第4話(後半) 「バスケの試合と男女逆転パニック」
グラウンドの隅にある体育館。
そこに俺たちは集められていた。
体育の先生がホイッスルを鳴らす。
「今日はバスケットボールだ。男女混合チームで試合する」
その言葉に、俺――桜井翼は顔を引きつらせた。
なぜなら今の俺は。
水野ひなたの体。
つまり――
女子として試合に出ることになる。
「終わった……」
小さく呟くと、隣から声がした。
「つばさ」
振り向く。
そこにいるのは、俺の体をしたひなただ。
「どうした」
「バスケ得意だった?」
「普通だ」
ひなたは深刻そうな顔をした。
「まずい」
「何が」
「私、運動苦手」
俺は頭を抱えた。
つまり。
俺の体の運動能力が落ちる。
逆に俺は。
ひなたの体で男子と戦う。
完全にハンデ戦である。
先生が言った。
「チーム分けするぞー」
そして。
俺とひなたは――
同じチームになった。
「最悪だ」
「なんでよ!」
ひなたが怒る。
だが問題はそこではない。
相手チームを見て、俺は固まった。
そこには。
バスケ部の男子が二人もいる。
「無理だろ……」
その時、クラスメイトの男子が笑った。
「お、ひなたも出るのか」
「やさしくしてやるよ」
俺はぎこちなく笑う。
「は、はは……」
内心は。
めちゃくちゃ怖い。
そして試合が始まった。
ピーッ!
ホイッスルが鳴る。
ボールが上がる。
ジャンプボール。
味方が取った。
「パス!」
ボールが俺に来る。
「え!?」
反射的にキャッチする。
だが次の瞬間。
男子が一気に距離を詰めてきた。
「ひなた、いくぞ!」
「ひっ!?」
思わず声が出た。
慌ててドリブルする。
だが。
スカートじゃないとはいえ、体操着の感覚が慣れない。
動きがぎこちない。
「大丈夫かひなた?」
男子が笑う。
その瞬間。
俺の中のスイッチが入った。
負けたくない。
俺はドリブルを加速させた。
右。
フェイント。
左。
男子が驚く。
「おっ!?」
そのままゴールへ走る。
ジャンプ。
シュート!
ボールは――
綺麗にリングを通った。
「おお!」
体育館が少し盛り上がる。
美咲が叫ぶ。
「ひなたすごい!」
俺はドヤ顔になりかけて、
慌てて表情を戻す。
その時。
後ろから声がした。
「つばさ!!」
振り向く。
ひなただ。
俺の体で、完全に慌てている。
「どうした!」
「パス!!」
ボールが来た。
だがひなたは。
完全にテンパっていた。
「うわっ!」
ボールを落とす。
相手チームが取る。
速攻。
シュート。
ゴール。
先生が言う。
「ナイスシュート!」
ひなたは俺を見た。
「つばさ……」
「なんだ」
「男子の体、重い」
「慣れろ!」
試合は続く。
だがその時。
美咲がぽつりと呟いた。
「ねえ」
俺は振り向く。
「ひなた今日さ」
嫌な予感。
美咲は言った。
「バスケめちゃくちゃ上手くない?」
心臓が跳ねた。
やばい。
完全にバレる流れだ。
その時。
ひなたが叫んだ。
「つばさ!後ろ!」
振り向く。
ボールが飛んできた。
俺は反射でキャッチする。
そのまま。
ターン。
ドリブル。
そして――
シュート!
ゴール。
体育館が少し沸いた。
美咲が笑った。
「やっぱ今日のひなた、なんか違う」
俺は冷や汗をかいた。
入れ替わり生活。
それは――
思っていた以上に
危険な毎日だった。




