イチゴとアリ
「ふわぁ…。よく寝た…。リンゴ、今日の朝ご飯は何?…リンゴ?」
僕が目を覚ますと、そこは、森の中だった…。
そうだ!昨日の夜、リンゴがいなくなっちゃって、それで探しに来たんだった…。
「僕、迷子になっちゃったんだよね…。どうしよう…。」
お日様が天高く昇って、明るくなったけど。僕は、今、森のどの辺にいるのか全く分からない…。
「お腹空いた…。リンゴ…どこ行っちゃったの?」
もしかしたら、もう家に戻っているかな?
でも、僕は迷子…。このまま、家に帰れなかったら…僕、飢え死にしちゃう…!!
僕の目から涙がこぼれてくる…。
「リンゴ…。うぅ…ひくっ…うう…。」
「コラー!泣くなー!」
僕の足元から声がする…?声の主は…。
「…アリさん?」
「危うく、お前の涙の雫が俺に当たりそうだったぞ!俺を溺死させる気か!」
「ごめんね、アリさん…。だって…僕、迷子になっちゃって…うぅ……ひくっ…!」
「だから、泣くな!…お前の家は、どの辺なんだ?」
「えーと…。リンゴ林を抜けて、橋を渡った丘の向こうの、そのまた向こうにあるんだ…。」
「じゃあ、俺がリンゴ林まで案内してやるよ。」
「いいの?」
「ここで、泣かれて川でも作られたら俺たちの仕事に支障がでるんだよ!」
「そうなんだ…。ありがとう、アリさん。」
「礼は、いいから早く行くぞ!」
「アリさん、何でそんなにピリピリしてるの?」
「昨日の夜、突然、森が謎の眩しい光で包まれて、その光のせいですっかり目が覚めちゃって寝不足なんだよ!!お前は、平気だったのか?」
「うん。そんなことがあったなんて、全然、気づかなかったよ!」
「お前、どんだけ爆睡してたんだよ!森に住む奴ら、みんな寝不足だぞ!!」
「僕、トイレか、リンゴが起こしてくれなくちゃ、絶対、起きないんだよ…。」
「お前、リンゴさんの知り合いだったのか!?」
「うん。リンゴは、僕の友達だよ。」
「じゃあ、お前がイチゴか!」
「うん。僕の名前はイチゴだよ。アリさんこそ、リンゴのこと知ってるの?」
「ああ、リンゴさんは、この森じゃあ有名だから。話したこともあるし、お前のことも聞いてるぞ!」
「リンゴ、僕のことなんて言ってたの?」
「リンゴさんの言った通りだ!ひとりじゃ何もできないって…。」
「そんなことないよ!昨日の夜だって、リンゴを探しにひとりで森の中を駆け巡ってたんだよ!」
「それで、迷子になったのか…。ん?リンゴさんを探しに来たって、どういうことだ?お前、リンゴさんと一緒に住んでるんだろう?」
「それが、昨日の夜、突然いなくなっちゃったんだよ!」
「まさか!リンゴさんが、お前をひとり置いて行くわけないだろう!」
「だけど、僕が夜中にトイレに起きたら、隣で寝ていたリンゴがいなくて…。」
「とにかく、家に帰ろう。リンゴさんも、もう家に帰ってるかもしれないし!」
「うん…。」