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第17話 スキルの試用

 川に着くまでに、僕はスキルの能力を推測していた。スキルの説明があるといっても簡単なものなので、能力の詳細を把握することはできない。


「鑑定の説明にあった“物など”という記述が気になるな」


 “など”の中に植物や生物は含まれているかで有用性が変わってくる。植物に有効なら毒があるのかも見抜けるので食料事情がある程度解決するし、生物に有効だと弱点などが分かるかもしれない。



 そんなことを考えていたら水が流れる音が聞こえてきて、いつも通り軽い脱力感が顔を出す。言いたいことは、川に着いていたということ。


「では、スキルの試用を始めていこうか」


 まずは「鑑定」からだ。川原にある「灰色で丸みを帯びている石」を拾って鑑定を使用する……ことができなかった。

 理由は単純。アドミンに聞き忘れていたからだ。


『スキルを発動するという意思を持ち、スキルの名称を口に出すだけで発動しますよ』


 アドミンに方法を教えてもらおうと思った矢先に発言してきた。lv1なのに中々有能なスキルだな。


 それはさておき、早速発動させてみよう。左手に持った石に右手をかざして呟く。


「“鑑定”」


 すると、半透明な画面のようなものが出てきた。そこに書いてあったのは――


『石』


 という文字だった。尚、それ以外には何も書いていない。


「……そんなことは見ればわかるだろう」


 怒りや呆れ、驚きなどを通り越して冷静になった(?)。「鑑定」が教えてくれたのは見ればわかる情報だけ。そんな信じたくない現実が現れた。


「……もう一回発動させてみよう。“鑑定”」


 出てきた画面には――『石』という一つの文字が書いてあった。


「……」


 僕は無言になって所持しているナイフに手をかざす。


「“鑑定”」


 そこには案の定『ナイフ』という単語――ではなく、『石器』という文字が。僕は無言のまま槍にも手をかざす。


「“鑑定”」


 そこには予想した通り、『石器』という文字が書かれてあった。


「“鑑定”」


 木苺に使うと『実』の文字が、ホーンラビット(の死体)に使うと『死体』の文字が画面に表示された。


「よし、次は“アイテムボックス”を試そう」


 そう言った僕に浮かんでいた表情はどんなものだろう。



 そこには()()()で立っていた少年がいた――



   *


 「“アイテムボックス”」


 そう呟くと、一辺が5cmほどの青白く光っている(立方体)が出現した。


 あの出来事があってからすぐに意識を切り替えて「アイテムボックス」を試しに使ってみたのが、現在の状況である。


「この(立方体)の容量を把握したいな」


 調べる方法は石などの物体を箱に入れること。おそらく、この(立方体)に物体を接触させる……というか、入れるような感じですれば収納されるはず。あとは見た目と同じ容量ではないことを願うだけだ。


 実験をするために石(体積は10㎤ほど。尚、正確ではない)を集めていく。幸い、この川原には数えきれないほどの石があるので、集めるのには苦労しない。


 それから程なくして小石を集め終わったので、早々に小石を収納していく。


 ……それは92個目を収納しようとしたときだった。(立方体)にその石は入らずに弾かれてしまう。


「これが限界か」


 「鑑定」を使った時から薄々気付いていた。スキルは大したものではないということに。


 「鑑定」は見たら分かるようなことしか知らせてくれない。

 「アイテムボックス」は体積がおよそ10㎤の石が91個しか入らなかったことから、体積は1000㎤前後だとわかる。つまり、アイテムボックスのサイズは一辺が10cmほどの立方体ということであり、大した量しか入らない。

 まあ、それでも木苺がいくつか入るので役に立たないわけではないが「鑑定」は違う。


 ここで余談だが、鑑定の結果もアイテムボックスも「閉じろ」と念じるだけで消える。


 閑話休題かんわきゅうだい。こんな時に言うことではなかったか。


 要するに、スキルにはあまり役に立(無いよりは少しマシと)たない(いう程度の)ものが多いということだ。


 ……残念である。役に立つのではないのかと期待したのだがな。


 そう思ったのちに、アイテムボックスの中身を木苺に入れ替えることを忘れていたことに気付いた。


「“アイテムボックス”」


 再びそう呟いた瞬間、眩暈めまいがして目の前が暗くなった。やばい、そう思ったが既に手遅れで、倒れることに抵抗をすることができずに意識が薄れていった。



   ******************************



 「この石はインフェリスラピスか?」


 ()は夜を彷彿ほうふつとさせるような美しい紺色の石を見つけた。これは()が探し求めている石に酷似こくじしているので、一見しただけではわからない。


「“鑑定”」


 そう呟くと見慣れた画面が現れた。


『モルスヴィア……ミスリルやヒヒイロカネを上回り、アダマンタイトやオリハルコンに並ぶ硬度を誇る冥界にしか存在しない鉱石。見た目は紺色でインフェリスラピスに間違えられやすい。この鉱石を使った武器は一般人が使用し、剣聖級の人物を死に導いた(屠った)という伝説があるほど強力である』


「ただの役に立たない石ころか。期待したのだがな」


 その文を読んだ()は落胆した。こんなものでは()()()ほふることなどできやしない。


 ()()()を屠るにはインフェリスラピスが必要だ。そのためなら何だってする。()()()を屠るのは()()()を救うために必要なことであり、悲願達成のための一歩だからだ。


 ハルカ……()()()が助けてやるから待っててくれ‼︎

 ……元はと言えば()不甲斐ふがいないせいでこうなってしまった。()()()()にもっと力があれば!今後悔しても遅いのはわかっている。でもそんなのは関係ないんだ。()にはお前しかいない、残っていないから。()はお前のために生きているのだから。


 ()()()()のことを昨日のように覚えている。()を変えた出来事は2回起きた。その時の喪失感を思い出したからか、目から溢れてくる想いが地面を濡らしていく。




 心で燃えさかる復讐のほむら。それを抑えるどころか解放していく□□。■■■の■き■りであり、■■■の■である□□は静かに復讐への道を歩んでいった。




        『“復讐ふくしゅうちかいlv■6”を発動します』



   ******************************



―――――――――


〈ステータスⅠ〉

基本情報:()() 男 12歳

人種:魔族、■族

種族:吸血鬼ヴァンパイア

位階ランク:Ⅰ

LV:1(1/10)

MP :0/10

筋力:12

耐久:10

魔力:12

魔耐:10

敏捷:9

持久:9

器用:5

幸運:0

ステータスポイント:0

スキルポイント:5

ユニークスキル:管理者アドミニストレータlv1、復讐ふくしゅうちかいlv3(1up)、(彼の軌跡)lv1(new)

スキル:吸血lv1、加速ヘイストlv1、鑑定lv1 、アイテムボックスlv1

魔法:

称号:転生者、吸血鬼の■■■■、復讐の道を歩む者(new)


―――――――――


 復讐を果たした先の景色を彼が見ることはあるのだろうか――

明日からは通常通りに更新していきます。


今回は物語の根幹の片鱗が覗いた回になりました。次回は零が目覚めたところから始まります!

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