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28:声を吸う石

作戦会議を終えた後も、僕の胸には一つのしこりが残っていた。


「計画は完璧だ。でも、成功させるには僕が傭兵たちに気づかれずに、岩盤の弱点を正確に見つけ出す必要がある。そのために、もう一度だけ現場の様子を確かめに行きたいんだ」

テーブルを囲んだまま、僕はリラとミーナにそう切り出した。


「それに、どうしても気になるんだ。あの傭兵たちの守り方は、ただの金儲けのためじゃない気がする。サイラスが執着している、あの鉱石が一体何なのか……この目で確かめておきたい」

僕の真剣な目に、リラは少し考えた後、静かに頷いた。

「……分かったわ。でも、絶対に無理はしないで」

ミーナも「カイ兄ちゃん、気をつけてね!」と心配そうに僕の顔を覗き込む。

二人の信頼が、僕に勇気をくれた。


その日の夜更け、僕はコダマを肩に乗せ、再び採掘現場へと向かった。昼間の喧騒とは打って変わって、森は静寂に包まれている。月明かりだけが、僕の進む道をぼんやりと照らしていた。

今度は、闇に紛れた完全な隠密行動だ。


僕は道の『声』に耳を澄ます。

《……重いブーツ……苛立ち……三人組……さっき通った……》

道が記憶している傭兵たちの巡回の痕跡を読み取り、彼らの気配を正確に避けながら、闇の中を進んでいく。


採掘場の中心部に近づくにつれて、僕は強烈な違和感を覚えた。


風の囁き、土のうめき、遠くの獣たちの息遣い……当たり前に存在していたはずの世界の『声』が、急速に弱まっていく。まるで、分厚いガラスの向こう側のように、すべてが遠く、くぐもって聞こえるのだ。

そして、鉱石が山積みされた場所にたどり着いた時、僕は息をのんだ。


そこは、かつて訪れた『声なき森』と全く同じ、『声』が完全に死んだ場所だった。


安らぎではない、すべてが存在を失ったかのような、不気味で冒涜的な静寂がそこにあった。

僕は息を殺し、山積みになった黒く鈍い光を放つ鉱石の一つに、ゆっくりと手を伸ばす。

指先が石に触れるか触れないかの距離まで近づいた、その瞬間。


ぞわり、と全身の肌が粟立った。

自分の体の中から発せられている生命の『声』が、その石にじわじわと吸い取られていくような、不快で冒涜的な感覚。


肩の上で、コダマがカタカタと震え、僕のマントを必死に掴んだ。彼もまた、この石が放つ生命への拒絶を、敏感に感じ取っていた。

僕が慌てて手を引くと、近くを通りかかった見張りの傭兵たちの囁き声が、かろうじて耳に届いた。


「……おい、この石のそばにいると、どうも悪夢も見なくなるらしいぜ」

「気味が悪い。俺はむしろ、何も感じなくなる方が怖いね……」


その言葉で、僕の脳裏で点と点がつながった。


サイラスの目的は、単なる富ではない。

彼は、この世界から『声』そのものを消し去る力を持つ、この不気味な鉱石を大量に集めているのだ。

目の前の事件が、サイラスが運河を独占したいというだけにとどまらない、もっと大きな問題の一部であることを僕は確信した。


恐ろしい真実を胸に、僕は静かにその場を離脱した。

僕の心には、作戦を成功させる決意と同時に、これから対峙するであろう巨大な闇への、新たな決意が固く刻み込まれていた。



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