第11話 『恋人疑惑、拡散中』
学校。
教室のドアを開けた瞬間。
つばさとひなたは同時に感じた。
「……なんか」
つばさが小声で言う。
「視線多くない?」
ひなたも小声で答える。
「うん……」
クラスの何人かが、二人を見てひそひそ話している。
「ねえねえ」
「やっぱりそうなの?」
「昨日の帰り一緒だったって」
つばさの背中に冷たい汗が流れる。
「……広がってる」
ひなたがため息をついた。
「広がってるね」
その時だった。
女子グループがひなた(中身つばさ)を囲んだ。
「ひなた!」
「え?」
「ちょっとちょっと!」
腕を引っ張られる。
「つばさと付き合ってるの!?」
「ええ!?」
ひなたは完全にパニック。
「ち、違うって!」
女子たちはニヤニヤしている。
「でも最近仲いいじゃん」
「昨日も一緒に帰ってたし」
「あとさ」
一人の女子が言った。
「ひなた、顔赤くなってるよ?」
ひなたは慌てて否定する。
「ち、違う!」
「これはその!」
言葉が詰まる。
(どう説明すればいいの!?)
その頃――
つばさ(中身ひなた)は男子に囲まれていた。
「つばさ」
「な、なに」
親友が肩を組んでくる。
「ついに彼女か」
「ち、違う!」
男子たちは盛り上がる。
「どこで告白した?」
「いつから付き合ってる?」
「キスした?」
つばさは顔を真っ赤にした。
「してない!」
男子たちは笑う。
「焦りすぎだろ」
「完全に図星じゃん」
つばさは必死に言う。
「だから違うって!」
しかし。
男子の一人が真顔で言った。
「でもさ」
「ひなたって可愛いよな」
つばさは思わずうなずいた。
「うん」
男子たちが一斉に固まる。
「……」
「……」
親友がニヤリと笑った。
「今“うん”って言ったよな?」
つばさは凍りつく。
「……あ」
男子たちが一斉に叫ぶ。
「やっぱり好きなんじゃねーか!!」
教室の反対側では――
ひなたも同じ状況だった。
女子が言う。
「つばさのどこが好きなの?」
ひなたは思わず答える。
「優しいところ」
女子たちが固まる。
「……」
「……」
次の瞬間。
教室がざわめいた。
「え、今の聞いた!?」
「ひなた認めた!」
「両想いじゃん!」
つばさとひなたは同時に気付いた。
(やばい)
(やばい)
二人は同時に叫んだ。
「違う!!」
しかし。
クラス全員が笑っていた。
「はいはい」
「青春だなー」
親友が言う。
「もう隠すなって」
つばさとひなたは顔を見合わせた。
そして同時に思った。
この噂、もう止められない。




