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【7巻12/15発売】転生陰陽師・賀茂一樹  作者: 赤野用介@転生陰陽師7巻12/15発売
第2巻 山の女神

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50話 海の見える同好会室

「R棟は大学所有の建物だが、高校も色々と使わせて貰っている」


 校長室を出た後、『お前ら自重しろよ』との有り難いご指導を賜った一樹達は、活動場所である大学側のR棟に案内された。

 花咲大学は、学園敷地内に50もの建物を持っている。

 高校の校舎や体育館、教員棟などが1個に数えられるので、相応に大きくて資金も投じられている。

 それらの中で、アルファベットの名前が付けられた建物は19個ある。R棟は、高校の校舎と連絡通路で繋がった大学の建物だ。

 高校の校舎は4階建て、R棟は7階建て。

 R棟の方が新しくて、立派な造りになっている。


「R棟は、俺が高校生の頃は建設中だった。1階はレストラン街、カフェ、売店、休憩スペース。2階が大講義室と管理室。3階から5階は、講義室や教室。6階と7階が会議室などだ。お前らが、羨ましいぞ」


 顧問を兼ねる事になった担任は、隣接するR棟を絶賛した。


「どうして高校の校舎よりも、大学に沢山ある建物の1つであるR棟の方が、立派なんですか」


 使用頻度や外部への広報を考えれば、高校の校舎が立派である方が良いのでは無いか。

 高校生側の立場で考えた一樹に対して、担任は端的に告げた。


「築年数が、新しいからだ」


 大いに納得した一樹は、古い校舎の2階からガラス張りの渡り廊下を抜け、新しいR棟に向かった。

 渡り廊下の片側は、高校のグラウンドが見えており、その先には海が広がる。

 反対側は敷地内の並木道で、左右には大学の建物が並んでいた。


「高校の校舎にも、学生食堂がありませんでしたっけ?」


 柚葉が尋ねると、担任は苦笑しながら説明した。


「うちの学食は高校の直営で、早くて安いが、メニューも少ない。日替わり定食は2種類で、Aが肉、Bが魚。その他には、カレー、丼物、おにぎり、焼き飯しか無い。一番高くて380円のお手頃価格だが、必要最低限だ」


 大学のレストラン街やお洒落なカフェと比べると、落差が甚だしかった。

 生徒数が少なく、懐具合も察せられ、売り上げが期待できない高校の学食は、簡単に作れてコスパも良いメニューにならざるを得ないのだろう。


「大学の方は、立派なんですか」

「勿論だ。メニューが豊富な学生食堂、洋食屋、パスタ専門店、大手カレー専門店、コーヒーチェーン店、クレープ屋もある」


 渡り廊下からR棟に入ると、2階の吹き抜けから1階のレストラン街や休憩スペースが視界に入ってきた。

 大学生らしき私服の人達の姿が多数見られる中に、花咲高校の学生服を着た生徒が何人も混ざっている。

 上からざっと眺めただけで複数居るのだから、それなりに来ているのだと思われた。


「高校の生徒も、大学の建物を使っても良いんですね」


 1階を見下ろした香苗が尋ねると、担任は鷹揚に頷いた。


「うちの高校は、昼休みが12時30分から13時35分までの1時間5分だ。R棟に行って、注文して、食べて戻ってくる時間も考えて、昼休みを延長している。本当に、良い環境になったな」


 羨む担任の言い分に、一樹は納得した。

 尤も、教師として戻って来た担任であれば、その恩恵を享受できる。

 どちらかと言えば、高校で3年間、大学まで通っても7年間しか使えない一樹達よりも、定年まで長らく使える担任の方が、便利かも知れない。30年も経てば、流石に相当古いだろうが。


