プロローグ 目覚め
美しい草花が咲き乱れている広大な草原。その中に12歳ほどの容姿端麗な少年が横たわっている。
風にゆられて、寝ている少年のサラサラな銀髪がなびいた。髪が顔に当たってくすぐったかったからか、その少年の瞼が開く。
「う……、まだ暗いのか……。ならもう一度寝てもいいだろう……。あれ?眠れない……?仕方ない、起きるか……」
「起きるか」と言っているが、起き上がらずに寝そべっている。目が開いているがまだ意識が覚醒しきっていないのか、現在の状況がおかしいことに気づいていないようだ。
それから数十秒経ってようやく意識が覚醒し、少年は起き上がった。
「……」
辺りを見渡してから動かなくなる。おそらく、目覚めたらいるはずのないところにいて、混乱しているのだろう。
「……ここはどこだ」
誰もいないのに質問している。この少年はおかしくなってしまったのだろうか。……いや、どうやら独り言を呟いただけのようだ。まあ、ほとんどの人がこういう状況に陥ったときにそう思うだろうから、自分しかいないときでも口に出してしまうのは正常だろう。
少年は立ち上がり、再び辺りを見渡そうとしたが、身体に違和感を感じた。
「何か変だな……」
自分の身体を見て違和感の正体を探る。少しすると、違和感の正体に気づいたようだった。
違和感①「着ている服が寝る前の記憶と違う」。寝る前は空色の服を着ていたが、現在は黒い燕尾服に白いシャツ、黒い蝶ネクタイに白い手袋、そして裏地が紅い襟がついた黒いマントを羽織っている。
違和感②「身体が小さくなっている」。寝る前は身長が約175cmあったのに、現在は150cm前後(測るものがないので推測である)しかない。
違和感③「健康になっている」。寝る前は立つことすら容易にできなかったのに、現在は立ち歩くことができている。
これが感じた違和感のようだ。ただ、どうしてこうなっているのかがわからない。目が覚めたら知らない場所にいたり、服が変わっていたり、身体が小さくなったりしている。
「誘拐されたのか……。いや、これは違うな。僕に価値があるとは思えないし、違和感②と③が説明できない」
少年はまず「誘拐」という考えが浮かび上がったが、この考えを否定した。
「だったら、どうしてこのような事態になったんだ?」
考えてもわからない。そもそも、身体を小さくするなんてできるのだろうか。少年はあれこれ考えたが、結論を出すことができなかった。
「考えても無駄だな。さて、改めて状況を確認するとしよう」
少年は一歩を踏み出した。……未知なる世界へ
今回は三人称視点となっておりますが、基本は一人称視点で進めていきたいと思います!
〈追記〉
カクヨム様にある私の近況ノートに主人公の「黒雨零」のイメージ画像を載せました!
URLを貼っておくので、是非見てください!
https://kakuyomu.jp/users/nulla/news/16817330661139403430