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3 宇宙空港の逃避行

 三人が行き着いたところは、最下層の崩落事故現場からは三層ほど上の位置にあり、崩壊には巻き込まれていなかった。撤退蜂起された現場の事務所で見つけた古資料によれば、放棄されたゴンドラ施設は今では倉庫になっている部屋の中にあるはずだった。カミラの推定では、ゴンドラ施設は長い間放棄されていたようだった。保温設備も稼働していないはずであり、極低温の搬送空間に接しているがゆえに、入り口の周囲にひどい結露部分があるはずだということだった。そして、彼女の推定通り、確かに異様に結露の多い区域があり、三人はそれをヒントに入り口を見つけることができた。

 ゴンドラへの入り口とその制御室は密閉構造を維持していた。施設に嵌め込まれている窓ガラスは、結露がひどかった。それは、施設の外側、すなわちゴンドラの行きかう空間がさらに低温であることを示していた。

 カミラとアドナーンは、ゴンドラに乗り込むために稼働制御盤を探し始めた。残念ながらクラウディアはこの手の才能に恵まれておらず、二人の作業を不思議そうに眺めているだけだった。カミラの推定の通り、制御盤によってゴンドラ全体の稼働が可能になると、乗り込んだゴンドラもまた稼働し始めた。動き始めたゴンドラはそのまま上方へと動き始めた。

 ゴンドラは居住区を超え、さらにビジネス区を超え、宇宙空港へと昇って行った。行き着いたのは宇宙空港の広場に通じる旧物流フロアだった。その広場には、ひどい寒さの中にクレーンやフォークリフト、パワースーツなどが放置されていた。それらは、宇宙空港で直接一昔前の貨物宇宙船ルナキャリアへ製品や鉱物を積載させるために使われていた時代の名残だった。

 三人はこのままその先に進むには、極寒の長い距離を移動する必要があった。そこで彼らは旧物流フロアの備品から機密宇宙服を探し出した。ただし、今まで身に着けて来た強制労働者の服装は、すでに相当に臭っていた。彼らはそれらを脱ぎ捨て、出来るだけ急いで体を吹き上げたうえで宇宙服を身に着ける必要があった。

 彼らは、旧物流フロアを抜け、その上に設けられたビジネスエリア・事務所エリア・商業エリアへと進み出ることができた。ただ、彼らの宇宙服は、華やかで機能的な支配階級のそれとは明らかに異なるものだった。それゆえ、三人は夜時間帯を待った。


 月の生活時間サイクルは、地球上の煬帝国首都杭州府のそれと一致させられていた。夜時間帯になり、警備陣以外が眠りについた頃、三人はまず月開発公司に潜入することにした。それは、彼らにとって未知の開発責任者を洗い出すことだった。そして、究極的には開発責任者に状況を問いただし、責任を取らせることだった。

 カミラは、ふたたび使われていない区画を見つけた。それは宇宙空港管制部の目と鼻の先にある大規模な出発エリアだった。その一角にアドナーンとクラウディアを残すと、カミラは再び出かけてしまった。クラウディアたちが辺りを見渡すと、地球光が照明の無いその施設内部のドームを明るく照らしていた。大きな出発エリアのドームなのだが、その施設は長い間使われた形跡がなかった。それは、月に送り込まれた多くの強制労働者たちが二度と地球へ戻ることが無いことを物語っていた。

 月開発公司の月本部は、宇宙空港管制部のすぐ下にあった。おそらく、管制司令部と開発事業主体は組織体が一緒であるためであろうと考えられた。カミラは夜明け前のうちに月開発公司の月本部に入り込んで月本部の総督室のエアダクトに潜み、一日中観察することでだれが責任者であるかを慎重に見極めた。