「昼食に大学生も来たら、場所が足りなくなりませんか」


 一樹も思い付いた疑問を担任に尋ねた。

 高校は1学年300人で、3学年で合計900人。それに対して大学は、4年制で全学部を合わせて、合計7000人。

 注文の殺到や、席の取り合いになると、昼休みが足りなくなるかもしれないと思ったのだ。


「大学生は、他にも4ヵ所ほど食べる場所がある。それにうちの生徒も、大多数が高校の学食に行く。大学のレストランは、高校より高いからな」


 高校生の昼食代と小遣いでは、毎食大学側は厳しいらしい。

 小遣いの用途は多々あって、昼食だけに費やす訳にも行かないのだ。

 昼食の知識に限り、先輩並に詳しくなった面々を引き連れた担任は、そのまま2階にある管理室に立ち寄った。

 そちらには大学の職員が居て、一樹達のIDカードを発行してくれた。

 その場で6人の顔写真を次々と撮られ、パソコンで一斉に写真の取り込みが行われ、発行機で手際よくIDカードが作られていく。


「許可の範囲は、R棟と高校との連絡通路、R棟時間外出入り口、7階多目的会議室Dです。扉にあるバーコードの読み取り機に、カードのバーコードを翳して、読み取らせます」


 カードを作りながら説明する職員は、非常に手際が良かった。

 あっと言う間にIDカードを渡された一樹は、両面をしげしげと眺めた。

 IDカードの表には、番号、顔写真、氏名、所属、バーコードが入っている。そして裏には、おそらく誰も読んでいなさそうな注意事項が、細かい文字で沢山印字されていた。

 カードを渡した職員は、印字されていないであろう注意事項を告げた。


「通行者と通行時間は、記録されます。扉を閉めると自動ロックされます。部外者を入館させる際は、管理室に寄り、名前と所属を記載して下さい」


 なお大学生の場合、学内ではクレジットカードと連動した学生証になる。教員の場合は、給与から天引きされる身分証明証となるそうだ。

 高校生の場合は買い物に使えず、通行用の鍵であるに過ぎない。

 カードを無くした場合は、管理室に届け出れば、落としたIDを無効化した上で再発行してもらえる。

 一通りの説明を聞き終えた一樹は、財布のカード入れにIDを仕舞い込んで、担任らと共に管理室を後にした。


 陰陽同好会に与えられる多目的会議室は、R棟の最上階となる7階だ。

 7階には、D室以外にも多目的会議室がA室からC室まであって、他にも扉の上のプレートに倉庫と書かれた部屋が複数あり、非常扉があって、その先には広いベランダが広がっていた。

 7階は半分くらいベランダであるが、火災が発生した時、屋上から逃げるためだろうか。

 一樹が幽霊巡視船の大きさについて調べた時、オフィスビルは1階が4メートルだった。

 6階の屋上にあたる高さであれば、24メートル。

 消防のはしご車は30メートルに届くので、とりあえず助けて貰えるらしいと思いながら、一樹はD室に入った。


「窓から海が見えるな」


 小太郎が満足そうに評した窓からは、高校のグラウンド、その先にある浜辺、そして大海原が一望できた。

 D室内には、3人掛けの白い長机2つが縦に並べられ、その両端に2人掛けの白い机が置かれて、机に合わせて椅子10脚が置かれていた。

 その他にはホワイトボードが1台あって、壁には時計が掛けられている。天井からはスクリーンを引き出せて、コンセントやLAN回線もあったが、パソコンは置かれていなかった。

 同じ広さの保管室には、プロジェクターがポツンと置いてあったが、差し当って使う予定は無い。


「保管室には呪具を置いて、霊符の作成室にするか。後は、調べ物とか作業のためにも、6人分のオフィス机とパソコンが欲しいな。後は鍵付きの戸棚。保管室にはロッカーも。小太郎、理事長への連絡は頼んだ」


 理事長と同名で呼び難いと感じた一樹は、小太郎を下の名前で呼び捨てつつ、様々な物品を要求した。


「伝えておく」


 あっさりと応じる小太郎に対して、一樹は謙虚に安い物で良いと補足するか、大富豪の花咲家なので遠慮せずに集るかを悩んだ。

 そして結局、開き掛けた口を閉ざしたのであった。

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― 新着の感想 ―
[一言] いつも楽しく読ませていただいています! スライムの京くん、可愛いくせにえげつないところが大好きなので、是非とも今作でもお目にかかりたいところです…… 御検討よろしくお願いします!
[一言] R棟。良い環境だ。贅沢過ぎて社会人になってからあの時は良かったみたいな感じになりそうな。 「こんな話・短編を読みたい」 海外の状況か分かる感じの話が読みたいですね。
[一言] 学生証や教職員身分証明書は、写真や電子マネー、指紋認証機能付きのICカードで統一すればいいと思います。 各種登録や入退室、支払いにカードの指紋認証を連動させれば、どっかのクモ娘のように他人の…
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