我が愛しのフランケンシュタイン
我が国の唯一の王子はいわゆる王子様って顔ではなく顔に大きな傷もあり、フランケンシュタインと呼ばれていた。
だから次期王妃になれるとしても、結婚したいって令嬢は居なかった。何度かお見合いをしたが、顔を見ると怖がって泣き出すか、顔を間近で見て失神するものまでいた。
私は目が悪く眼鏡が無いと相手の輪郭がわかるくらい。
今日は両親から眼鏡を取り上げられて連れて行かれた王宮の庭園に座らされていた。うっすら見えるテーブル上の紅茶もケーキも美味しい。美味しいものに罪はない。だから美味しく頂いている。
私は人から見たらかなりの美少女らしい。眼鏡を外せば……。
はっきりいって同じ人間同士だったら顔の作りなんてどうでも良いと思うのは私だけなのかしら?
「美味しそうに食べられてますね」
美味しくて黙々と食べていると、フランシス王子が声を掛けてきた。
顔は良く見えないけど、嬉しそうな声に聞こえた。
「どれもとても美味しいです!」
笑顔で返した。
フランシス王子は私の笑顔に驚いていたようだった。
「あっ!失礼致しました。
パトリツィア・レッジャーニです。レッジャーニ伯爵の長女でございます」
失礼な物言いだったのかと焦り立ち上がって挨拶をし直した。
「座って下さい。お茶の続きをしましょう」
「は、はい!」
「パトリツィア嬢は何をして過ごすのがお好きですか?」
「私ですか?私は本を読むのが好きです。本は私をその世界に誘ってくれるんです!」
本の話をするパトリツィアはキラキラしていた。
「では今度王宮図書館にいらっしゃいませんか?」
「え!良いんですか!?是非!!!」
「後日招待状をお送りしますね」
「はい!!!」
♢♢♢♢♢♢
次の日フランシス王子から招待状が届いた。2日後に迎えを寄越すと。
王宮図書館には秘蔵書が沢山あるはず!
楽しみでしかないわ。
「お父様!今回は眼鏡は持っていきますからね!眼鏡が無いと本を読むことが出来ません。眼鏡を取り上げたら私は行きませんから」
「う、うむ。仕方ない。だかなるべくフランシス様の前では外すのだぞ、良いな」
お父様は渋々私の眼鏡を返してくれた。
やっと大事な眼鏡が戻ってきた!本が読めるわ!
嬉しくて迎えが来るまで本を読み漁ってしまった。
♢♢♢♢♢♢♢
王宮からお迎えが来たと言われ出ると、フランシス王子自身がお迎えに来てくださっていてお父様も皆も驚いていた。
一緒に乗る馬車では緊張してしまったけど、王宮に着きすぐ図書館に案内されて私は我を忘れて本棚に近づき、読みたい本を探し、手に取り、テーブルに積み読み漁った。
殿下の存在を忘れて……。
「も、申し訳ありませんでした!」
気がつくと王宮図書館に来て4時間が経っていた。お昼を食べるのも忘れ、とうとう殿下付きの侍女がティータイム休憩をと声を掛けて来て我に返ったのだった。
「誘ったのは私だから気にしなくて良いよ。没頭するほど気にいる書物があって良かった。
せっかくだから休憩にしよう。今日も母が頑張ってケーキを焼いてくれたんだ」
「……!? 前回のあの素晴らしいケーキは王妃様が作られてたんですか?」
「母はお菓子作りが趣味で幼い頃から作ってくれるんだ」
「素敵ですね。とても美味しかったとお伝え下さいね」
パトリツィアはフランシスに微笑んだ。
「今日は眼鏡をかけているから僕の顔は見えているよね?」
「はい。よく見えますわ」
「怖く無いの?」
「なにがですか?」
フランシスの言葉の意味が分からず首を傾げながら返事をした。
「僕の顔は他国の王族のように綺麗じゃない上、大きな傷があるから、僕の顔を見た令嬢達は怖がって震えたり、失神する者もいたんだ。パトリツィア嬢は怖く無いのかい?」
「怖く無いですわ。だって傷があるだけじゃ無いですか。目も鼻も口も私と同じですもの。殿下は気になりますか?」
「僕の事をフランケンシュタインと揶揄する者も多いしね。言われるとやはり辛いよね」
「フランケンシュタインだなんて。
素敵ですね、だってフランケンシュタインは、とても優しい人だったそうですよ。殿下は優しい人だと思われているのですわ」
「……!?」
「……!?殿下?私が嫌な事言ってしまいましたか??」
フランシスの瞳から涙が溢れていた。
自分の言った事で殿下を泣かせたと思いパトリツィアは狼狽えた。
声無く泣くフランシスを自然と抱きしめ背中をさすっていた。
どのくらい時間が経ったのだろうか……殿下が口を開いた。
「パトリツィア嬢、お願いだ。僕を嫌わないで下さい。出来ればこれからも僕の側に居てください。
僕は貴方が好きです」
「わ、私は……」
「やはり僕なんかは嫌ですよね……。すみません。無理を言いました……」
「ち、違うんです。私はまだ異性を好きになった事がないので、好きと言う気持ちが分からないんです……。
でも殿下と過ごす時間は好ましく思っています。だから暫くは友達としてお側に居てはいけませんか?」
「ありがとう!お願いします!」
「……!?」
フランシスはパトリツィアの返事が嬉しくてパトリツィアを抱きしめてしまっていた。
パトリツィアはフランシスからのはじめての行動に驚きはしても、嫌だと思っていない自分に驚いていた。
♢♢♢♢♢♢♢
一年後フランシスの隣にはパトリツィアが並んで立っていた。
美女野獣などと揶揄された時もあったが、幸せそうな二人を見た人は皆、素敵なカップルだと祝福していた。
二人は生涯仲良く暮らしました。
この作品を読んでくださってありがとうございます!
評価頂けたら幸せになり、創作意欲もパワーアップしますので、是非お願い致します!