第1話 「俺が彼女で、彼女が俺!?」 朝。
目覚まし時計が、いつものように鳴り響いていた。
「……うーん」
俺――桜井翼は、眠たい目をこすりながら体を起こした。
だがその瞬間、妙な違和感が走る。
「……ん?」
体の感覚が、何か変だ。
胸のあたりが妙に重いし、髪もやたら長い。
「……は?」
恐る恐る視線を下げる。
するとそこには――
見覚えのない体。
「え……?」
柔らかそうな胸。
華奢な肩。
女の子のパジャマ。
「…………」
数秒、思考が完全に止まる。
そして次の瞬間。
「はぁぁぁぁぁ!?」
俺の絶叫が家に響いた。
慌ててベッドから飛び降り、鏡の前へ走る。
鏡に映っていたのは――
俺じゃない。
そこにいたのは、長い黒髪の少女。
見慣れた顔。
そう、これは――
「……ひなた?」
幼なじみの 水野ひなた だった。
いや、違う。
正確には。
ひなたの体になった俺だった。
「いやいやいやいや待て待て待て!」
完全に意味がわからない。
夢?
ドッキリ?
昨日何か変なもの食べたか?
頭を抱えていると――
隣の部屋から、悲鳴が聞こえた。
「きゃああああああ!!」
この声は。
間違いなく。
ひなた。
俺は慌てて部屋を飛び出した。
廊下を走り、隣の部屋のドアを開ける。
そこにいたのは――
「つばさぁぁぁ!!」
俺の体をした、ひなた。
二人は固まった。
沈黙。
数秒。
そして同時に叫ぶ。
「「なんであんたが俺の体なの!?」」
ひなたは俺の顔――いや、俺の体を指差して震えていた。
「ちょっと待ってよ!?
なんであたしが男になってんの!?」
「それはこっちのセリフだ!」
俺は叫び返す。
「俺だってなんで女になってんのかわかんねぇよ!」
ひなたは鏡を見て、頭を抱えた。
「うそでしょ……」
そしてゆっくり振り返る。
俺の体を見て。
「……つばさ」
「なんだよ」
「その体」
「お前の体だ」
「絶対変なことしないでよね!?」
「するか!!」
朝から大騒ぎである。
だが問題は、まだまだあった。
時計を見る。
時刻。
7時40分。
「……なあ」
俺は言った。
「学校、どうする?」
ひなたは固まった。
そして数秒後。
「……行くしかないでしょ」
「マジか」
「だって休んだら怪しまれるじゃん!」
確かにそうだ。
だが問題は。
「俺が女子高生として学校行くのか……」
「そしてあたしが男子として……」
二人同時にため息をつく。
ひなたが言った。
「……とりあえず」
「なんだ」
「着替えよう」
「…………」
数秒の沈黙。
そして俺たちは顔を真っ赤にして叫んだ。
「「絶対見るなよ!!!」」
こうして始まったのは、
原因不明の――
男女入れ替わり高校生活。
だが。
俺たちはまだ知らない。
この入れ替わりが、
ただのトラブルでは終わらないことを。




