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4月10日:盟友(とも)よ!

 放課後、校門近くの茂みの前でしゃがみこんでいる女生徒が居た。

 「ほら……おいで……」

 茂みに向かって手を伸ばし、何やら呼びかけている。

 まあ、犬か猫でも来てるんだろう。

 そう思い、さほど気にも留めずにいると、

 ザザザッ!

 「あっ…!」

 茂みの中から飛び出てきた“茶色くて丸っこい物”が、俺目掛けて突進してきた。

 それに対して俺は、絶妙なタイミングでソイツの下に足を入れ、サッカーボールを浮かせる要領でそれを跳ね上げる!

 「ぷひぷひー!」

 クルクルと回転しながら丸っこい物は宙を舞い、

 ガシッ!

 すっぽりと俺の腕の中に納まった。

 「ぷひぷ〜ひ〜♪」

 喜んでいた!

 興奮した様に丸い鼻を鳴らし、しきりに俺のにおいを嗅いでいる。

 まったく、この獣め…。

 お前オスだろ!

 「何だお前、また来てんのか?」

 「ぷひ♪」

 茂みに居たのは、近所でたまに見かける猪の子供の“通称”『なべ』だった。

 通称なのは、おそらくコイツは誰かのペットで、本当の名前があるだろうからだ。

 それを知らないので、秋生さんが勝手に呼んでいた呼称を俺も呼んでいる訳である。

 「あ…あのぉ……」

 俺となべのやりとりに目を丸くしていた先程の女子が、恐る恐る声をかけてくる。

 校章の色から三年の先輩だったが、俺が怖そうに見えるのか、それともたんに内気で人見知りなのか、何やらすごく恐縮している様だった。

 まあ、いきなり目の前で動物を蹴っ飛ばされれば、そりゃあ驚くよな……。

 「ああ、コイツよくウチの近所で見かける奴なんですよ。珍しいですよね。うり坊なんて。多分誰かのペットだと思うんですが……」

 「あの……それ……ウチの仔……なんです……」

 それは衝撃の事実だ。

 やべえ……いくらスキンシップとは言え、飼い主の前で蹴っちゃったよ……。

 「ああ、そうだったんですか。だから、たまにこの学校でも見かけるんですね」

 とりあえず適当な事を言って笑って誤魔化す。

 「はい……えっと……放し飼いなので……その……たまにお姉ちゃんに……逢いに来ちゃうんです」

 わざわざ付けられた“お姉ちゃんに”と言う言葉に違和感を覚える。

 “三年の彼女の姉がこの学校に居る”という事にではなく、何処か余所余所しい感じがするのは、どうやら俺に対してだけでは無さそうだ。

 そういや、さっき茂みに呼びかけていたのも自分のペットに対する感じでは無かったし、なべも彼女から逃げるようにして、俺の所に来ていた。

 つまり……コイツはお姉さんのペットで彼女にはあまり馴れてない?

