第8話『同じ布団という問題』
夜。
時計は23時を回っていた。
つばさとひなたは、部屋の中央で向かい合っていた。
「……」
「……」
沈黙。
そして。
「……どうする?」
つばさが言った。
ひなたが首をかしげる。
「何が?」
「寝る場所だよ!」
つばさは部屋を指差す。
この部屋にあるのは――
布団一組。
ひなたがぽつりと呟いた。
「……あ」
つばさは頭を抱えた。
「そうなんだよ!」
「なんで一組しかないんだよ!」
ひなたは平然としている。
「別にいいじゃん」
「よくない!」
つばさは慌てて指をさした。
「俺、今ひなたの体なんだぞ!?」
「私だってつばさの体だけど?」
「そういう問題じゃない!」
ひなたはニヤッと笑った。
「もしかして意識してる?」
「してない!」
「してる」
「してない!」
「してる」
つばさは顔を真っ赤にした。
ひなたは肩をすくめる。
「じゃあルール」
「ルール?」
「真ん中に枕置く」
布団の中央に枕を置いた。
「この線よりこっち来たら負け」
「負け?」
「罰ゲーム」
「なんの」
ひなたはニヤッと笑った。
「秘密」
つばさはため息をついた。
「……なんでこうなる」
二人は布団に入った。
電気を消す。
暗闇。
静かな部屋。
「……」
「……」
沈黙。
だが――
二人とも眠れなかった。
つばさは目を閉じたまま思う。
(近い)
すぐ隣に、ひなたがいる。
しかも――
自分の体で。
ひなたも同じだった。
(なんか……変な感じ)
隣にいるのは、つばさ。
でも姿は自分。
心臓がやけに速い。
ドクン。
ドクン。
つばさが小さく言う。
「……つばさ」
「な、なに」
「まだ起きてるでしょ」
「……うん」
ひなたが小さく笑った。
「変な感じだね」
「なにが」
「いつもは隣にいないのに」
つばさは天井を見た。
「……そうだな」
沈黙。
しかし――
二人の鼓動はどんどん速くなる。
ドクン。
ドクン。
ドクン。
「……なんか」
つばさが呟いた。
「心臓うるさくない?」
ひなたも同時に言う。
「うん……」
その時だった。
二人の体に――
今まで感じたことのない反応が起きた。
「……え?」
「……あれ?」
つばさが固まる。
ひなたも固まる。
そして。
同時に布団をめくった。
「「えええええ!?」」
二人同時に飛び起きた。
「なにこれ!?」
「なんで!?」
顔が真っ赤になる。
つばさは慌てて布団を押さえる。
「ちょ、ちょっと待て!」
ひなたは自分の体を見てパニック。
「なにこの反応!?」
つばさが叫ぶ。
「知らないよ俺だって!」
二人同時に叫んだ。
「「何これぇぇぇ!?」」
慌てて布団にもぐる。
しばらく沈黙。
そして。
ひなたが小さく言った。
「……つばさ」
「な、なに」
「男って」
「うん」
「大変だね」
つばさは布団の中で頭を抱えた。
「頼むから今は静かにしてくれ……」
だが。
二人とも。
しばらく眠れなかった。
心臓の音が、ずっと止まらなかったからだ。




