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第2話 「女子の朝は、戦場でした」


「つばさ!!」

朝から怒鳴られた。

俺――桜井翼は、びくっと肩を震わせる。

声の主はもちろん、

俺の体になった水野ひなただ。

「な、なんだよ……」

俺が言うと、ひなたは顔を真っ赤にして叫んだ。

「なんだよじゃないでしょ!?

なんでブラの付け方知らないのよ!」

「知るか!!」

俺も思わず叫び返す。

そりゃそうだ。

今の俺は――

女子高生の体。

つまり、ひなたの体である。

そして現在。

俺は女子の制服を前にして、完全に固まっていた。

「えっと……これどう着るんだ?」

「そこから!?」

ひなたが頭を抱える。

「いい!?よく聞いて!

まずインナー着て、そのあとブラ!」

「ブラ!?」

「当たり前でしょ!!」

俺は顔を真っ赤にしながら、言われた通りにする。

だが。

数秒後。

「無理だ!」

「早いわ!」

「これどうやって留めるんだよ!?」

背中のホックがうまくできない。

腕がつりそうだ。

ひなたはため息をついた。

「……貸して」

「え?」

「後ろ向いて」

言われるまま背を向ける。

すると背中に、指が触れた。

「……」

「……」

カチ。

ブラのホックが止まる。

ひなたが言った。

「ほら」

「お、おう……」

妙に恥ずかしい。

だがそれ以上に恥ずかしい問題があった。

制服のスカートを見て、俺は固まる。

「なあ」

「なによ」

「これ……短くない?」

「普通よ」

「いや絶対短い」

ひなたは呆れた顔で言った。

「女子の制服はそんなもん!」

俺は恐る恐るスカートを履いた。

立ち上がる。

「……」

足が。

めちゃくちゃスースーする。

「無理だこれ」

「慣れなさい!」

ひなたが腕を組む。

「あと」

「なんだよ」

「絶対変な歩き方しないでよ?」

「無理だろ!」

「バレるでしょ!」

そんな言い合いをしていると、

時計が目に入った。

7時55分。

「……やばくない?」

「やばいわね」

俺たちは顔を見合わせた。

そして同時に言う。

「「学校!!」」

慌てて玄関へ走る。

靴を履く。

外に出る。

だがそこで、ひなたが急に止まった。

「ちょっと」

「なんだよ」

ひなたは俺をじっと見た。

「歩き方」

「え?」

「女子はそんな大股で歩かない!」

「マジか!」

「もっとこう……」

ひなたは少し歩いて見せた。

小さめの歩幅。

自然な動き。

「……なるほど」

俺も真似する。

ぎこちない。

めちゃくちゃぎこちない。

ひなたは頭を抱えた。

「だめだこれ……」

「仕方ないだろ!」

だがその時。

後ろから声がした。

「おーい!ひなたー!」

振り向く。

そこにいたのは――

クラスメイトの女子。

佐藤美咲。

ひなたの友達だ。

「やばい」

ひなたが小声で言う。

「絶対バレる」

俺も小声で答える。

「どうする」

美咲が近づいてくる。

「ひなた、今日一緒に行こー」

そして俺の顔を見て、

首を傾げた。

「……あれ?」

心臓が跳ねた。

やばい。

バレる。

美咲はじっと俺を見て言った。

「ひなた、今日なんか雰囲気違くない?」

俺は慌てて答える。

「そ、そう?」

声が裏返った。

ひなたが小声で呟く。

「終わった……」

だが美咲は笑った。

「なんか今日かわいいじゃん!」

「え?」

「髪型とか!」

どうやらセーフらしい。

俺は内心ガッツポーズした。

だが。

その横で。

ひなたが俺の体で言った。

「つばさ」

「なんだ」

「これから毎日これよ」

俺は空を見上げた。

そして思った。

俺の高校生活、終わったかもしれない。

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