序章 question
クリストローゼ・エーランサーに尋ねたことがある。
どうしてそんな質問をするに至ったのか、その点についてはよく覚えていない。おそらくいつものように、他愛のない会話をゆるゆると紡いでいた、その先にあったのだろう。
その質問への糸口が。
覚えていないといえば、それがいつで、どこだったのかも記憶にない。春だったのか夏だったのか秋だったのか。彼女の部屋だったのか私の部屋だったのか。
背景として必要な情報はすっぽりと抜け落ちて、それでもなお、その質問のことは覚えている。
はっきりと鮮明に、脳裏に焼き付いている。
もちろん、彼女がなんと答えたかも。
彼女とのあのやり取りについて、もう一つ、覚えていることがある。
いや、覚えているというのは、もしかしたら適切ではないのかもしれない。その質問を思い出し、内容から推測した現在の私が、そう判断しただけのことなのかもしれない。こんな内容なのだ、きっとそうに決まっている、というような、根拠のない安易な思い込み。
たとえそうだとしても。推測の域を出ないとしても。
それでもやはり、きっとそうに決まっていると思うだけの理由はあるのだ。
根拠はなくとも理由はある。
そう自信を持って答えられるほどの質問だったのだ。
そう、覚えている。
私は確かに、あの時。
何気ないふりを装いながら、かなり思い切って、彼女に尋ねたのだ。涼しい顔をして、ふと思いついて口にしました、という風に。自分でも驚くほどの緊張を必死で押し殺して。
「無人島になんでも一つだけ持っていけるとしたら、何を選びますか?」