新たなる始まり
「おはよう、レイラちゃん」
「おはようございます」
私の名前はレイラ・ファントリー。行商が行きかう街リトニスにある多機能ギルド、ゴルディアゴーの看板娘。
私はギルド内の家事と行商や料理店の手伝いを担当しているの。娘だけどお母さん的ポジション。
「外掃除終わり、朝食作ろう」
私は外掃除を終えてギルドに戻る。私の作った料理はみんな好きなんだよ。
「ご飯はまだかのう」
この人はケドラス・ガーマルド。お爺ちゃん的ポジション。ギルドマスター兼受付嬢ならぬ受付爺。
昔は現役でギルドで働いてたらしいんだけど今は引退してる。私をギルドに入れてくれた人でもある。
「すぐ作りますから待っててくださいね」
これでギルドメンバーは残り二人。少ないけれどこれでいい。
「ただいまー」
「お姉ちゃんご飯まだー?」
「これから作るから待っててね」
帰って来た。二人は朝の鍛錬を日課にし始めて二・三か月経つ。
男の子の方がリルスト・ファントリー。私と同じ苗字だけど血の繋がりはないよ。こう見えて元盗賊。
時を操る短剣の神器を持ってるの。 私がギルドに入るまでの道中、私が彼に捕まった。彼自身奴隷商人か盗賊に騙されてたんだけど私が説得してその後一緒にギルドに入った。
私にはまだまだ甘えん坊さんで、私の子供的ポジション。
大きな男の方はガイラス・ガーマルド。ケドラスの息子で、ギルド一番の稼ぎ手。
私とリルストが入るまで彼の収入だけでギルドを支えてた。凄いもんだね。今はリルストと一緒に仕事に行くことも多くなってきた。お父さん的ポジションだけど、言うと何故か身体が火照る何でかな。
「出来たよ。食べようか」
「「「「いただきます」」」」
私たち四人でオルディアゴー。一人も欠けちゃいけない大切な家族。
「なあお前ら」
ガイラスが食事中にファントリー姉弟に声を掛ける。
「街を出て、見聞を広めてみる気はないか?」
ガイラスの言葉にレイラは手が止まる。
「それってどうゆう事ですか」
「少しの間ガランのキャラバンで色々回って来いってことだ。この街にいるだけじゃ分からない事だってあるしな。それとギルドの宣伝も兼ねててだ」
レイラは少しホッとするが疑問は残る。
「その間は他の私のお得意先は?」
「一応聞いてみたら、みんな頼れないのは残念だが帰ってきたらまた頼むだそうだ」
「お金の方は?」
「お前らが来るまで俺一人で支えて来たんだ。少しの間位大丈夫だ」
「分かりました」
レイラは納得しリルストに聞く。
「僕も行くよ。気になった物がいっぱいあるし」
リルストも行く気があるようだ。
「よし決まったな。俺がキャラバンを迎えに行くから準備しろ」
「えっ!」
「はーい」
レイラとリルストは朝食を食べ終えるとすぐさま支度をする。
「着替え三セット、タオルハンカチ数枚・・・・・」
「お姉ちゃん、他何がいるの?」
「結構気が入ってるのお」
ケドラスは仕度をする二人を眺めながら言った。
「正直言って、するんだったら昨日とかもう少し前から言って欲しかったです」
「しばらくレイラちゃんのご飯が食べれなくなるが、色んな文化を取り込んだレイラちゃんの料理はそれはそれで食べてみたいのお」
「頑張って勉強してきます」
レイラとリルストは仕度を終えガランのキャラバンに会いに行く。
「遅かった・・・・・・な」
ガイラスはレイラの冷ややかな怒りを感じて目を逸らした。
「遅いのはあなたの報告です。今度からはもうちょっと早めに言ってくださいね」
「ごめんなさい。今度から気をつけます・・・・・」
ガイラスと一緒にいたガランは見ない間の立場の変化を読み取って笑い飛ばす。
「あはは、いつの間にやらレイラちゃんはお母さんか。こりゃ俺も娘が怖くなったな」
「ドリーちゃんは今のところないと思いますよ」
レイラはさっきとはコロッと変わって可愛らしい笑顔を見せた。
これを見たリルストは、
「お姉ちゃん、ちょっと怖く見えて来た」
と脱甘えん坊を考えた。
「俺らのキャラバンの乗り物は四つに分かれている。先頭は生活車で一階が男子寮で二階が女子寮だ。
二両目は食堂車、三両目が生活用品を積む車両、三両目は一番大切な倉庫車だ」
レイラとリルストはガランの説明を受けた後、生活者に乗り込んだ。
「レイラちゃん、荷物は先に預かるから渡してくれるかしら」
「分かりました」
レイラは二階にいる女性のキャラバンメンバーに自分の荷物を送る。
「僕はどうするの?」
リルストがレイラに聞いた。
「リルスト君はなぁ~、一階になっちゃうな」
「そうゆうことだからね、お姉ちゃんと離れて寝てみようか」
とキャラバンメンバーとレイラに言われてリルストは
「頑張ってみる」
と頷いた。
レイラは自分の荷物がきちんと上に送られたのを確認するとはしごで二階に上がる。
「意外に広いんですね」
「そうだよ、レイラちゃん」
レイラの感想に答えたのは仲良しのドリーだ。
二階の住人はレイラを除いて七人。川の字になるようにして寝る事になる。
「私は何処に寝ればいいのかしら」
「どこがいい?」
