第14話:『同じ屋根の下、一線を越える声』
【家の廊下・深夜】
家の事情で始まった共同生活。
親たちはリビングでテレビを見ているが、二人の部屋は隣り合っている。
自分の部屋(中身はひなた)のベッドに横たわっていたつばさ(中身ひなた)は、壁一枚隔てた隣に「自分の体」がいることに、心臓の音が止まらなかった。
すると、ドアが静かにノックされる。
「……ひなた。起きてるか?」
入ってきたのは、つばさの姿をしたひなた(中身つばさ)だった。
「つばさ、くん……? どうしたの、こんな時間に」
ひなた(中身つばさ)は、自分の部屋(今はひなたの部屋)に入ると、音を立てないようにゆっくりとドアを閉めた。
狭い室内。夕方の公園での「一瞬だけ戻った」記憶が、二人をさらに意識させる。
「……さっきの続き、言わなきゃ眠れなくてさ」
つばさは、ひなた(自分の姿)の目の前に立ち、その肩を力強く掴んだ。
入れ替わった自分の大きな手が、ひなたの華奢な肩を包み込む。
「噂を否定するためとか、そんなんじゃねーんだ。……俺、本気だわ」
「っ……」
「俺と、付き合ってください。……お前以外とは、付き合いたくない」
至近距離で発せられた、熱い告白。
ひなた(中身つばさ)の瞳には、迷いも照れも隠さない、真っ直ぐな意志が宿っていた。
ひなた(中身つばさ)は一歩踏み込み、さらに声を低くして囁く。
「入れ替わって、お前の生活を知って、お前の苦労も優しさも全部見て……。余計に、お前じゃなきゃダメだって確信したんだよ」
ひなた(中身つばさ)の胸の鼓動が、抱き合わんばかりの距離で伝わってくる。
つばさ(中身ひなた)は、自分の体から溢れ出す「つばさの情熱」に飲み込まれそうになり、顔を真っ赤にして俯いた。
「……ずるいよ。自分の声で、そんなこと言われたら……断れるわけないじゃん」
その瞬間、部屋の空気が一変した。
二人の感情が激しく共鳴し、またあの「浮遊感」が襲う。
(ドクンッ!!)
今度は、一瞬だけではない。
二人の体が淡い光に包まれ、視界が激しく回転する。
「あ……」
気付くと、二人は床に倒れ込んでいた。
重なり合うように倒れたその瞬間、見えたのは――。
「……つばさ、くん?」
「……ひなた?」
今度こそ、本物のつばさが、本物のひなたを押し倒すような形で、床に伏せていた。
自分たちの「本当の手」が、相手の「本当の肌」に触れている。
ついに、完全に戻ったのか……!?




