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第41話:罪と追撃 (Part 1)


 レイラが、そこにいた。


 あまりに突然で、幻を見ているのかと思った。


 けれど今、彼女は俺の名前を呼び、泣きそうな顔で、それでも優しく微笑む瞳で俺を見つめながら歩いてくる。


 「……レイラ……?」


 口から漏れたその声で、自分の喉が震えているのを知った。

 踏み出す足は重かった。けれど、それでも進む。

 一歩、そしてもう一歩。


 胸の奥に、遅れて湧き上がってくる迷いがあった。


 召喚者の寿命。

 そして『鍵』としての俺たち。

 レイラは、どこまで知っているのか。……いや、何も知らないまま来たのではないか?


 この先、俺が伝えなければならないことを思うと、胸が締めつけられた。


 ――そのときだった。


 ガッ!


 地面が震え、張り詰めた空気を魔力が切り裂く。


 「伏せて!!」


 レイラの叫びと同時に、反射的に彼女の肩を抱いて地面へ倒れ込んだ。


 直後、背後の岩肌が爆裂する。

 炎の熱と飛び散る石片。

 忘れかけていたあの渓谷の戦場感覚が、一気に蘇る。


 レイラの手が、俺の腕に触れている。

 そこから伝わってくる、確かな温もり。あのときと、何も変わらずに――


 「無事……だったんだね……」


 どちらの言葉だったかは、わからない。ただ、それがふたりにとって必要な一言だった。

 けれど、その一言に、こぼれ落ちそうな安堵と、抱えきれない罪が宿っていた。


 だが、その余韻は長くは続かない。


 再び、霧の向こうから魔力の気配と衝撃波が迫る。


 「クソ、もう解けたか……」


 歯を食いしばりながら立ち上がる。


 魔導アームから放出した魔石の微粒子――俺が試作したばかりで、まだ名前もない。

 便宜上、塵魔ジンマとでも呼んでおくことにするか。

 数十分しか保たなかった。改良の余地ありだな……。などと考えている間にも、敵は来る。


 まだ終わっていない。

 狙われる理由も、敵もわからない。けれど、無駄に死ぬわけにはいかない。


 「……行こう」


 レイラの手を握る。

 この手を、もう離さない。


       ***


 しばらく岩場を走り抜けると、崖の一部に古い木の扉を見つけた。


「なんだ、これ?」


「ずいぶん、古そうね」


 大きなかんぬきが掛けられ、まるで何か危険なものを閉じ込めているような気配を感じた。


「……ヤバそうじゃない?」


 レイラも俺と同じように感じたらしく、目が合うと小さくうなずいた。


「でも、行くしかないよね?」


「……だな」


 もたもたしていると、追いつかれる。

 仕方なく、二人でかんぬきを外し、中に足を踏み入れた。


 埃っぽく乾燥した空気に顔が歪み、肌がぴりぴりする。


 後戻りしたくなる衝動をこらえて、扉を閉める。

 暗闇の先に、ほんの僅かだが明かりが見えた。


 互いの距離も掴めない暗闇のなか、伸ばした手がレイラの手に当たり、ぴくりとしたが、すぐ握り返してきた。


 その手をしっかり握り返した俺は、前へ進んだ。



(第4章 第42話に続く)


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