第5話 「放課後と帰り道の作戦会議」
体育のバスケ試合が終わった。
「つ、疲れた……」
俺――桜井翼は体育館の床に座り込んだ。
なぜなら今の俺は
水野ひなたの体。
普段と違う体で動き回ったせいで、体力の消耗が激しい。
すると横から声がした。
「つばさ」
振り向くと、そこには
俺の体になったひなたが立っていた。
「どうした」
「男子の体、めちゃくちゃ重い」
「だから言っただろ」
ひなたは腕をぶんぶん振る。
「それに力強すぎる!」
「慣れろ」
「無茶言わないでよ!」
そんな言い合いをしていると、後ろから声がした。
「ひなたー!」
振り向く。
美咲だ。
俺は一瞬固まる。
「き、今日のひなたすごかったね!」
「そ、そう?」
「バスケめっちゃ上手いじゃん!」
俺は苦笑いするしかない。
すると美咲がニヤニヤした。
「もしかしてさ」
嫌な予感。
「翼にいいとこ見せたかったとか?」
俺はむせた。
「な、なに言ってんの!?」
ひなたが横で小声で言う。
「顔真っ赤」
「うるさい!」
美咲は楽しそうに笑った。
「まあいいや!じゃあまた明日ねー!」
手を振って帰っていく。
俺たちは同時にため息をついた。
帰り道。
夕方の空が少し赤い。
俺とひなたは並んで歩いていた。
しばらく沈黙。
そしてひなたが言った。
「ねえ」
「なんだ」
「このままだとさ」
「うん」
「絶対バレるよね」
俺も同意した。
「間違いない」
今日だけで
歩き方
バスケ
会話
全部怪しかった。
ひなたは腕を組む。
「ルール作ろう」
「ルール?」
「お互いの生活守るための」
なるほど。
確かに必要だ。
ひなたが指を立てる。
「まず一つ」
「なんだ」
「お互いの体で変なことしない」
「するか!」
「絶対だからね!」
「わかった!」
そしてひなたは続けた。
「二つ目」
「うん」
「学校では普通に接する」
俺は頷いた。
「確かに」
するとひなたが少し真剣な顔になる。
「三つ目」
「?」
「このことは絶対誰にも言わない」
俺は静かに頷いた。
「当たり前だ」
もし知られたら。
確実に大騒ぎになる。
ひなたは空を見上げた。
「早く戻りたいね」
「だな」
しばらく沈黙。
その時。
ひなたがぽつりと言った。
「でもさ」
「なんだ」
「つばさ」
「うん」
「今日のバスケ……」
少し照れながら言う。
「ちょっとカッコよかった」
俺は固まった。
「……」
顔が熱い。
思わず言い返す。
「お、お前だって!」
「なによ!」
「男子の体で走るの意外と似合ってたぞ!」
ひなたは一瞬驚いた。
そして顔を赤くする。
「ば、ばか!」
その時だった。
ひなたの家の前に着く。
そして二人は同時に気づいた。
「……」
「……」
ひなたが言った。
「問題がある」
「俺も思った」
そして同時に言う。
「「お風呂どうする?」」
沈黙。
数秒後。
ひなたが顔を真っ赤にして叫んだ。
「絶対変なことしないでよね!?」
「するか!!」
だが。
二人ともわかっていた。
今日最大の試練は、まだ終わっていない。




