第13話:『心臓のシンクロニシティ』
【公園・ベンチ】
つばさ(中身ひなた)の胸の鼓動が、服の上からでもわかるほど激しく刻まれる。
告白したひなた(中身つばさ)も、自分の姿をした相手の熱気に、頭がどうにかなりそうだった。
「……つばさくん」
ひなた(中身つばさ)が、震える手で自分の胸元――今はつばさの体――をギュッと掴む。
「心臓が……うるさいよ。これ、どっちのドキドキなの?」
「わかんねーよ……。でも、俺もお前の体の中で、胸が締め付けられて痛いくらいだ」
その時だった。
二人の視線が真っ向からぶつかり、火花が散るような感覚が走る。
夕闇の中で、周囲の音がフッと消えた。
(ドクンッ!!)
ひときわ大きな鼓動が重なった瞬間。
視界が激しく歪み、世界が裏返るような浮遊感に襲われる。
「……え?」
つばさが目を開けると、目の前にいたのは「自分の姿」ではなく、**夕日に照らされた「本物のひなた」**だった。
少し潤んだ瞳、赤くなった頬、驚きに微かに開いた唇。
「ひな、た……?」
「つばさ……くん……?」
間違いなく、自分の視点で、自分の腕の長さで、目の前の彼女を見つめている。
つばさは思わず、ひなたの肩を掴もうと手を伸ばした。
指先が、彼女の制服の感触を確かに捉える。
「戻った……のか?」
そう確信したのも束の間。
二人の指が触れ合った瞬間に、バチッと静電気のような衝撃が走る。
「痛っ……!」
反射的に目を閉じ、再び開けた時。
つばさの視界に映っていたのは、**情けない顔をして驚いている「自分自身の顔」**だった。
「……あ」
「……戻っちゃった」
ほんの数秒。
二人は元の体に戻り、そしてまた入れ替わってしまった。
「今の……見たか?」
ひなた(中身つばさ)が、呆然と自分の手を見つめる。
「うん……。一瞬だけ、つばさくんの顔が目の前にあった」
二人は確信した。
感情が激しく揺れ動き、二人の「心」が同じリズムで重なった時、入れ替わりの呪いが解けかけるのだということを。
「……もっと、ドキドキすればいいのかな」
ひなたが小さく呟くと、つばさは顔を真っ赤にして立ち上がった。
「これ以上は心臓が持たねーよ! 帰るぞ!」
歩き出す二人の背中。
入れ替わった体の中でも、消えない熱だけが、解決への唯一のヒントとして残されていた。




