リンゴとベルとチュチュ
「ここから出るって…。お兄さん、無理ですよ!この檻、超頑丈ですし、鍵もかかってますよ!」
「大丈夫だよ。このくらいの鍵なら、針金1本あれば開けられるよ!」
「針金なんて、どこにもないですよ?」
「持って来て貰えばいいんだよ。」
俺は、指笛を吹く。ピューイと高い音が響く。
「指笛なんか吹いて、どうするんですか?」
「俺の友達を呼んだんだよ。」
檻のある部屋の天井にある、小さな隙間から、黒い縞模様のある黄色いインコが一羽やって来た!
「ごきげんよう、リンゴ!」
「ベル、来てくれてありがとう!この子の名前は、ベル。俺の友達なんだ!」
「はじめまして、ネズミさん。私は、ベルよ。」
「はじめまして、ベルさん。僕の名前は、チュチュです。そういえば、お兄さんはリンゴって名前なんですか?」
「ああ。俺の名前は、リンゴだよ。ベル、すまないが針金を一本、持ってきてくれないか?」
「お安い御用よ!でも、リンゴどうして檻の中なんかにいるの?しかも、パンツ一丁で…。」
「俺にもわからないよ!起きたら、ここにいたんだよ…。だいたい、ここは、どこなんだ?」
「ここは、お城の地下室よ。」
「お城の地下室!?なんで、そんなところに…?」
「イチゴちゃんは、一緒じゃないの?」
「ああ、イチゴは、ここにはいないんだ!…そうだよ、早くここから出て、イチゴを探さないと!」
「じゃあ、私は針金を持って来るわね!」
「ベル、頼んだぞ!」
ベルは、飛んで行った。
「リンゴさん、ここってお城の中だったんですね…。」
「チュチュは、この檻の中にひとりで住んでるのか?」
「はい。僕の父さんと母さんは、僕が小さい時にネコに食べられて死んじゃったんです…。それから、ずっとひとりぼっちで…。ネコが怖くてこの檻から出られないんです。」
「そうだったんだ…。ご飯は、どうしてるんだ?さっきは、俺に食べ物をたかっていたけど…。」
「毎日、僕にパンくずとかお肉のかけらを持ってきてくれる人がいるんです。その人は、無口で一度も言葉を発したことがないんですが、朝と昼と晩に来てくれるんです。でも、昨夜は来てくれなくて…。僕、お腹ペコペコで…。」
「チュチュ、ここを出られたら、俺とイチゴの家に来ないか?俺が美味しいものたくさん食べさせてやるぞ!」
「いいんですか?」
「ああ!」
「…折角ですが、僕はここに残らせてもらいます。ここを出たら、僕に毎日ごはんをくれる人に会えなくなってしまいますから…。」
「でも、その人は、一度も話したことないんだろ?昨夜は来てくれなかったし、そんな相手をよく信用できるな?」
「その人は、とっても綺麗な瞳をしていて、いつも、その瞳で優しく僕を見つめてくれるんです。それに、僕が話すとちゃんと、頷くか頭を振って相槌を入れてくれるんです。僕、その人のことが大好きなんです!いつか、その人のお声を聞いてみたいんです!」