 腕の中のなべを見つめる。

 「ぷひ」

 なべもつぶらな瞳で俺をみつめ返してくる。

 独特の丸みとプニプニ感が和む。

 犬や猫とまた違った趣が何とも言えない。

 でもなあ……ずっとこうしている訳にもなあ…。

 「えっと……どうぞ」

 「ぷひ!?」

 後ろ髪引かれながらも、とりあえずなべを飼い主に渡すべく差し出した。

 「あっ……はい」

 それに気付いて彼女も受け取ろうとしてくれたのだが、

 「ぷひぷひ!?ぷひー!!ぷひー!!」

 「あっ……!」

 なべが嫌々をするように暴れだしたので、彼女は手を引いてしまう。

 ああっ、やっぱり……。

 バツが悪そうに互いに顔を見合わせて苦笑を浮かべる。

 「あの……その……すみません……私、この子に嫌われてるみたいなんです……」

 「まあ、相性とかありますよね……」

 相変わらずなべは彼女を警戒していたが、俺に対する彼女の警戒は和らいだ気がした。

 改めて見ると、多少オドオドしているが、この人もとても可愛らしい人だと思う。

 肩にかからない程度の長さの髪に、右側の耳の近くだけにつけられた白いリボン。

 ややたれ目がちな瞳は、彼女の大人しく穏やかそうな性格をよく表している。

 どことなく感じが渚さんに似ていて、“女の子らしい”印象だ。

 でも、渚さんよりもその……ややぽっちゃり目と言うかグラマーと言うか……。

 「あの……」

 「は、はい」

 なべを撫でながら、さりげなく横目で観察していた所を話しかけられ、思わず返事が上ずりそうになる。

 気づかれた様子では無いが…やばいやばい、失礼だな。

 「えっと……用事を済ませたらお姉ちゃんが来ると思いますので……その……お急ぎでしたら、隅にでもその子を置いていってください。私が見張ってますので……」

 気を使われてしまった。

 確かに初対面の、それも異性と二人きりというのは気まずいよな…。

 「またな、なべ」

 「ぷひ?」

 名残惜しいが、俺はなべを茂みの方に置いて、行くことにした。

 「じゃあ、これで……」

 「あ、はい……ありがとうございました」

 ペコリとされた会釈に、こちらも頭を下げて歩き出す。

 ところが、

 「あっ……!」

 「ぷひぷひー!!」

 なべさんが後からトコトコついてきた!

 すかさずそれをすくい上げる!

