Ⅰ
「……アイリス。」
「なぁに、ザック。」
まだ当たりが明るくなる前。
アイリスの部屋に最終確認にきた俺はいろんな荷物を抱えてあたふたするアイリスを説得して、必要最低限に抑えるように念押した。
「そんなにたくさんもっていけないんだよ、アイリス。」
「何か必要になったら大変だと思うと、何回やっても持ち物が減らなくて…分かった、置いてく。」
本が数冊、それにお菓子にタオル、魔法薬セット。
それに、ヘアアクセサリー、替えの洋服。
疑問点はたくさんあるけど、ひとまずそれは置いておこう。
「アイリスは転送魔法を使って炎の国に入る前に俺の荷物に隠れられるように、俺が準備する朝のうちから、風に姿を変えて常に側にいて。分身の準備はできた?」
「うん。髪を少しだけ切って、それを元に作った。」
ベットに腰掛けてゆっくりと瞬きをする、寸分狂いもない同じ姿のアイリス。
「ザック、アイリス、いってらっしゃい。」
よし。
大丈夫そうだな。
「アイリスは炎の国でも風の姿のままで。無いと思いたいけど、もし魔力切れが起こったときのために、炎の国の魔法使いに見えるように赤い髪と赤い瞳に変えよう。」
「……………、うん。」
本当は俺の魔法で変えてあげたいけど、術者と離れすぎて魔法がきれてしまったら元も子もない。
常に一緒に入れる状況かどうかは行ってみないとわからないから、ここはアイリスに頑張ってもらうしかない。
人よりも膨大な魔力を持つとはいえ、レベルの高い分身を動かし、赤い髪と瞳をキープし続け、風の姿のまま隠密を図る。
簡単なことじゃない。
他の魔法使いなら3分ともたないだろう。
「もし魔力が尽きそうになった時は、さっき渡した魔力種を食べて。」
「………うん。」
(ここまでしないと外に出してあげられない。今日は失敗するわけにはいかない。)
目の前にいるアイリスは、目をつぶって深呼吸をした。




