7 アキラ「バカ。」
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「来年のバスケ部は強いのか?」
帰り道、いつも寄るセブンで、竜也と省吾は柵に寄りかかった。まだそんなに遅くないのに空はオレンジ色に強く光り、空の端は夜の色だった。
まるで焼き芋に食いつくみたいにアイスに齧りつき、ハフハフと白い息を漏らす省吾を見ながら、「なんでこんなに上手そうに食えるんだろうか」と思う。口の中のアイスが溶け切らないのか、しかめっ面で喉越しを鳴らした省吾は胸元を何度か叩いて答えた。
「まぁ、来年の事はあいつらが何とかするだろ。はぁー、運動後のアイスうっま!食うか?」
「いるか!こんな寒い中そんなさむっかしいもんよく食えるなぁ。」
省吾のバスケ部は今年、府の新人戦でベスト4に進出すると言う大躍進を果たした。春の新人戦でベスト4、その後の試合でベスト8、ベスト4と準決にコマを進めることは無かったが、それでも省吾の代のバスケ部は今後黄金期と寄ばれて語られていくんだと思う。
「まぁ、無理かもなぁ。」
落ち着いた声で、省吾は平気で残酷な事を言う。
スポーツの世界は実力が全てだ。勝てるか勝てないか、それで全てが決まってしまう。
そんな乾いた世界で俺たちは持ち前の青を振りまいている。最後にその乾いた大地が綺麗だったな、なんて言うために。
「しかし、卒業まで後3ヵ月もあんのかぁ、なげぇな。」
あくびをしながら省吾が言った。
「お前ら指定校組はな。」
省吾は春から推薦で大学バスケの名門大学に入学する。
「よ、頑張れ受験生。」
「あのなぁ、」
その受験生を狩りだしておいて、当の本人はニシシと笑う。
「しかし、勝負も飽きてきたな。」
「そりゃ1ヵ月毎日やってればな。」
「なぁ、山田竜也。俺はここ最近考えてたんだよ。」
「なんだよ急に。」
「俺たちの高校生活ってあまりに灰色すぎたんじゃないかって。」
お前は別にバラ色だっただろ。そんな言葉は言う気がそばから抜けていってしまう。
多分、そう言う事ではないんだろう。
「つう訳で、高校生活最後の一大イベントととして。」
省吾はジャカジャカジャカジャカとアイスの棒でエアードラムを打つ。
「ジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカジャカ…」
「なげぇよ」
蹴ろうとして、はらりと躱される。そのまま一回転して省吾はこちらに向き直って変なポーズを取る。
「パン!これから五番勝負を行う。負けた奴は好きな女子に告白する事!」
「…はぁ。」
次に出てきた言葉は、珍しく俺の本心がそのまま吐露したものだった。
「バカ。」