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高校生活が終わる  作者: チヨダ・コーキ
20/30

20 更紗「イン ロッテリア再び」

20到達!読んでくださっている方々まずは感謝を。

ちょっと忙しくて更新遅れましたがボチボチ始めます。

     (20)

「惜しかったじゃん。」

 やっぱり、彼は眉間に皺を寄せながらヘッドフォンを外してこちらを見上げていた。

 何?っと、そんな言葉が顔に浮かんでいるから分かる。

「私、予備校すぐそこなんだ。」

 何に対しての言い訳なのか分からないセリフにやっぱり彼は何も答えてはくれない。

 今日は私が私服で山田が制服を着ている。

 あの勝負?の後、その足でここに来たのだろう。セットドリンクの紙コップから結露した雫が下のシートに丸い濃淡を作り出している。

「何か用?」

 ぼそりと山田が言った。地声は他の男子よりも低め何だなぁと、あの日なら怖がっていたかもしれないけれど、今となってはそんな感想すら抱くほど私は山田に慣れてしまっていた。

「はいこれ。」

 私はポケットから、赤ペンを取り出して山田の前に置いた。

 何処にでも売ってる、普通の赤いボールペンだ。

「昨日間違って持って行っちゃったから。ごめんね。」

 何か言いたそうな顔をしたけれど、山田は何も言わなかった。「ッス」、と頭を軽く前に振って、筆箱を取り出す。

 ゴツゴツした手の甲には幾つもの傷の後があって、そんな彼が赤ペンを握ると私が持った時に比べてとても小さくて細く見える。どうやら筆箱には必要最低限の物しか入れないらしい。中はガランとしていて、その中に定規とシャー芯の入れ物だけが光るのが見えた。

 しかし、チャックの部分にはそれが当てはまらない。

 キーホルダーのようにしてユニフォームのぬいぐるみが3つ、ついていた。

「まだ何か?」

 じっと山田を見ていた私を訝しそうに言う。

 普段の私なら、ここで引き上げるだろう。「じゃあまた学校で。」とか言って、お互いに干渉する機会すら持たずに卒業までやり過ごせばいい。

――でも。

 私は背負っていた鞄を山田の座る席の2つ隣に置く。

――このままじゃ、身が持たない。


『お前らもこねぇ?』

 勝負の後、省吾が私達に投げた言葉が蘇る。

 それを聞いた時の由奈の横顔がまだ脳裏にこびり付いている。


「は?」

 彼はスッとんきょんな声を上げて、こちらを見ていた。

「私もここで勉強する。」


――何か血迷ってない、私。


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