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10 学習する本

「学習する本って、なんか嫌ですね、それ」


 本を使って、人間が学習することはあっても、本自体が学習するなんてのは初耳だ。ここまでくると、ホラーというより、SFめいている。いつの日か、本が教壇に立って、授業をする日が来るかもしれない。想像するとなかなかシュールだ。


「また、笑ってるし。なんなの。先輩に対する敬意が足りないよ」


「すみません。死ぬほど尊敬しています。先輩を崇めるためにできることなら、なんでもやりますよ。さぁ、語り部界の女王様、どうぞ続きを」

「もう……あんまりバカにするなら、承知しないからね」


 先輩は拳にハァーっと息をかけている。

 どうやらいい加減にしないと、そろそろグーで殴られそうだ。


「ごめんなさい。すみません。もうしません」

「わかればよろしい。で、とうとうある日、その白い本に擬態された本を、読んでしまった学生が、こつぜんと姿を消すという不可思議な現象が、うちの学校でも発生したらしいよ」


「そんな恐ろしい話、在校生の俺ですら、聞いたことないんですけど」

「君はクラスメイトの噂話なんて、気にしたことないでしょ。そうじゃなきゃ、私みたいな孤独系女子を、口説くなんて馬鹿げたことはしないはずだし」


 先輩がグーパンチではなく、俺のおでこをデコピンする。触れたはずなのに、そこに痛さはなかった。


 やはりそうか。先輩は、もうここには。

 そもそもこの学校は移転して、すでに使われていないのに。


 先輩が隣に座った瞬間から、わかっていたのに、わかりたくなかった。





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