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セツナリバース  作者: レッドキサラギ
第四話 新たなる衝撃
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004

 頭が揺れるような感触がする。

 強力な頭痛は治まったものの、意識は朦朧とし、体は動かない。

 一体、何が起こった。


「……なんて事するのさ……」


 糸島……か?

 でもコイツ……何で怒りながら泣いてるんだ?


「アンタそれでも一社を支える社長かよ!ペンタゴンに吹き込まれただけで部下を撃つなんて!」


「……これも未来の為よ。あなたも未来人であるならば……彼がどれだけ脅威なのか分かるはず」


「フン!あたしは未来に裏切られた人間だ。あんな未来に未練なんて微塵も無いね!」


「そう……まあ話しても意味は無いと思っていたけど……」


 この声……藍川か。

 アイツ……何を考えてやがる。


「あなたも未来の反逆者として、ここで朽ちて貰うわ」


 藍川の冷徹な言葉と共に、糸島は僕の体をアスファルトの上に置き去りにし、走り出す。

 体が全く動かない今、僕は状況を目で追うことしか出来ない。


「アンタみたいな政府の犬に簡単に捕まるほど、あたしはやわな人間じゃないよ!」


 糸島はホルダーから二丁の拳銃を取り出し、藍川に向けて発砲する。

 しかし、藍川はしゃがみ込みそれをかわす。

 糸島の奴、マジかよ。


「……無駄な抵抗ね」


 藍川は走り出し、手に持っている拳銃を構える。

 照準はもちろん、糸島だろう。


「ふふん!あたしに射撃の腕で勝てると思ってるの?」


「…………」


 何も言わず、藍川は発砲する。

 それと同時に、糸島も二丁の拳銃の引き金を引く。

 

「……っく!」


 藍川は構わず横転してそれをかわそうとする。

 糸島の放った一発の弾丸は藍川を狙う。だが、もう一発の弾丸は藍川の放った弾丸と衝突し、路上に落下していた。

 何て射撃能力だ……あの一瞬で、藍川を狙いながら弾丸までも狙うだなんて。

 

「どうよあたしの射撃の腕は?白旗揚げるなら今の内だよ!」


「白旗?何の冗談かしら?……そろそろお遊びも終わりね。時間だわ」


 すると、藍川は突如手に持っていた拳銃を捨てる。一体、何を考えてるんだ?


「おやおや?あたしが強すぎてもしかして対戦放棄で尻尾巻いて逃げるのかい?」


「……すぐに分かるわ」


 藍川は懐から何かを取り出す。あれは……手榴弾か!


「!、アンタ、爆発は駄目だろ!いくらプライベートゾーンで人避けをしてるからといって爆弾を使ったら爪痕が残っちまうじゃないか!」


「爪痕?わたしがそんな物残すとでも?」


 藍川は躊躇無く手榴弾のピンを引き抜き、それを糸島に投げつける。


「ちょっと……マジかよ……!」


 糸島はすぐさま走り、それを避けようとする。だが、藍川の投げた物は手榴弾ではなかった。

 藍川の投げた物からは、煙が勢いよく吹き上がる……これは、スモーク手榴弾か!


「く……煙か……」


 糸島の姿が煙の中に消えていく。倒れているだけでは、何も見えない。


「……喜多川君、これがあなたの招いた結末よ。思い出す事も重要だけど、思い出さない事もまた……幸せなのよ」


 言い捨てて、藍川は煙の中へと入っていく。

 僕の知っている藍川は、こんな奴ではなかったはずだ。二年も経ったのだが……二年はあまりにも長過ぎた。

 僕はアイツを……藍川を止めなければならない。アイツを止められるのは……僕だけだ。

 何とか……立ち上がってみせる。アイツがペンタゴン側についたのは……僕のせいなのだから!


「くそ……アイツどこに行ったのよ……」


「隙だらけね。あなたこそ、早めに白旗を揚げていれば痛い目見ずにゆっくり牢獄に行けたのに……残念だわ」


「ぐっ!……」

 

 瞬間、藍川は糸島の手に持っている二丁の拳銃を弾き飛ばし、腕を掴む。

 気づいた時にはもう遅い。まさにその言葉に相応しい状況だった。


「まさかこれは……!」


「チェックメイト……あなたは裏に潜んでいるべき人間だった……糸島彩、表に出てきた事を鉄格子の中で悔むといいわ」


 藍川はそのまま立ち回り、糸島の腕を捻り、もう片方の手を糸島の腰周りに手を回し、そのまま投げ飛ばしてしまう。柔道の背負い投げを連想させる技……CQCだ。

 

「ぐあぁっ!」


 糸島は地面へと叩きつけられ、それでもとどめを刺されない様に路面を転がって距離をとる。


「無駄な抵抗ね。糸島彩、あなたを連行するわ」


 藍川はレーザー銃を取り出し、糸島のいる方向へと銃口を向ける。

 勝負は既に決まった。糸島と藍川の勝負は。


「……正気なの?」


 だが、ここにはもう一人戦える事の出来る人間がいる。


「もちろんだ……それに、もう逃げられないだろ?」


「……そうね。選択肢はもう無いわ。あなたに残された選択肢は、反逆罪で牢獄に送り込まれるだけ。ただそれだけよ」


「そうか……だが、僕は捕まる気は無い。藍川、お前との長年の因縁に蹴りをつける時が来たようだな」


 僕は糸島を背に、藍川から弾き飛ばされた糸島の拳銃を一丁手に持ち、その銃口を藍川に向ける。


「そうね。蹴りをつけましょう」


 藍川のレーザー銃の銃口が、僕を向く。

 かつて仲間だった二人が、敵として対峙する。


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