第19話 満たされた渇き
そういえば「吸血」の説明を見ていなかった。僕はステータスページに書いてある「吸血」に触れる。
「吸血」……アクティブスキル。血を吸う。MPを消費しない。
効果はスキルの名称の通りだった。しかし、「MPを消費しない」ということが大きな特徴だ。現在所持しているスキルは全てMPを消費するので、貴重な戦力になるだろう。
「ついでにユニークスキルの効果も確認するか」
何故か新しいスキルが追加されていたので、それも含めて調べていく。説明はこちら。
「管理者」……ステータスの管理者。
「復讐の誓い」……あの日に復讐を誓った。
「夢」……彼が歩んできた軌跡を見てみよう。
意味がわからないというか、説明になってない。まるで効果を知らせる気がないようだ……。
ユニークスキルは置いておこう。今は「吸血」の発動方法が知りたい。
「アドミン、「吸血」の発動方法を教えてくれ』
アドミンに訊くとすぐに返事が返ってきた。
『「吸血」は牙を突き立てて名称を念じると発動します』
どうやら口に出さなくてもいいようだ。「吸血」は今までのスキルとは色々と異なっている。
「血を吸うということは生きた動物が必要か。それなら捕獲に行こう」
狩りに行く前に、MPを使い切っておこう。万が一に備えなければならないからな。
ちなみに、今のMPは「2/10」だ。
「“アイテムボックス”」
そう唱えた瞬間、頭痛と眩暈が襲ってきて、意識が途切れた。
嗚呼、身構えていたのだが耐えれなかった。最近は意識が飛んでばかりだ……。
*
待ち望んでいた機会がやってきた。これを逃してはいけない。
そう思った俺は行動を起こす。今ならいけるはずだ……!
***
やばい、アイツはもう目覚めるのか!この早さは想定外だ。もう少し時間があれば――
*
目覚めると、武器を持っている状態で森の中を突っ立っていた。後ろを振り返ると見慣れた(?)川がある。
……いつの間に準備を終わらせていたのだ?
そんな疑問が浮かんだが、些細なことなので思考を切り替える。
ひとまずは神導書を閉じよう。
「“ステータスⅠ・クローズ”」
そう唱えると神導書は青白い光る粒子になって消えた。
動物はここの辺りにはいないが、奥に行くと見かけるようになるので奥を目指そう。
真っ直ぐに少し速めに歩く。熊と蜘蛛には用がないので現れるな、と願いながら。
それから数十分後、5mほど先に草を食べているホーンラビットを発見した。ちなみに以前発見したホーンラビットとは異なり、色は茶色で耳が長く、大きさは1回りか2回りほど小さい。
そのホーンラビットは草を食べるのをやめてこちらを見てきた。このままだと逃げられるか襲われるので、早く捕獲しなければ。
尚、僕が考えた捕獲方法は「加速」で接近し、手で捕まえるというものだ。
「“加速”」
ホーンラビットが大地を蹴り跳ばして逃げようとした時に、僕は武器を手から放して「加速」を発動させた。
風が吹いて小さな青白い光が発生し、あっという間にホーンラビットがいるところに辿り着く。
僕は咄嗟に手を伸ばしてホーンラビットを捕まえるが、勢い余って木に軽く衝突してしまった。
「加速」を使用したからか、木に衝突したからなのか全身が痛む。僕はそれを無視して手で捕まえたホーンラビットを見た。
ホーンラビットは初めは抵抗をしていたが、無駄だと悟ったのか抵抗をやめ、大人しくなった。以前のホーンラビットとは大分違う。
捕獲したことだし、早速「吸血」を使っていこう。普通なら躊躇うところだが、僕は何の抵抗もなくホーンラビットの頭に牙を突き立てて「吸血」と心の中で唱える。
すると、ホーンラビットの血液と思われる液体が口内に侵入してきた。何とも言えないくらいの美味な液体が味蕾を刺激し、全身の少し痛みが和らいでいくような感じがする。
一旦牙を抜いてホーンラビットを見ると、恍惚の表情(兎に表情があるのかはわからない)を浮かべ、力を抜いていた。
僕は見なかったことにして吸血を続ける。段々と喉の渇きが満たされていき、久しぶりに満足感を得ることができた。
俺は結局血を全て吸ってしまい、少し残念に思った。
――この時、僕は何を思ったのか。
―――――――――
〈ステータスⅠ〉
基本情報:レイ 男 12歳
人種:魔族、■族
種族:吸血鬼
位階:Ⅰ
LV:1(1/10)
MP :11/11
筋力:12
耐久:10
魔力:12
魔耐:10
敏捷:9
持久:9
器用:5
幸運:0
ステータスポイント:0
スキルポイント:5
ユニークスキル:管理者lv1、復讐の誓いlv3、夢lv1
スキル:吸血lv1、加速lv1、鑑定lv1 、アイテムボックスlv1
魔法:
称号:転生者、吸血鬼の■■■■、復讐の道を歩む者、欠陥品(new)
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――僕の何かがまた一つ失われていく。そしてカチッとどこかで音が聞こえた気がした。
紅の瞳はこちらを静かに見つめている。その様子はナニカに怯えているようだった……。
第一章はそろそろクライマックスに入ります!
追記
「“ステータスⅠ・クローズ”」のくだりを追加しました。