表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

疲労

作者: 水瀬 忍

その日は出張で、帰り道に高速道路を使っていた。仕事を終え、疲れていた私は早く帰りたくてかなりのスピードを出して走っていた。何キロで走っていたかは、まぁ言わないでおく。あえて言うなら警察に見つかったら切符を切られるくらいの速度だ。しばらく走っているとトンネルに入り、ラジオの電波が悪くなったため、ガサガサとノイズが入った。私はその音が不快でラジオを切った。トンネルを抜けると、ノイズの入っていないラジオの音が聞こえ始め、しばらく聞いていると、自分の好きな曲が流れ始めたので私はラジオの音量を上げた。気分が良くなり、鼻歌を歌いながら運転をしているとまたトンネルに差し掛かった。すると、予想通りというべきか大音量のノイズが入り、歌がほとんど聞こえなくなった。私はノイズの音量に耐え切れず音量調節しようとしたがボタンが反応しなかった。ついに壊れてしまったかと私は車を修理に出すことをひそかに決意した。


私は鳴りやまないラジオのノイズに耐えながらイライラした気持ちを抑え、トンネルの中を走っていた。永遠に続くように感じるトンネルをしばらく走っているとなぜかわからないがノイズ音が少しずつ小さくなっていった。私は再び聞こえ始めたラジオを何となく聞きながら車を走らせ続けた。


トンネルの中で車をしばらく走らせているとふと先ほどと司会者が変わっていることに気が付いた。先ほどの司会者と違い、今、ラジオの司会者をやっている人はかなり声がくぐもっていて何を言っているのか聞きとることができなかった。私は”よくこの人雇ってもらえたなぁ”などと思いながらあくびをした。”眠いですか”と聞かれたので私は


「そうですね~、眠いです。ここ最近まともに寝れていなかったので。家に帰ったら思いっきり寝てやりますよ。」


と答え、むかつく課長の顔面を踏みつける想像をした。”そうですか”ラジオが返事をしてきたので思わずぎょっとしてしまったが、たまたまだと思うことにした。そもそもラジオの質問に答える私がどうかしているので本当に疲れているんだなと実感してしまった。


しばらく質問コーナーのような企画が続き、気が付く20分ほどトンネルの中で車を走らせていた。私は、さすがにまだトンネルから出ることができないのはおかしいと思い、車についているナビを確認したが現在地が表示されず、今どこにいるか知ることは不可能だった。焦りが出てきて、危ないのは承知でスマホを開き、今どこにいるかを調べようとしたが圏外で、スマホを使っても現在地を知ることはできなかった。私はどうすればいいか戸惑いながらもギリギリ平常心を保って運転を続けた。ふと隣を見るとほかの車が追い越し車線を使い私の車を追い越そうとしていた。思いっきり法定速度を超えて爆走している私の車を追い抜いて走っていこうとする車を見て、私はどんな人がその車を運転しているのか気になり、さりげなく運転席を見てみるとそこには誰も乗っていなかった。車のハンドルだけが動いていたのだ。私は考えるのを半分あきらめ、


「これが噂の自動運転かぁ」


とつぶやいた。バックミラーで後ろを確認すると後ろの車の運転席にも運転手はおらず、ここ一帯が無人状態であることに気が付いた。私は途端に怖くなり、震える手でハンドルを握り冷や汗をかきながら運転し続けた。ラジオの司会者の”おやすみなさい”という声が聞こえた気がした。


気が付くと私は自宅の駐車場の車の中の助手席で眠っていた。何が何だかよくわからないが無事に帰ってくることはできたようだった。私は朝日を眺めながら精神科に行くことを決めた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] トンネル内の走行中にラジオがオカルト世界と繋がる話は山のようにあって飽きてしまいましたが、トンネルから出たときにオカルト世界に繋がるという発想はちょっと無く、それが気になって読み進めたら自…
[良い点] 実話怪談風の展開が妙にリアルです。 もしかすると本当にあるかも、と思わせてくれますね。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