 早朝、その席にまず来た者は、老掃除夫だった。

「煬帝国のベテランアサシンたちが、新任としてここまで来るとはね。地下の事故に何かを感じたのかな」

 彼は独り言を言いながら手早く掃除と整理整頓を済ませつつあった。

「ほほう、後でレスキューが必要だな」

 彼はそう独り言を言うと、かすかに臭いの漂うダクトを一瞥しながら出ていった。カミラの侵入したエリアは、十分な保温がなされており、それゆえカミラの体臭が空気中に漏れ出ていたのだった。


 しばらくすると、煬帝国の本国人が総督席に座り込んだ。

「皇帝陛下も人が悪い。なにも、私がここに来る必要があったのかな」

 彼はそう言いつつ、地球の煬帝国杭州府の帝国軍本部へ連絡を取り始めた。

「こちら、新任総督の林聖煕りんせいきです」

「着任、おめでとう、私は袁元洪えんげんこうだ。これから君と私、そしてチャチャイ・チャイヤサーン、ラシュ・ボースが、順番にその総督を務めることになるね」

「まずは、私がこの一連の騒ぎを何とかしなければならないわけだ。もちろん、帝国戦士(クリスパーアーレスもつれてきている」

聖煕(せいき)。君はもうすでに何が起きているかを把握しているのかね」

「いや、そうではない。しかし、帝国に反抗する者たちをすべて根絶やしにするためには、この強制労働区が必要だ。そうであれば、私はとにかく働くよ。破壊工作であれば、犯人を突き止めるだけ。単なる事故なら、帝国戦士によって迅速に回復を図る。命知らずの彼等なら、すぐに処置は終わるさ」

「じゃあ、そのように皇帝陛下にお伝えしておくよ」

 カミラの記憶では、現在の煬帝国皇帝は、後宣明帝だった。彼らは、アカバの地にて旅団に追い詰められて帝国を崩壊させたはずだった。だが、その時に大魔アザゼルの罠により黙示録に預言された証人2人が失われると、長白山地下から再び出現した皇帝たちは、ふたたび杭州府を起点に煬帝国を急速に回復させていたのだった。そして、その煬帝国から派遣された林聖煕という男が、帝国の要だというこの強制労働区の責任者、すなわち月開発公司の責任者として現れたのだった。


 ようやく、聖煕は仕事を終え、自分の高級宿舎に戻る時間となった。彼は着任早々の歓迎宴を辞して、高級宿舎の建物を見渡した。

 月面上のドームは外から見ると、日光を全反射するために輝く白色に見える。聖煕は宇宙空港から宿舎ドームに至るまで高速搬送路上を進む間、その白い輝きを一瞥しつつどんなところなのだろうかと想像していた。そして突然彼は後ろから襲われた。

「静かにして。そして応えてもらおうかしら」

「誰かね?」

 聖煕は静かに声の主が誰かを考え始めた。記憶にない声。だが、長い間嗅いだことの無い盲突猪パイアの体臭に似た臭い。おそらく労働者階級の女で、この数日間風呂にも入っていないのだろう。とすれば、彼一人が余裕で処理できる相手に違いなかった。

「あんたは質問する立場じゃないんだよ。こちらが質問する側だ」

「ほう、何を知りたいんだね」

「最下層の落盤事故だ。お前が責任者なんだろ。責任を取れ」

 聖煕にとっても、後ろの女がどうやら落盤事故に巻き込まれた被害者の家族だということが分かった。そして、落盤事故が強制労働者たちの破壊工作でもないらしいことが、うかがわれた。だが、責任を取れと言われても.......と、彼は戸惑っていた。