 「ぷひぷひぷひー!!」

 『飛べない“猪”はただの“猪”だ!』

 とばかりに再び瓜坊は空中を舞い、俺はそれを両手でガッチリとキャッチした。

 パチパチパチパチパチ…。

 周りから拍手されてしまった。

 うわ……滅茶苦茶恥ずかしい……。

 「ぷひ〜♪」

 俺の気も知らず、なべさんはご機嫌だった。

 丸っこくてラグビーボールっぽかったので試しにやってみたのだが、それ以来味をしめたのか、俺をみると毎回コイツは突進してくるようになった。

 しかも最近は、蹴り上げる俺の足からタイミングよく自分も跳ぶ、つまり二段ジャンプを会得した事で更に高く飛ぶ様になったのだ。

 やはりこいつは飛ぶのが好きなんだろう。

 「よし、お前に『フライング・ボア』の称号を与える」

 「ぷひっ!」

 なべは俺の言葉が分かるのか、まるで敬礼でもするかの様にキリッと男前な顔をした。

 フッ、愛いやつよ。

 猪にしておくには惜しい男だ。

 「あの……ぅ……すみません……」

 小走りで駆け寄ってきた飼い主さんに、本当に申し訳無さそうな顔をされる。

 「ああ、いや……悪いのはこいつですから」

 「ぷひ!」

 そして彼女の接近に気づいたなべは、ぷよぷよの体を強張らせて警戒していた。

 さすがにここまで嫌っているとは……。

 さて、どうするか?置いていってもまた追いかけて来そうだが……。

 「えっと……あの……どうしましょう……?」

 「う〜ん……とりあえず、餌でもやりますか」

 「餌……ですか……?」

 俺はカバンから袋を取り出すと、その中にある深緑色の物体を一つ手に取る。

 「ぷひっ♪」

 その瞬間、なべが嬉しそうに反応した。

 まったく、この食いしん坊め。

 「パン……ですか?」

 「“ヨモギパン”です!」

 早苗さんのマネで弾む様に答える。

 「ああ……」

 何も知らぬ飼い主さんはそれで納得して、それ以上の追求はしてこない。

 ヨモギパンはヨモギパンでも、正しくは枕詞に“早苗さんの”が付くのだが……。

 なべはなべで、食えれば何でもいいのか短い尻尾を振っている。

 「ほら、食え」

 「ぷひぷひ〜♪」

 鼻先に持っていくと、匂いを嗅いで“一応”食える物だと確認してから勢いよく食べ始める。

 「ぷっ……ぷっ……」

 「……あの……何か震えているような……?」

 飼い主さんが指摘するまでもなく、なべはプルプル震えだし食うのも止まっていた。

 ま、まあ、たまに起こる現象だ。

 「だ、大丈夫です……な?なべ!」

 「ぷひ!」

 決意の眼差しと共に一声鳴くと、なべは再び勢いよく食べ始める。

 そして見事それを完食してみせた。

 「ぷひぷひー!!」

 俺に向かって“どうだ!!”とばかりに勝者の雄叫びをあげる。

 試練を乗り越えた男の貌で。

 「“盟友とも“よ!!」

 思わず俺はなべをガシッと力強く抱きしめた。

 「呼んだか?」

 “まさか”と背後からの声に振り返る。

 そこには、お約束の様に坂上“智代”が立っていた。

 「……いや、『“友”よ』と言ったんだ。お前は“智代”だろ?」

 「うん。智代だ。お前は確か“オーキ”だったな?」

 「え?ああ……」

 マイペースな坂上との会話に少々面食らう。

 呼び捨てにされた事も、そもそも呼んで無い事も、まったく気にしていない様だ。

 「“オーキ”か……お前は名前も変わってるな」

 「まあな。王様の“おう”に鬼の“き”と書くんだ」

 「……鬼の王様と言う事か?ずいぶんと偉そうで怖そうな名前だな……」

 「ああ……まっ、嘘だけどな」

 「む!?なんだ……危うく信じる所だったじゃないか。普通の人ならともかく、お前なら有り得そうだからな」

 名前ネタで取りあえずペースを取り戻す。

 「それで、私に何か用か?ん?それは何だ?」 

 だから呼んでないんだが、なべに興味を持った様なのでそれでいいか。

 「瓜坊だ」

 「うりぼう?ああ、猪の仔か。珍しいな。実物を見るのは初めてかもしれない」

 そう言いながら何気なく坂上は近寄って来たのだが……。

 「ぷひー!?ぷっ……ぷっ……」

 その坂上に気づくやいなや、突然なべは鳴き声をあげ、必死に隠れる様に俺の胸に顔を埋めてぷるぷると震えだした。

 「あっ……!」

 「えっ……?」

 飼い主さんと同じかそれ以上の怯えっぷりだった。

 まるで、“坂上智代”の存在その物に畏怖するかの様な……。

 その反応に坂上の歩みが止まり、先輩も唖然とする。

 「ん?どうしたお前……?」

 野生の本能がそうさせたのだろうとは予想はついたが、坂上の手前一先ずとぼけてなべの機嫌をとろうとした。

 と、その時だった。

 俺の野生が尋常でない殺気を感じ、その出所に向けた視線が捉えたのは、俺に向かって投擲された黒く細長い物体。

 ぶつかる!

 咄嗟に俺はなべを庇って背を向け衝撃に備える。


 バンッ!!


 快音が鳴り響く。

 しかし、高速で飛来する物体がまさに俺にぶつからんというその刹那、背中越しに見たのは、疾風の如く放たれた白く長い槍がそれを側面から打ち抜く様だった。

 飛来する物に気付いた坂上が、蹴りで撃墜してくれたのだ。

 なんつう反射神経と速度だよ……!!

 坂上の蹴りを受けた物は吹っ飛んで行き、そのまま横の茂みの中に消えていった。

 「どういうつもりだ?危ないじゃないか。いきなり辞書を投げつけるなんて」

 思わず坂上に魅入っていた俺に代わり、坂上が投擲した犯人を睨みつけ詰問する。

 てか、辞書だったんかアレ……。

 「あんた達こそどういうつもりよ?ウチの仔を苛めるのやめてくれる!」

 だが、大の男でも怯むであろう坂上の視線を受け、平然と睨み返してくるのもまた、髪の長い女子生徒だった。

 えっ?てか、ウチの仔?

