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3人の僕

 「そう落ち込むな。前を向けよ。状況は君が思うほど悪くはないし、第一後悔したり悲観していてもしょうがないだろ。」

 「いや、僕はとんでもない失敗をあの子と会った時にしてしまったんだ。もう取り返しがつかないよ。4回目のデートなのに手も繋げなかった。あとあれはなんだい、あのプレゼントの渡し方。もっと堂々と渡せないのか。」

 「おいおい。なぜそんなに君は卑屈なんだ。そもそもあの子だって僕らのことを嫌いだったら4回も2人で会おうとしないだろう。それにデートの帰りにキチンとメールもくれた。」

 「ふん。どうかな。きっと僕らを好きになってくれる子なんていないよ。会話の時も必死に沈黙が来ないように取り繕ってヘラヘラ表面的な話をするだけで、ロマンチックな言葉の一つも言えやしない。本当に自分が嫌になるよ。」

 「はあ。どうして君はそんなに悲観的なんだ。僕らは確かに一般的にイメージされるような男らしい人ではないのかもしれない。でも僕らはそれ以外にいいところがたくさんあるだろう。相手の気持ちを気遣って行動ができるし、人を傷つけたりはしない。頭が良くて今どんな状況なのか、何をすべきなのかも判断できる。時には積極的にだってなれる。僕は結構僕らのことを好きなんだぜ。だからもっと自信を持てよ」

 

心の中で”2人の僕ら”が議論を交わす。

"後ろ向きな僕"と、"前向きな僕"。

僕は2人の議論を眺める。


気付くと2人のうち1人がいなくなっていた。


「ああ。また僕だけが残ってしまったようだ。悪いね。」

"後ろ向きな僕"がうつむき加減に申し訳なさそうな声で僕に言う。


どうやらまた、僕は"前向きな僕"を消してしまったらしい。


「いや、いいんだ。しょうがないよ。そうしてしまったのは僕自信なんだ。結局のところ僕は君を切り捨てることができないのかもしれない。」

僕は笑顔を作って語りかけた。

"前向きな僕"も気まずそうに僕を見て笑う。


気まずそうな2つの笑顔が対峙する。

3日前のデートと同じだ。


僕はこのもう一人の僕と、どこへ行けるというのだろう?

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