「だが、どのようにして責任を取れというのかね?」

「目には目を、命には命を、だ」

 あんたはアラビアの人間だな?」

「そんなことをあんたが知る必要が無い。ここであんたは死ぬんだ」

 カミラのその声とともに、カミラの手に光った刃が聖煕を襲った。だが、一瞬早くその刃はカミラの手から飛び出し、聖煕の手に納まっていた。

「ナ、何をした」

「まあ、霊剣操、と言ってな。ちょっとした手品だよ」

「くそ」

 聖煕はカミラを床の上に抑え込んでいた。

「あんたはもう逃げられないよ」

 聖煕はカミラの顔をよく見ようと手を伸ばした。その時、聖煕の後ろにいつの間にか老掃除夫が立っており、聖煕が気が付いたときには彼は押さえつけられていた。

「だ、誰だ。私をそのように打ち負かせるとは」

「あんたがそれを知る必要はないね」

 老掃除夫はそう言うと、聖煕に神経的な衝撃を与えて昏倒させた。それと同時にカミラの手を取って宇宙空港へと駆け足で戻り始めた。

「奥さん、無謀すぎますよ」

「あんたは誰なんだ?」

「ご婦人、それはあとにしよう。ただ、今は子供たちとともにここを脱出する必要がある」

 彼はそう言うとカミラを先導し、二人の子供たちの待つ出発前ドームへといそいだ。

_______________________________


 聖煕は、正気を取り戻し、警報を発した。

「月基地に旅団工作員が潜入している。すべての地域に厳戒態勢を敷け」

 すると、帝国戦士たちが大挙してビジネス区、居住区、生産工区などのすべてに雪崩のように入り込み、秩序を把握し始めていた。

 使われていない出発ドームは、しばらく使われていないということで、帝国戦士はなかなか入り込んでこなかった。その時間をチャンスとして、カミラと二人の子供たちはしばらく使われていなかった救命艇に乗り込むようにゲートを進んでいった。そして、間もなく救命艇は月面にそって飛び立っていった。行き先はおそらくこのまま、秘密の......。だが、救命艇は宇宙基地から離れたところで、宇宙空港から自動防御システムからの砲撃を受け、宇宙空間に四散した。

 林康煕はこの光景を確認して、安どの深呼吸をした。

「初日にこんなことがあるとは。やれやれ。だが、これで大深度地下の問題を早く解決すべきであることはわかった。また、地下の落盤も単なる事故だということも分かったし......」


「子供たちの入っているこの気密コンテナには、一応酸素ボンベも入れておいた。でも、あと4時間ほどしか持たない」

 騒ぎが収まった深夜、老人とカミラはそれまで隠れていた出発ゲートの外の今では使われていない荷物搬送口から外へ出てきた。老人とカミラは宇宙気密服を着ていたが、子供たちは念のため手元の気密包装コンテナに収容していた。

「さあ、そろそろ動こう。広場の向こうに独立棟があるだろ? あそこまで歩いていくんだ。広場に面ているから、距離感があてにならないから、思ったより時間がかかるぞ。まあ、あの設備に入ってしまえば、もう新しい人生が始まるよ」

 曇りのない真空の空に輝く星々が、冷たく鋭い光を発していた。そして、目の前には昔発着に使っていた広大なエリア。タイガーの言っていた物流エリアはその広大なエリアの端部にあった。そこは、ほかのドームとは接続していない古い設備で、宇宙服を着てない限り到達できない建物だった。見た目には近くに感じられたが、彼らにとっては思ったより到達まで時間がかかった。

 ようやく目の前に施設の入り口が見えてきた。それを確認したタイガーはまた説明を加えた。

「先ほどの救命艇撃墜であんたたちはここで死んだ。そういうことになる。だからこれからは新しい人生を考えよう。そうそう、自己紹介が遅れたね。私は、タイガー・ケイナンという重商の一人だ。あんたたちが気になって、助けたんだ」

 彼はそう言って改めて自己紹介をした。それを聞いたカミラは、彼らを助けた彼と、カミラたちとの関係がまだ見えず、不安感に囚われた。それでもタイガーの物流施設に入ってからは安心したようで、おもむろに三人の紹介をしようとした。

「私はメディナ生まれです。台湾で夫のフー・サニとともに煬帝国当局に逮捕されて、強制労働人員として月に放り込まれ・・・・・」

「いや、自己紹介はいいよ。あるところからあんたたちの情報は知らされている.....あんたはカミラ・サニ。そして、男の子はあんたの長男だろ? 名前はアドナーン。そして、女の子はクラウディア・ディ・ジャクランだね」

