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【8巻4/15発売】転生陰陽師・賀茂一樹  作者: 赤野用介@転生陰陽師8巻4/15発売
第5巻 昇神への道程

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140話 捜索の仕切り直し

 五鬼王の捜索は、平日になるため一度仕切り直しとなった。

 現在は、10月半ば。

 そして一樹達は、真面目に通学する高校1年生である。

 きちんと学校に行って、授業を受けて、放課後の同好会にまで顔を出した。

 顔を見せていないのは、小太郎だけだ。


「小太郎は、花咲グループの引き継ぎで、忙しそうだな」

「そうだと思います」


 一樹の呟きに、沙羅が賛同した。

 犬神憑きの家である花咲家は、犬神が憑いた者が当主になると決まっている。

 なぜなら犬神が居ない家は、単なる富豪でしかないからだ。どれだけ財産を分け与えられても、それだけであれば他家と変わりない。

 人間側が屁理屈を並べ立てようとも、犬神が選ばず、意に沿わない者と子孫に憑かなければ、その一族は犬神憑きではない。

 犬神が憑いてこそ、犬神憑きの花咲家なのである。


 そのため16歳の小太郎は、花咲家の当主となった。

 同時に、売上高1兆円を超える花咲グループの会長にも就任した。

 引き継ぎは、まだ存命である先々代の当主が中心となって行っている。だが引退して十数年も経つ爺様は、急速に進化する現代のITに着いていけない。


「花咲の隙を突く企業は、流石に無いだろうが」


 花咲の当主はA級陰陽師で、常任理事会の1席を占める。

 その花咲と争えば、強い霊障に対して常任理事会から協力を得られず、無防備になる。

 大企業であれば、企業が抱える土地の霊障や、競合企業やトラブルとなった客からの呪いなど、霊障案件には枚挙に暇がない。

 普段から露骨なことは出来ないが、花咲側もそれを脅しに使うようなことはできない。

 それが現在では、さらに状況が変化した。


「そんなことをすれば、日本中が敵になりそうですね」

「まあな」


 一樹の呟きに、蒼依も反応した。

 先代の殉職という状況でハイエナ企業が現れた場合、小太郎には強烈な反撃手段がある。


『魔王戦で先代が殉職した隙を突かれて、実家の仕事を奪われているので、魔王戦に赴けません』


 そのように宣言して、実際に赴かなければ、どうなるだろうか。

 身内が攻撃を受ければ、常任理事会も自衛のために協力する。そして魔王戦に対応できるのは、真のA級である常任理事会の数人だけだ。

 常任理事会が魔王戦から手を引けば、脅威がなくなった魔王は煙鬼の侵攻を拡大させ、関東、東海、北陸に次々と進出していく。

 すると日本は、東西に分断されるだろう。

 国家と国民は、本州を捨てるか、一丸となってハイエナ企業を叩き潰すか、二択となる。


「花咲に喧嘩を売る大企業は、今は無いだろうな」


 花咲への攻撃が、何を引き起こすのか。

 それすら分からない大企業は、おそらく無いだろう。

 さしあたって外部に敵は居ないが、売上高1兆円のグループ企業に、16歳が会長として就任するだけでも多大な苦労を強いられる。

 そのため小太郎は、同好会を当面は欠席となった。


 ほかの同好会員は顔を出しているが、どこぞの子龍は、机にグッタリと伏していた。

 そちらに関しては、本人の自業自得なので、一樹は見えていない振りをした。

 他方、黙々と作業をしている香苗は、普段通りに見えた。


「香苗は、どんな調子だ」

「音楽系YouTuber、準備中、という感じです」

「準備中?」

「一応、今年の2位ですから、配信すると怒られそうですので」

「そうだな」


 香苗の説明に対して、同好会に誘った一樹は目を逸らした。

 妖狐のクォーターである香苗は、自らの存在を肯定されたくて、音楽活動で承認欲求を満たそうと考えていた。

 それに対して一樹は、YouTubeでの宣伝に協力するなどと言って、同好会に勧誘している。

 香苗は陰陽師国家試験で2位となり、エキシビションマッチで凪紗にも勝って、承認欲求という点では完璧に満たされている。

 だが音楽活動も、やるつもりであるらしい。


「準備って、配信画面を用意するとかか」

「いえ、それは終わっていますから、歌のレパートリーを増やしています。リクエストにも対応できるように、昔の人気曲と最近の流行曲は抑えておかないと」


 ここは陰陽同好会だが、すでに国家試験に3名合格という結果が出ている。

 柚葉には龍神が教えたところで、香苗には二尾の狐達が宿っているので、普段から何もやっていないわけでもない。ほかの部活と異なり、来年の大会に向けて……ということも無いので、各自の学ぶペースは自由にしている。


