた。正攻法で難しければ搦手から攻めればいい。王太子を即位させ、その命と称してアシュレイ王子を討つ。その後アルフレッドを病弱な王太子の養子とし、用済みとなった王太子を毒殺すればことは成る。


 そうなってからではいくらカスティーユ公が苦情を述べても、もはや遅い。正当な王位継承を果たしたアルフレッドは名実ともにこの王国の主なのだから。


 しかしここで誤算が生じた。幽閉した王太子が隠し持った毒をあおり、自害したのだ。こうなった以上計画の修正はやむおえない。


 こうなれば、あのアシュレイ王子の身柄を確保し、アルフレッドを後継者として指名させるしかない。その為には拷問も辞さない覚悟だ。どの道王子はアルフレッドが戴冠するまでの命なのだから。そのあとは王子に恨みを持つ貴族たちにその身を下げ渡してもいいし、妻の荒ぶる激情のままに処刑させてもいい。とにかく生きたまま身柄を押さえさえすれば問題はないのだ。


 万一逃げられた際は、いや、王子を匿う貴族などこの国にはいないだろう。王子の素行ももちろんだが宰相たる私を敵に回すなど、初歩の算数が出来るものならば決してしない愚行なのだから。


 王子は今、親衛隊と称する少数のゴロツキとともに西の砦にいる。快速の騎兵1000を持ってすれば問題はないはずだ。


 馬車の中、となりで眠るスザンナにも王子を捕らえる瞬間を見せてやることができるだろう。帰りはあの王子を奴隷のように馬で引きずって行こう。我ら一家はあの王子に対してそうする権利があるはずなのだから。


 川にかかる小さな橋が見えてきた。あれを渡れば西の砦はもうすぐだ。


 ガコ!バリバリバリ! 突然大きな音が響きロマーニャ公爵の体が椅子から浮いた。

 一瞬の後、大きな衝撃が彼を打つ。とっさに体を縮めた彼は狭い馬車の中あちこち体をぶつけ、額から血を流していた。受け身すら取れなかったスザンナは鼻をしたたかに打ち、その顔は鼻血に塗れている。

何が起こったのかまるで分からない彼ら夫妻は傾いた馬車から外にでる。


 そこは凄惨な光景だった。馬に押しつぶされたもの、その上で足をばたつかせもがき苦しむ馬。側仕えの騎士6人が馬車の周りを守るように並走していたのだが彼らは全員川に落ち、無事なものは一人もいない。上を見ると崩れた橋の残骸が彼らを嘲笑うかのように、砂埃を上げている。


 橋が崩れた? なぜ? そう戸惑う彼は橋の下にこれ見よがしに設置してある看板をみつける。そこには見慣れたあの王子の筆跡で『人にあらざる豚、この橋を渡るべからず。』と大書してあった。事故の衝撃で鼻の曲がった彼の妻がその看板をワナワナと震えながら見つめていた。


 やられた。いつもの通り。窮鼠猫を噛むという諺があるがこれはそういう類の事ではない。王子はいつもの通り彼の策を読み切り、その上で嫌がらせを仕掛けている。もはや西の砦は空だろう。

 鼠はいつもどおり彼の役目であり、あの王子はその鼠が追い込まれ苦しむ様をどこかで口を歪めて見ているに違いない。そう、獲物を弄ぶ猫のように。



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