「どうして、そんなことを......」

 カミラの驚きの声をタイガーは楽しむように、話をつづけた。

「さて、あんたたち、まだ問題がある。この宇宙空港、いやこの軍事基地ともいえるこの領域をすり抜けてどうやって元の居住区に戻るか......、策はあるのか?」

「いいえ。もう服も捨ててきてしまいましたし......」

 カミラは戸惑いながら、そう返事をした。彼らは宇宙服を着こむ際に、それまで来ていた労働者用の服から下着まですべてをダクトに脱ぎ捨てていた。カミラはタイガーの物流施設まで逃げおおせたことで安心しきっていた。

「その宇宙服では、これからやることに支障があるなあ」

 タイガーはカミラを見ないようにしながら話をつづけた。

「とにかく、君たちはこのまましばらく私の下で正体を隠して暮らすのがいいね。私の拠点へ行くことにしよう。ここだ」

 タイガーは、宇宙空港とそれに付属する広大なエリアの地図を示しながら説明をした。

「君たちのいるこの場所は、私の商いに用いている物流エリアだ。だが、ここから私の拠点へ脱出するのは至難の業だな。子連れでの脱出、つまりまとまっての脱出は難しいぞ。そこへ行けば着替えもある」

 タイガーはそう言うと、何かを考えながら金庫の中を探し始めた。おもむろに小さな結晶を収めた容器を取り出すと、三人に振り向いて話を始めた。

「一人づつ、時間をおいて移動しなければならない。それから、互いに助け合い情報を交換し合いながら動かなければ安全確保が難しいんだ。そこで、このアバチャイトガーネットのナノ宝珠を身に着けてほしい」

「アヴァチャイトガーネット?」

「知らないだろうな。私も名前だけ知らされている未知の物質だ。なんでも、互いに量子的に絡み合っている結晶体(Entanglement Crystal)を用いて、ペア同士のあいだで一方が他方の動きや周囲の状況を感覚的に把握することができる結晶体らしい。精神神経的こんがらがり素子(Spilitual Entanglement Crystal)とか言ったかな。そんな仕組みらしい」

 説明しているタイガーもよくわかっていないことを、聞き手である三人が理解できるはずもなかった。さすがにカミラはタイガーに問いを返した。

「そんな高度な技術があるなんて。誰がそんな技術を有しているんですか」

「いや、今は誰も実現していない技術なんだ。だが、私に特別な人が、と言っておこう、その人がこの2ペアをくれたんだ。ペアとなっている二つの結晶体を、気の合っている者同士で身に着けて活用することが必要らしい。そこで、ひとつのペアを子供たちで、もう一つのペアを私とカミラで、と考えているんだが......」

 三人が何とか納得した顔をしたので、タイガーは話をつづけた。

「それで......手術をしたいんだが」

「手術?」

「子供たちは、互いに年齢の近い者同士でペアを組む。そして、あんたは私とペアを組むことになるんだが......その......宇宙服を脱ぐことはできるか?」

 三人はそれを聞くと途端に躊躇した。先ほどタイガーが「支障がある」と言ったのはこのことだった。タイガーは彼ら三人の反応に応じつつ、さらに説明を加えた。

「この小さなガーネットを、鼻の奥つまり脳の近くに設置するだけだ。ただ、あんたたちが上半身にかぶっている宇宙服は脱がないと、手術ができないんだが......」

 

 クラウディアとアドナーンは、早く脱出したいと考えて、素直に宇宙服をさっさと脱いでしまった。子供たち二人は、互いの裸が相手とは異なった形であることに驚いて少しばかり凍り付いていた。彼乱反応を微笑みながら、タイガーは幼児二人に羽織るようにシーツを渡し、並行して仰向けになるように促した。

