9/26
09
「購買のパンなら売り切れちゃったよ」
「え、」
俯いていた顔を上げると、綾部先輩は優しく微笑む。
「パン、買いに来たんでしょ?」
「は、はい」
売り切れ?
そんな、売り切れることあるんだ。
どうしよう、今日何も食べる物持って来てないのに。
自販機でカロリーメイト買って、空腹を紛らわすしかない……。
「あげる」
「え?」
そう言って綾部先輩は持っていた焼きそばパンを私に差し出した。
思わず受け取ってしまい、「あの、」と返そうとした時、パンと一緒に小さな紙切れがある事に気がついた。
「それ、俺のID」
「え?」
綾部先輩はパンを受け取る事なく、そのまま通り過ぎて行く。
お友達が「やっさしー」と茶化すように言っているのが、遠くで聞こえた。




