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第42話:罪と追撃 (Part 2)


 俺とレイラは、通路の奥へと歩みを進めた。


 岩盤をくり抜いたような通路が奥へ続き、横幅は二人が並んでも余裕があり、天井は見上げても暗闇に溶け込み、どこまで続いているのかわからなかった。


「なんの場所かしら?」


 レイラが口を開いた。声がわずかに震え、俺の腕にそっと体を寄せてくる。


「……わからない。扉に比べると通路がやたら広いってことくらいしか」


 ゆっくりとした足取りで、前に進むと光の正体がぼんやりと見えてきた。


 木の扉にひび割れた跡があり、内部の光が漏れていた。

 猛禽類の爪で抉ったような傷跡だった。


 その正体を想像しようとして、俺は慌てて首を振って「……よし、入ってみよう」と思考を切り替えた。

 扉に肩を当てて、押してみた。引き扉かもしれないと思った瞬間、扉が、ぎぃと内側にゆっくりと開いた。


「うそ、教会!?」


 内部の輝きにレイラは目を見開き、声を上げる。

 扉をくぐると、俺たちは言葉を失い、立ち尽くした。


 埃だらけの椅子が整然と並び、割れたステンドグラス越しに祭壇が薄暗く照らされ、朽ちた十字架が佇む。

 数十年は放置されていると思われる、小さな教会。


 ステンドグラスから差し込む光は、どうやら魔石が発するもので、渓谷でよく見るきらきらとした輝きを放っていた。

 その輝きは、廃墟の中で唯一、時を忘れたように生きていた。


「レイラ……ここ、なんかおかしい。だって……」


 異世界に地球の教会なんてあり得ない、と言いかけた瞬間、レイラが鋭く声を上げた。


「ツバサ、何かいる!」


 レイラの反応は速かった。

 俺は疑問に気を取られ、気づけなかった。


「レイラ……何か見えたのか?」


「ううん、物音が聞こえた気がしただけ」


「どこから?」


 レイラが無言で指差す方へ、俺は目を向けた。

 薄く照らされる祭壇。

 ステンドグラスに照らされた光の中に、埃が舞っているように見えた。


「何かいる!」


 俺は咄嗟に、レイラの前に出て彼女を庇うと、右手を祭壇に向ける。

 祭壇まで十数メートル。

 魔導ガントレットを水平方向に出力すれば、相手の視覚を奪うことくらいできる。


 足を踏ん張り、自身が後ろに飛ばされないように力を込める。


 いつの間にか唇はかさかさに渇き、心臓が喉のすぐそこまでせり上がってきているように鼓動がうるさく感じる。


 緊張と恐怖。


 ゲームの中では幾度となく繰り返してきた俺も、リアルではこれほど無力なのか。

 そう思う自分が、ひどく嫌だった。

 それが証拠に、伸ばした手のひらには、じっとりとした汗が滲んでいた。


 一秒が一時間にも感じられるほど、緊張した時間が流れた。

 あと少しで緊張の糸が切れそうになる直前、祭壇の奥から埃が舞い上がり、現れた。


 俺は何も出来ずにいた。

 ただ口を開け、見開いた目で、眺めることしかできなかった。



(第4章 第43話に続く)


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