ドリーが聞いたのでレイラは即答した。
「ドアが一番近いここ!」
「即答だね・・・・・どうして?」
「リルストが一人で寝れる心配だから」
「過保護だね・・・・・」
ドリーがレイラがお母さんキャラであることを理解した。
二人が乗り込み、準備が整ったところで出発する。
「学んで来るじゃぞう」
「しっかり学んで来いよ」
「レイラちゃん、また絵のモデルを!」
「レイラちゃん、またウエイトレス頼むよ」
「レイラちゃん、・・・・・」
ガーマルド親子とは別でレイラちゃん呼びがある。
「あの人たちは?・・・・・」
「私のお得意先・・・・・・・」
「大変そうだね・・・・・・・」
「うん・・・・・・・・」
こうして二人の門出は送られた。
キャラバンは街を出る。
「凄い人気なんだね」
寮の奥にいる女性ガンティーが言った。
「ええ、おかげさまで」
レイラは苦笑いで返す。
キャラバンの日課には二人は少しづつ慣れた。
移動中の日の朝は男性陣は車を引っ張る牛を世話して,女性陣は家事をする。
昼の女性陣は特にすることはないが男性陣は牛のかじ取りをする。
移動中は水がないためお風呂は使えない。また洗濯も出来ないため汚れててもその服を変える事はあまりできない。
そのため、次の街に到着したとしても商売をするわけにいかず、風呂と洗濯を済ませてからすることになる。
元いた街リトニスを出て三日後、隣街であるガーマインドに着いた。
「よし着いたぞ。洗濯と風呂だ!」
ガランが皆に声をかける。
風呂の前に洗濯を始める。
洗濯は公衆洗濯場で行う。
「やっと臭いのが取れるねお姉ちゃん」
「そうね。頑張って終わらせましょ」
「うん」
みんな洗濯物を持って洗濯した。
洗濯を終え、キャラバンの物干しざおに掛け、今度は身体を洗う。
「そうね。一緒に入りましょうか。リルスト」
とレイラはリルストを一緒に風呂に入ることにするが、
「残念ながら小僧は臭い男たちと一緒だ。来い」
「お姉ちゃああああん」
リルストはガランに連れてかれた。
「しょうがないよ。もうちょっとリルストが小っちゃかったら一緒にできるけどあんなに大きく子はねえ」
「そ、そうなんだ・・・・・」
ドリーは苦笑いでレイラをフォローし、レイラは少し心配していた。
風呂は公衆浴場だが結構楽しい場所でもあった。
「うわあ、広い!」
「うふふ、レイラちゃんってこうゆうとこ初めて?」
「うん。今まで家とかの風呂だけだったから」
「そっか」
この公衆浴場は女湯のすぐ隣に男湯があるようで、
「ここのお風呂おっきーい」
リルストの叫びが聞こえた。
「うふふ、姉弟揃って可愛いね」
「は、恥ずかしい・・・・・」
ドリーが微笑み、レイラは赤面した。
二人一組となって体を洗う。
「いつもはどうやって洗ってるの?」
「リルストと一緒に洗ってるの」
「じゃあ、背中流しっこしたりしてるんだ」
「そうね。頭洗ってあげたりしてるの」
「ほんと、レイラはお母さんだねぇ~」
二人が会話しながら体を洗ってるとあちらの会話も聞こえてくる。
「ほら小僧、頭洗え!」
「や~だ~、お姉ちゃんがいい~」
「お前何言ってんだ。お前より小さい子が頭洗ってるぞ!恥ずかしくないのか!」
「関係ないよ!僕は僕だ!」
うるさい!っと他の客に怒られたのでガランとリルストは黙る。
「リルストはほんと、お姉ちゃん子だねぇ~」
「そ、そうかなぁ~」
「でも甘えさせてばかりじゃだめだよ。自分で出来ることは自分でさせなきゃ」
「うん頑張ってみる」
レイラとドリーは頭を洗い終えると、湯船に入る。
湯船は公衆浴場なだけあって広く、十数人が入っていた。
「ふう、やっぱ気持ちいいねえ」
「そうねぇ。旅疲れが取れるわぁ」
二人はお風呂で肩の力が抜け癒される。
「二人とも明日は商売なんだから気の抜けたまんまでいなさんなよ」
「分かってますよ。ガンティーさん」
ガンティーも湯船につかる。ぷかぷかと胸の脂肪が浮く。
「ガンティーさんって結構スタイルいいですよね」
「まあね、でもやっぱ商売でもしないと食ってはいけないさ」
ガンティーの言葉にレイラとドリーは顔を見合わせ相談する。
「仕事しないで食っていける人なんているんですか?」
「王様とかじゃない?」
「王様は政治をしてるでしょ」
「そっか・・・」
「まあ、人間ってのは仕事しないよりした方がいいから別に問題はないんだがね」
ガンティー身体を温めながら言い、ドリーとレイラはガンティーの言った意味を考えた。
女性陣は風呂終え、公衆浴場から出ると、
「お姉ちゃあああん」
リルストがレイラに抱き付いてきた。
「おじさんたちが僕をいじめるぅ~」
「ほらほら、泣かない」
レイラはリルストをなだめているとあることに気づく。
「あれ?リルスト。あの短剣は?・・・・」
「あれ?ないや・・・・・・」
「も、もしかして・・・・・失くした?」
「う、うん・・・・・」
事の重大さに全員が驚いた。
「神器が無くなったー!」
思いつかなくて筆づまりしてました。話はまだまだ続きます。よろしく!