第10話 『二日目の違和感』
朝。
制服に着替えながら、つばさは鏡の前で深いため息をついた。
「……大丈夫かな」
鏡の中には、水野ひなたの姿。
昨日はなんとか学校を乗り切った。
だが――
今日は二日目だ。
部屋の向こうから声がした。
「つばさー」
桜井つばさ(中身ひなた)が顔を出す。
「準備できた?」
つばさは振り向いた。
「なあ……」
「なに?」
「昨日の学校さ」
ひなたは少し考えた。
「うん」
つばさは真剣な顔になる。
「……怪しまれてないかな」
ひなたは腕を組む。
「うーん」
少し考えてから言った。
「たぶん」
つばさが身を乗り出す。
「たぶん?」
ひなたがにやっと笑う。
「ちょっとだけ」
「ちょっと!?」
つばさは頭を抱えた。
「やっぱりかよ!」
ひなたが指を折って数え始める。
「だってさ」
「ひなたの友達が言ってたよ」
つばさは嫌な予感がした。
「……なんて」
ひなたは真似して言う。
「ひなた今日なんか静かじゃない?」
つばさは固まる。
「それから」
ひなたは続けた。
「つばさも言われた」
つばさはさらに嫌な予感。
「……なんて」
ひなたは笑いながら言った。
「つばさ今日なんか優しくない?」
つばさは天井を見上げた。
「終わった……」
その時だった。
玄関の外から声がする。
「おーい!」
つばさの親友だ。
二人は顔を見合わせた。
「やばい」
「やばい」
玄関を開ける。
そこには親友が腕を組んで立っていた。
そして二人をじっと見た。
「……なあ」
つばさの背中に冷たい汗が流れる。
「昨日から思ってたんだけどさ」
沈黙。
そして親友は言った。
「お前ら……」
つばさとひなたの心臓が跳ねる。
「もしかして」
一瞬の間。
そして――
「付き合ってるんじゃね?」
「「はああああ!?」」
二人は同時に叫んだ。
親友はニヤニヤしている。
「だってさ」
「昨日からなんか雰囲気似てきてるし」
つばさは慌てる。
「そ、そんなわけ!」
親友は続けた。
「ほら、付き合ってるとさ」
「お互いの癖とか伝染するっていうじゃん?」
ひなたが固まる。
親友は笑いながら言う。
「だからさ」
「最近お前ら似てきてるのって」
指を差した。
「それじゃね?」
つばさとひなたは顔を見合わせた。
そして――
同時に顔が赤くなる。
「ち、違う!!」
二人は同時に叫んだ。
親友は肩をすくめた。
「はいはい」
ニヤニヤしながら言う。
「青春だなー」
つばさは小声で言った。
「……ある意味当たってる」
ひなたも小声で言う。
「うん……」
二人は同時に思った。
まさか本当に“中身”が入れ替わってるなんて、言えるわけがない。