「リクエストにも対応するのか。本格的だな」

「もちろんです」

「まあ頑張ってくれ」


 香苗にエールを送った一樹は、自分の活動に戻った。

 インターネットで五鬼王を検索して、逸話を調べ直す。

 なにかしらヒントでもあればと思っての検索だったが、期待した結果は得られなかった。


 すべての鬼が正面から待ち構えていて、正々堂々と戦ってくれるわけではない。

 元寇では、名乗りを上げる鎌倉武士に対して、蒙古側は石火矢を撃ち込んだとも伝えられる。

 国立国会図書館には、橘守部旧蔵の『八幡ノ蒙古記』(1289年)が収蔵されており、それには『相互に名のりあひ、高名せすんは、一命かきり勝負とおもふ処に』などと記されているそうだ。

 その考えかたを未だに引き摺っているようでは、日本人は鎌倉時代から進歩していないことになる。

 妖怪との戦いは、結果が全てだ。

 どのような手段を用いようとも、結果として倒せば良い。

 逆に倒せなければ、どれほど立派な過程でも、失敗である。


「ライオンの狩りの成功率は、2割から3割だそうですよ」


 隣の席にいる蒼依が、ライオンを引き合いに慰めた。

 狩りの成功率が高いチーターでも、2回中1回は狩りに失敗する。

 だが一樹は、プラス思考では受け入れられなかった。


「そんな成功率の陰陽師事務所は、絶対に潰れるな」


 嘆息した一樹は、陰陽師協会の成功率に改めて感心した。


「協会は、受けた仕事の前提条件が違わない限り、大体は成功させるよな」

「妖怪よりも1ランク上の陰陽師を派遣させるからでしょうか」

「それもあるだろう」


 陰陽師協会は、口を酸っぱくして「1ランク下の敵と戦え」と言い続けている。

 1ランク下の相手であれば、よほど相性が悪くない限り負けない。

 相手に勝てるのならば、相手を追い払えて、仕事は成功だ。


「ほかには、依頼達成の条件もあるか」

「条件ですか?」

「今回は逃がさず、確実に滅ぼさないといけないからな」

「見つかりませんでしたよね」


 一樹には、時間制限もある。

 小太郎のA級陰陽師としての格付けが終われば、犬神を使った煙鬼の調伏になる。

 空から霊毒を撒く五鬼童と、陸から駆逐していく犬神とで、荒ラ獅子魔王の支配領域は大幅に縮小される。

 そうすれば次は、いよいよ御殿場市への突入だ。

 一樹が召集される日も、そう遠くはない。


「何か妖怪を探しているのですか」


 一樹達が同好会で話をしていたからか、事情を知らない香苗が尋ねてきた。


「ああ。妖怪を探しているんだけど、見つけられなくてな」

「そうなんですか」


 血筋的には人間の一樹が見つけられないことに対して、香苗は疑問を持たなかった。

 獲物を探す能力であれば、狩りをする動物のほうが高い。

 狐よりも聴覚や嗅覚に優れる人間など、居るわけがない。


「豊川稲荷にお願いするとか」


 香苗から真っ当な意見が出たが、一樹は首を横に振った。


「相手に見つかったら駄目という条件付きだ。遠くから、悟られないように感知する。あるいは遠くから視て、化けている相手の正体を見破るしかない」

「厄介な相手なんですね」

「そうだ。世の中には、色んな鬼が居るんだ」


 そのように纏めようとした一樹に対して、香苗が思い付きを口にした。


「沙羅の妹の凪紗が、見鬼を持っていますよね」

「うん?」

「エキシビションマッチ前、霊視とは異なる見鬼の力があると、言っていました。意識を少しずらすと、視えるとか。それでは駄目なんですか?」


 一樹の視線が沙羅に向き、沙羅の視線はスマホに向いた。

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― 新着の感想 ―
[一言] A級陰陽師の邪魔をする様なバカな企業は軒並み潰れたりしたんだろうな。 一樹が召集される日も、そう遠くはない。 そうなると蒼依もそうだが、万全を期すなら信君との正式契約もしときたいところでは…
[一言] >花咲の隙を突く企業は、流石に無いだろうが 国内にはいなくとも、ハゲタカ外資系ファンドが……。 自分達が儲かりゃ日本がどうなっても構わんって奴らだし。 陰陽師の報復が海外まで届くか、否か。
[良い点] 持つべきものは同世代のライバルですね
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