 「お姉ちゃん……!」

 「ぷひぷひ〜!!」

 緩くなった俺の腕から逃れ、なべが喜び勇んで現れた女子の下に駆け寄っていく。

 ああっ、決定的だな。

 飼い主さんもお姉ちゃんと言ってるし、彼女とは反対の位置にお揃いのリボンをつけている。双子かダブりかは判らないが、校章も三年の色だ。

 「ボタ〜ン。遅くなってごめんねえ。酷い事されなっかった?」

 「ぷひ♪ぷひ♪」

 そして俺達の時とは打って変わった優しい声と笑顔で迎え、それを抱きかかえる。

 なべ、いや、『ボタン』?も俺の時よりずっと嬉しそう、いや、幸せそうだった。

 「なんだ。あなたのペットだったのか。でも、私達は別に苛めてなどいない」

 「嘘おっしゃい!クラスの窓から、そっちの男がウチの仔蹴っ飛ばしたの、見てたんだからね」

 「そう……なのか……?」

 女子生徒の目撃証言に、坂上が不安そうに俺を見る。

 マズイな……蹴ったのは事実だし、飼い主に向かってアレを「スキンシップです!」と言って判ってもらえるかどうか……。

 「あ……あのね……お姉ちゃん……」

 「それに今だって、悲鳴を上げて私に助けを求めてたじゃない!」

 え?アレそうだったんだ。

 「そ……それは……すまない。私のせいだ」

 坂上が悲しげに答える。

 「ほら、みなさい」

 「違うんだ!苛めていた訳じゃない。ただ、どういう訳だか、私はあまり動物から好かれた事が無いんだ。私が近付こうとすると、皆怯える様に逃げていってしまうんだ……」

 ああっ……やっぱそうなのか……。

 俯いた坂上の背中はとても寂しげで小さかった。

 きっとその度に傷付いてきたのだろう。

 なべを失った寂しさと相まって、後ろから抱き締めてやりたくて堪らなくなる。

 「……そう。まあいいわ。あんたの方は許してあげる。でも、そっちの男はどう説明するつもり?」

 坂上の姿に同情したのか、わりとあっさりとなべの御主人は坂上を許した。

 誤解しているだけで、悪い人ではないのだろう。

 しかし、その矛先をこちらに向けられ言葉に詰まる。

 どうにもこういうのは苦手だ。

 同い年以下なら、もしくは初めから喧嘩腰でいいなら何とでもなるが、目上の人間と仲良くしようとか、うまく会話しようって事となると、途端に頭が回らなくなる。

 「あの……」

 「私も事情はよく知らないが、何かの誤解じゃないのか?少なくとも、私が見て居ていた限り、その仔はオーキにとても懐いている様だった」

 何も言わない俺に代わって、坂上が庇ってくれた。

 てか、今“オーキ”って呼ばれたな……。

 二重の意味でちょっとした感動を覚える。

 「誤解も何も、私はちゃんとこの目で見てたんだからね!」

 「えっと……あのね……お姉ちゃん……」

 「りょう、あんたも見てたでしょ?こいつがボタンを蹴るとこ」

 「あ……それは……うん」

 「ほら、ここに近くで見てた証人も居るわよ!」

 「でもね。お姉ちゃん……」

 「すいませんでした」

 俺は何も言わず、頭を下げた。

 「オーキ?」

 「ごめん。行こう」

 「え?」

 そして坂上の手を掴むと、踵を返して彼女を連れて歩き出す。

 



