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第12話:『放課後の緊急会議』

第12話:『放課後の緊急会議』

【学校・廊下】

休み時間中、どこへ行っても「おめでとう」「お幸せに」という視線と声が飛んでくる。

つばさ(中身ひなた)とひなた(中身つばさ)は、たまらず人気のない旧校舎の踊り場へ逃げ込んだ。

「……ねえ、つばさくん」

ひなた(中身つばさ)が、頭を抱えてしゃがみ込む。

「……なに、ひなた」

つばさ(中身ひなた)も、壁に背中を預けてぐったりとしている。

「「……死ぬかと思った」」

二人の声が重なる。

「なんで『優しいところ』なんて言っちゃうのよ! 私、そんなこと一度も言ったことないのに!」

「そっちこそ! 『うん』って即答しただろ! おかげで俺、クラスの男子全員から背中叩かれまくって痛いんだけど!」

二人は真っ赤な顔で言い合うが、ふと沈黙が流れる。

相手の口から出た言葉は、紛れもなく「自分」への評価だったからだ。

「……あー、その。ひなた」

つばさが気まずそうに視線を逸らす。

「……なに?」

「さっきの……『優しい』ってやつ。本気で思ってんの?」

ひなたは一瞬固まり、さらに顔を赤くしてそっぽを向いた。

「……入れ替わってから、あんたが私の代わりに家事とか手伝ってくれてるの知ってるし。……事実を言っただけよ」

つばさは心臓の鼓動が早くなるのを感じた。自分の体(ひなたの姿)がこんなに熱いのは、入れ替わりのせいなのか、それとも。

【放課後・帰り道】

「一緒に帰ったらまた噂になる」と分かっていながら、二人は結局いつもの公園にいた。

入れ替わりの手がかりを探すという名目だが、実際はお互いの「設定」をすり合わせるためだ。

「もう隠し通すのは無理かもね……」

ひなたがブランコに揺られながらポツリとこぼす。

「いっそのこと、付き合ってるフリでもするか? その方が怪しまれないだろ」

つばさが冗談めかして言うと、ひなたがじっとつばさの目を見つめた。

「……フリ、だけで済む?」

その時、ひなたのポケットでスマホが震えた。

メッセージの送り主は、クラスの女子グループ。

『ひなた! 今日の放課後、つばさと一緒にいるとこ見たよ! 明日詳しく聞かせてね♡』

「……終わった」

ひなたが力なく笑う。

「……ああ、終わったな」

だが、二人の顔はどこか晴れやかだった。

嘘の噂が広まっているはずなのに、胸の奥にある「本当の気持ち」までバレてしまったような、不思議な高揚感。

「明日、なんて説明する?」

「……『ノーコメント』で突き通すしかないだろ」


公園のベンチ。夕日が二人をオレンジ色に染めている。

スマホに届く冷やかしの通知を眺めながら、ひなた(中身つばさ)はふと横に座る「自分(の姿をしたひなた)」を見た。

「……なあ、ひなた」

つばさの声が、いつもより少し低く響く。

ひなた(中身つばさ)は、自分の大きな手を見つめながら、意を決したように言葉を続けた。

「隠すのも、フリをするのも、もう限界だわ。……俺、ずっと前からお前のこと、好きだったんだ」

「え……?」

つばさ(中身ひなた)は、自分の顔をした相手から発せられた言葉に、心臓が跳ね上がった。

夕日のせいだけじゃない。目の前の「つばさ」の頬が、見る間に赤くなっていく。

「ちょ、ちょっと、つばさくん……!? 何言ってるの……」

「……だから! 前から好きなんだよ! ずっと言いたかったけど、幼馴染だし、今の関係が壊れるのが怖くて言えなかっただけだ!」

つばさは一気にまくしたてた。

自分の姿をした相手に告白するのは、まるで鏡に向かって叫んでいるような奇妙な感覚だ。でも、不思議と勇気が湧いてくる。

「正直……今回入れ替わったのが、お前で良かったって思ってる」

「……っ!」

「お前が俺の体で頑張ってくれてるのを見て、ますます目が離せなくなった。……変な状況だけど、これが俺の本音だ」

つばさ(中身ひなた)は、あまりの衝撃に言葉を失い、顔を真っ赤にして俯いた。

(……どうしよう。つばさくんの心臓、壊れそうなくらいバクバク言ってる……)

自分の体から伝わってくる、つばさの鼓動。

それが、彼が今言った言葉の「重さ」を何よりも雄弁に物語っていた。

「……ずるいよ、そんなの」

ひなたは震える声で返した。

噂どころではない。二人の関係は、もう引き返せないところまで加速してしまった。

「……明日から、どんな顔して学校行けばいいのよ……」

「……さあな。でも、もう逃げねーよ」

夕闇が迫る中、二人はしばらくの間、重なる鼓動を感じながら黙ったまま座っていた。


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