45話 本当の決戦
そして。私達は玉座の間に着いた。扉を開けるとそこには前に撃退した魔王の姿があった。魔王はこちらを見ると高笑いをしてきた。
「はっはっは!!よく来たのぅ…勇者よ!」
「……逃げたくせに……」
「……私はちょっと同情してます……」
「うっ、うるさい!」
「……図星?」
「ち、違う!!」
ちょっと動揺する魔王。やっぱり逃げたんだ……。
「ここまで来たのじゃ、そなたたちの名前を聞きたい。わらわの世界となった時には、名を刻んでやろうぞ!」
「……リノン・ジータ」
「シルビィ・シュタインです……」
「貴様ら、わらわの部下たちをひどい目に合わせてくれたようだな!」
「……人間に酷いことしてたのは魔王じゃなく?」
「うっ……」
うろたえる魔王。
「お前らがわらわを裏切ったのが悪いのじゃ!!」
「裏切ったっていつの話し?」
「そう……それはわらわが魔王としてこの地に君臨したはるか昔……」
「そんな昔の事なんて、知らないし~♪」
「うっ……」
「……お姉ちゃん、魔王さん困ってるよ……。あまりいじめないであげて……」
シルビィに諭される私。散々私におちょくられた魔王は赤面している。そして気を取り直したかのように私達に語り掛ける。
「まぁよい。わらわの部下たちは、果敢にもおぬしらと互角に渡り合ったのじゃろう?」
「いや? ほぼワンパンだよ~?」
「……では、わらわもワンパンで倒せると思っているのか?」
「いや?」
「ほう。さすがにわらわだと手ごわいと?」
「そうじゃなくて」
「ん?」
「ファンファーレ・レイで倒したいから」
「……」
「じわじわ弱らす」
魔王の目に涙が溜まる。
「はっはっは!!そのような強がり、どこまで持つかな!!」
「……涙目になってるけど、大丈夫?」
「お姉ちゃん!?」
「……御託はもうよい!同胞の恨み、ここで晴らしてくれるわ!」
「その強がり、どこまで通用するか、やってやる!!」
なんとなく、魔王と私のセリフが逆転しているような気もする。
「そんなみすぼらしい装備でわらわを追いこもうというのか!」
「どうかな? 私には愛の力があるんだから!!」
そう、これはユウスケが選んでくれた装備。私、絶対魔王を倒すからね! ファンファーレ・レイで。
「いくぞ!!」
魔王は持っていた剣を走り様に振り抜く。私はそれを躱す。魔王の動き、見切れる!
「ちっ!!」
「さすが魔王ね……今のは危なかった……ぞっと!!」
私は魔王に毒針の猛ラッシュを仕掛ける。しかし魔王はそれを剣や腕で防ぎきる。腕に当たった毒針のダメージは僅かながらには入っているが、大したダメージにはなってない。それもそのはず。私は急所をわざと外しているんだから。
「魔王! 守ってばかりじゃ、戦いにならないよ!!」
「小癪な!! もっと本気を出したらどうじゃ!」
「……本気出したら、ファンファーレ・レイ打つ前に倒しちゃうでしょ!」
魔王の目がさらに潤む。そしてありったけの力を込めて魔王は詠唱し始める。
「詠唱、冷徹な天使の怒り!!」
周りに雷撃が走り私とシルビィを襲う。よけきれない!
「くっ!!」
「きゃぁ!!」
私とシルビィはダメージを食らう。その様子を見て魔王は次の攻撃をしてくる。
「詠唱、リバイアの涙!!」
強力な水圧が私めがけて襲ってくる。先ほどの雷のダメージもあってよけきれない。私はその水圧をもろに受けてしまう。
「うっ……」
「……お姉ちゃん……今までワンパンだったからその防具じゃ、魔法攻撃とか無理だと思うけど……」
「はっはっは! 勇者よ! この程度か!!」
「……油断した……。本気出すよ!!」
私は本気を出す。そして魔王の顔には陰りが見える。
「お姉ちゃん、サンダージャベリン打つ?」
「いや、ファンファーレ・レイに魔力残して? 一気に決めるよ!!」
私は構えて魔王に突進する。
「てりゃ!!」
毒針のラッシュ。私の素早さ全開で毒針を繰り出す。その速度は魔王の回避速度を上回る。そしてあの時と同じく肩の急所に一発毒針が入る。
「くっ!!」
「この調子でいくよ!!」
「ぐっ!!」
「どうしたの? さっきまでの元気は?」
「おのれぇ!!! 詠唱・黒炎の刃!」
魔王の剣が炎に包まれる。そしてその剣を構えて魔王は叫ぶ。
「これでどうじゃ!!!」
魔王の剣。ラッシュがさく裂する。今までの勢いよりさらに速度が乗った剣捌き。私は防ぎきれずに一発、二発とダメージを食らう。
「さすが魔王ね……私にダメージを入れるなんて……」
「ふん!見くびってもらっては困る!!」
魔王のラッシュが続く。しかし。
「そこ!!」
私は魔王の剣に毒針を叩きつけ、大きくはじく。甲高い金属音が鳴り、剣は魔王の手から離れて宙を舞い、地面に突き刺さる。
「おのれぇ!!!」
魔王の目は徐々に本気になっていく。
「詠唱・黒龍の牙!!」
魔王の手には黒炎が纏われ、私に突進してくる。私は……。
「てい!!」
毒針でその攻撃をいなし。
「そこだ!!」
防御がはがれたところで、毒針のラッシュをお見舞いする。魔王の急所を鋭く突いていく。倒してしまわない程度で。
「ぐぉぉぉ!!!」
そして魔王は床に倒れ込む。そしてもう先が長くないことをさっとったかのように、魔王は懇願してくる。
「勇者よ……とどめを刺してくれ……」
「うん、そろそろ頃合いだし……」
魔王の目には涙を溜め、でも悟ったかのような表情で私の攻撃を受け入れる。
「ファンファーレ……」
そう……この魔法で……全ての決着はつく。全ての……。交換日記も……。
「はっはっは!! 勇者よ! 見事だった!!!」
「レイ!!!!」
私にに集まったルビィの魔力が、魔王に向けて放たれる。神々しい光と管楽器のような旋律を奏でて、慈悲の光で魔王を包む。そして魔王の可愛らしい断末魔がこだまする。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!!!!」




