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第35話:再会の代償 (Part 3)


 魔導ガントレットで上空に舞い上がった瞬間、異変に気づいた。


「なんだ、これ? 雲海?」


 峡谷の幅はおよそ三キロ。

 時速六十キロで飛べば、三分で対岸の塔が見えるはずだ。


 しかし、眼下の景色に思わず速度を緩めた。

 月光に照らされた峡谷は、普段なら魔石のきらめきが幻想的に広がっている。

 

 だが今、目の前には海のように真っ白な雲が広がっていた。

 ゾルディスの黒い霧とは異なる、純白の雲海。


 毎日のように見ていた峡谷に、俺ははじめて嫌な胸騒ぎを覚えた。

 

 ゆっくりと流れる雲海。


 次の瞬間、雲に丸い穴が現れたと思ったら、俺の体のすぐ目の前を光る矢が通り過ぎた。


「うぉぉ! な、なんだ!?」


 反射的に仰け反った勢いで、体勢を崩しかけるが、腕の重力制御が機能して、持ちこたえる。


「攻撃!?」


 俺は意識を集中する。

 

 ゾルティスなのか?

 でもどうして?

 俺が今日、飛行するなんて誰も知らないはず……。


「リリアナが裏切った!?」


 ついさっきのことを思い返し、首を横に振る。

 彼女の態度から、そんなふうには考えられない。


「じゃあ、誰なんだ……?」


 考える暇もなく、次の光の矢が飛んできた。

 必死にガントレットを操り、なんとか躱す。


「ふざけんな、蜂の巣にでもする気かよ!」


 困惑している間にも、光の矢はどんどん増え続けた。

 昨日今日で、操作に慣れたといえ、無数の光の矢に俺は翻弄され、ついに……。


「ま、マジか!?」


 左腕に光の矢がかすめ、スパークが飛び散る。


「グォォォ――」


 視界が白く染まり、音もなくなった。

 何かに呑まれるような感覚が全身を貫く。


 一気に制御を失った俺は、錐揉みになって白い地獄へと、墜ちていった。


       ***


【ゾルティス連合、岩壁の塔】


 レイラは、エルフから頂いた月折結に手紙を書き、ツバサに出そうとしたときだった。


 遠くの空で魔法の光が、いくつも空に向かって放たれた。


「えっ、なに!?」


 暗くてよく見えないが、何かを撃ち落とそうとしているように感じた。

 しばらく光が飛び交っていたが、やがて撃ち落としたのか夜の気配に包まれた。


「なんだったのかしら?」


 考えても分かるものではないので、レイラは月折結を折りたたみ、空中に放った。

 鶴の形をした折り紙が、ゆっくりとぎこちなく羽ばたき、夜闇に消えていった。


「今はまだ読めないけど……ツバサなら大丈夫」


 両手を合わせ祈るレイラ。

 月刻にゾルティスが、攻撃を仕掛ける。


 それまでにこの手紙が届いて、月光の下でツバサが読んでくれれば……。

 レイラは希望と期待を込め、祈るように夜空を見上げていた。


 まさか、ツバサが渓谷の底に落ちたとは思いもしないで。



(第3章 第36話に続く)


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