「痛くないから、決して動かないで」

 タイガーは金庫から小型の手術(オペ)道具を取り出して彼らの小さな鼻に取り付けると、慎重にガーネットを彼らの鼻の奥へと装着させた。装着が終わった途端、クラウディアとアドナーンは、二人の間で意識の共有のような感覚を覚えた。

「さあ、二人とも立ち上がって......。さて、二人にお願いがある。この装着型のオペ装置を使って、僕の鼻奥とアドナーンのお母さんの鼻奥に、このガーネットを取り付けてほしいんだ。単にこのオペ装置を装着すれば、後は機械がすべてやってくれる。手術を受ける僕は、操作できないから、これを頼んでいるんだけれど......」

「いいよ」

 アドナーンは快諾した。装置の概要を見て取った彼は、操作の仕方も予想できていた。だが、クラウディアは、不安そうな顔をしながらアドナーンを後ろから見つめていた。


「さて、カミラ。あんたと僕との間でも、この小さなガーネットを装着しなければいけない。つまり、あんたの宇宙服も上半身を取ってほしいんだが」

「私、宇宙服の下には何も身に着けていないのよ!」

「え? 困ったな。だが、脱出の際の相互支援のためには、このガーネットを着けなければ到底脱出は成功しないよ」。

 タイガーとカミラは難しい顔をしながら、相談を続けていた。


「わ、わかったわよ」

 カミラはためらい、顔を赤くした。彼女は意を決したようにして勢いよく宇宙服の上半身を外した。不幸なことに、上半身から体を抜こうとする間に、先に下半身の宇宙服が脱落してカミラの下半身が露出してしまった。

 カミラは慌てたが、既に脱ぎ始めた上半身側からうまく体を外すことができず、あられもない姿のまま悶えしゃがんでしまった。もちろん、タイガーは彼女を見ないようにして宇宙服の下半分を持ちながら、彼女が断てるように支えようとした。運の悪いことに、彼女が立ち上がろうとした際、彼女の胸の部分に彼の顔がちょうど向かい合うことになった。当然に彼は目をつぶって手探りで、彼女を助けようとした。それがよくなかった。彼の手は誤って立ち上がろうとした彼女の様々な部分に触れることになり、彼女は肩から上を宇宙服の上半身部分が覆ったまま立ち上がり、悲鳴を上げて悶えていた。その姿は子供たちにとって、大人の二人が遊んでいるように見えた。

「ママとオジサン、僕たちも一緒に遊んでもいいの?」

「え? 何を言っているんだ? 今、僕は遊んでいないんだぜ。ここへ来ちゃだめだ」

「ママは遊んでいないわよ。アド、ディアと一緒に向こうへ行っててちょうだい」

 大騒ぎはやっと終わった。冷や汗をかいた二人は、子供たちに改めて小型オペ装置の装着をお願いするのだった。

「さあ、やっとあんたたちに手術をお願いできるね」

 大人の二人は仰向けになり、アドナーンが小型オペ装置を様々に観察しながら装着し終えた。手術自体は簡単に終了した。


「さて、まずは出発スペースに戻ろう。そこからは一人づつで行動するよ」

 出発ドームに戻ると、タイガーたちは一人一人ばらばらに移動し始めた。アドナーンとクラウディアは、あらかじめ細かく与えられた指示を踏まえつつ、アバチャイトガーネットを活用して相互に意識を共有しつつ、互いに互いの死角を補いつつ、周囲を注意深く観察しつつ、エアダクトや倉庫などを経てタイガーの言う居住区へと進んでいった。

 それを確認したタイガーは、子供たちが通った通路とは別のルートを見出し、カミラを連れて自分の家に帰り着いた。


「ここは強制労働者たちの居住区と隔たっている。まあ、強制労働者たちの居住区とはつながっているし、保育園も学校も同じだけどね。ここがとりあえずの君たちの仮の住まいとして隠れ家になるところだ。新しい身分は私の姪と孫たち、つまり親族だということになっている。」

 彼らはこうして新しい身分を手に入れて、暮らし始めた。

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