 「悪かったな。せっかく庇ってくれたのに……。ありがとな」

 暫く手を引いていった所で、前を向いたままおもむろに謝罪と礼を言う。

 「どうして何も言わず謝ったりしたんだ?例え蹴った事が本当だとしても、お前の事だ。何か理由があるんだろ?」

 坂上も歩きながら当然の不満を漏らす。

 「ああ。アイツとはダチなんだよ」

 「友達?あの女子とか?」

 彼女の驚く声に俺も驚く。まさかそう取られるとは……。

 「いやいや、ウリ坊の方な」

 「ああ、なんだ……」

 「蹴ったってのも、抱きかかえるのに足で浮かせただけだ」

 「じゃあ、それをちゃんと伝えればいいじゃないか」

 「でも、俺がそう言っても、相手が納得してくれたか判らないだろ?軽くでも蹴ってるんだし」

 「それはそうかもしれないが……どうしたんだ?いつものお前らしく無いじゃないか」

 「……いや、基本的に目上の人と話すの苦手なんだよ。気ぃ使うから……」

 坂上の鋭い問いに一瞬どう答えるか迷ったが、素直に答える事にした。

 「目上の人?なんだ。やっぱり飼い主の方とも知り合いだったのか?」

 「いや、今日初めて会ったけど。ウチの学校は校章の色で学年判るんだよ」 

 「ああ、なるほど……しかし意外だな。アレだけ口が巧いんだ。相手が誰だろうと関係無さそうだけどな」

 「相手を言い負かす才能と、仲良くなる才能は別って事だ。前者はともかく、後者は俺にはまったくない」

 「……まさか。そんな筈はないだろう?だって、私とは仲良くなれてるじゃないか」

 その不意打ちの様な言葉に、思わず立ち止まって振り返る。

 帰りの桜並木の下、坂上は自信に満ちたいつもの笑顔だった。

 仲良くなってた……のか?

 むしろ、あんな事をしたんだ。嫌われてても仕方が無いと思ってたんだが……。

 ま、まあ、確かに今までの態度はそんな感じでは無かったけど……。

 てか俺、さっきからずっとコイツの腕握ってたよ……。

 改めて気付いて、途端に恥ずかしくなって手を離す。

 「それに、あの仔もすごくお前に懐いていたじゃないか……」

 笑顔が翳る。

 拒絶された悲しさを思いだしたんだろう。

 「ああ……まあ、アレだ……相手は動物だからな……においとかなんじゃないか?」

 まさか「お前の強さを本能で感じ取ってるんだ」なんて言えないので、何か適当な理由をでっち挙げてみる。

 「におい?……ひょっとして、私の体臭がキツイのか?これでも色々と気を使っているんだが……だとしたら、すごくショックだ……」

 ああ、ますます落ち込んだ。

 「いやいや、逆だ。その……人間にとって好いにおいでも、動物にとっては嫌なにおいって場合も有るし、逆も然りだ。そもそも、動物って臭いだろ?自然界じゃ、風呂なんて入ってなくて当たり前なんだし。少なくとも俺はお前はいい匂いだと思うし、俺くらい汗臭い方が動物には受けがいいのかもなって……」

 話しの流れでつい“いい匂い”とか言ってしまったことに恥ずかしくなって、尻つぼみのまま視線を逸らす。

 「そ、そうか……でも、お前も別に嫌なにおいって訳じゃないと思うぞ。むしろ安心すると言うか、どこか懐かしい感じがする……」

 どこか遠い目をして坂上は微笑んだ。

 “励ましのお返し”なんだろうが……においが嫌じゃないと言われるのは……思っていた以上にドキリとする物だと知った。

 てか……成り行きで連れて来ちゃったけど……このまま一緒に帰るのか?

 やべえ……どうする?まったくの想定外の事態だ……。

 それに坂上はどういうつもり何だ?

 この状況をどう思ってる?

 そして……俺の事をどう……?

 「あの、坂上さん」

 悶々としていると、いきなり後ろから坂上を呼び止める声がした。

 「ん?あっ……!」

 振り返った坂上は“しまった”という顔をする。

 彼女に声をかけたのは、三人組の女子生徒だった。

 「その彼と帰るのかな?」

 「あ、いや、すまない。成り行きでここまで付いて来てしまっただけで、別にオーキとそういう約束をした訳じゃないいんだ。前からの約束通り今日はあなた達と帰る事にする。そういう訳だから、オーキ、またな」

 「あ、ああ」

 そう言って、坂上は俺の傍らから離れ、女子生徒の輪に加わっていった。

 惜しかった様な、ホッとする様な……。

 唐突に出会ったかと思えば、唐突に別れが訪れる。

 まあ、元々イレギュラーだったんだ。そんな物だろう。

 それでも収穫は有った事だしな……。

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