Ⅲ
パラパラと光の粒になっていくザックに続いて、私も意識を集中させる。
(この2日間、ザックに教えてもらった風の魔法、意識を集中させて…。)
空気中に自分の身体を分解して溶かすようにイメージ。
最初は難しかったけど、今では少しそのイメージが掴めるようになってきた。
身体がふわふわした感覚になって、足元からさらさらと崩れるような感覚になる。
そしてその感覚に身を委ねる。
さらさらになった私の体は、下から押し上げる力に導かれてふわふわと宙を浮いた。
(よし、)
光の粒が窓の隙間を抜けたのを見て、私も続く。
ああ、私。
この塔から、出るんだ。
(………っ。)
ひやっとした空気を直で感じてぶるっと身震いした。匂いも風も、普段とはどこか違うような気がして心臓がばくばくって凄く煩い。
月の光を浴びて、眼下に広がるのはいつもみてるはずだけどいつもとは違う距離感の生い茂る緑の数々。
出た。
これが外。初めて出た外。
(凄い。すごいすごい、すごい!)
あのキラキラ光ってるのがザックが普段いるお城なのかな。
すごい。
夜なのにあの一角だけ光ってて、周りの建物とは高さが違う。
あの奥にてんてんと光ってる灯りはなんだろう。
扉とか窓の大きさは全部一緒じゃないんだ。
なんだか嗅いだことのないいい匂いがする。
あっちから楽しそうな声が聞こえる。凄い。全部が新しいことでいっぱいだーー。
あの音はなんの音?
なんでここだけ木が生えてるの?
これはなに?
目に入るもの全てが不思議でいっぱいで、こんなに幸せな気持ちは久しぶりで、私は見たものを忘れないようにしっかりと目に焼き付ける。
(ここ?)
少しして、前をいくザックが、お城の上の方、灯りの消えた小窓に寄っていく。
それを見て私も、慌ててスピードを落とした。
そして、日は昇る。
「国王陛下とお妃様は定例会議に向けて既にご出発されております。アイザック様、お忘れ物はございませんか。」
「ああ、大丈夫だ。転送してくれ。」
「かしこまりました。いってらっしゃいませ。」
「「いってらっしゃいませ。」」
使用人達に見送られながら、アイザックと、アイザックの荷物の中に入ったアイリスは、炎の国に向けて飛び立った。




