44話 逃避行
そして、そして。私とシルビィは飛空艇がある街にやってきた。飛空艇乗り場、これが私の目的。私は受付に行き話をする。
「いらっしゃいませ。どちらまで行かれるのですか?」
「えっと、自由に乗りたいので、専用の飛空艇ください!」
「はい?」
「だから、飛空艇を売ってください!」
「はい……ですが、専用飛空艇は結構なお値段が……」
「これで!」
私は銀行の通帳を受付の人に見せる。私は本気。飛空艇を買って魔王を追い詰める!
「あ、はい。これだけあれば……上の者と話しますんで少々お待ちを……」
「急いでるんです! 時間がないんです! 早くお願いします!」
「分かりました。早く手配できるようにいたしますんでお待ちください」
受付の人は奥の部屋へと消えていった。
「お姉ちゃん……本気なの?」
「うん!」
「でも操縦はどうするの?」
「何度かなるでしょう!」
「う~ん……」
シルビィは渋い顔をしている。確かに無謀だけど、私達には時間が無い。魔王にそれこそ本当に逃げられてしまったら元も子もない。焦る気持ちを他所に時間は刻一刻と過ぎていく。そして受付の人が戻ってくる。
「お待たせいたしました。なにぶんこのような事は初めてだったので……。飛空艇には操縦者が必要になりますので、一名手配させていただいてでもよろしいでしょうか」
「はい、大丈夫です」
「あと、急ぎとのことでしたので、私達が使用していた小型の飛空艇でもよろしいでしょうか」
「はい、それも大丈夫です!」
「ありがとうございます。では手続きをさせていただきますね」
なんだか小難しい書類を何枚か出されて、説明を受けながら書く。最後に銀行からの引き落としの書類を書いて提出する。これで、専用の飛空艇が手に入った。
「ありがとうございます。ではこちらの飛空艇になりますので案内させていただきます」
「よろしくお願いいたします」
こうして私達の魔王を追いかける旅が始まった。
------
【……いいこと聞けちゃった♪】
大好きなユウスケへ☆☆☆
……えへへ☆
なんだか、ユウスケの本当の気持ち、聞けちゃった気分♪
う~ん、もう、ユウスケ!
好き、好き、好き、だ~い好き~☆
もう好きが止まらなくなっちゃった☆
……責任とってよね??(笑)
……でね、魔王なんだけど……。
玉座の間に行ったらね……。
玉座に手紙が置いてあったの。
でね、中身見てみたら……。
「しばらく旅に出ます」
……逃げやがった!!!
許さない!!(--〆)
今ね、飛空艇買って、探し求めてるところなの!!
今のところ目撃情報無し。
……私たちの幸せのために、ぜ~ったい倒してやるんだから!!
待っててね!ユウスケ♪
------
情報収集しながら魔王を追いかける。今のところ情報は無し。そしてユウスケの本音が聞けて私は少し上機嫌になる。絶対に……魔王を倒すんだから! 絶対に許さないんだから!
------
【……いろいろ、複雑な気分です……。】
……。
なんかさ……。
色々と複雑な気分なんだけど……。
そして、色々ツッコミたいんだけど……。
キリがないので、一つだけにしとく……。
飛空艇、買ったんかい!!!
普通、借りるとか、譲ってもらうとかじゃなくて?
どんだけゴールド貯めてたのさ!!!
……。
うん、責任はとるよ…。
だから、リノンは魔王を探してね?
……なんだか、複雑な気分だけどさ…。
とりあえず、言っとくね。
逃げた魔王を捕まえ上げて、倒してみんなの平和を取り戻して!!
……。
大好きだよ……リノン……。
------
私だって正直複雑な気分なんだから。わたしだって肩透かし食らったんだから。待っててねユウスケ。必ず魔王を倒して、ハッピーエンドを迎えるんだから。
------
【私だって肩透かし食らったんだからね!!】
大好きなユウスケへ☆
……実際のところ、私の方大変だったんだから……(--〆)
魔王城に勢いよく飛び込んで、誰もいない玉座だったんだよ??
ありえなくない?(--〆)
そしてさ、手紙置いてあるからって、
見てみたら、「旅に出ます」だよ?
……もう、なんなのさ!!
私だってね、切ない気持ちとか、一杯抱えながら行ったのよ?
もうさ、頭来たから、飛空艇買い取って、今追いかけてるところなんだからね!
うん、責任はとってもらうから、覚悟しててね。
じゃあ、待っててね☆
ユウスケ☆
P.S.
北の山で魔王の目撃情報あり。
今、現地に到着。
------
少しだけ魔王の情報が入る。そこに向けて飛空艇を飛ばす。
------
【魔王をあまり怯えさせないように……。】
大好きなリノンへ。
……うん……お疲れ様……。
だってさ……一度ボコボコにしてたじゃない……。
あれで、怯えて逃げたんじゃ……。
……いい方向に考えよう……。
きっと、北の山だから武者修行に行ったんだよ。
そして、リノンへリベンジ考えてるんじゃない?
もしかしたら、強くなってるかもよ?
最終的には、魔王城で待ってるかもね?
……責任……とるから安心して……。
じゃあ、またね。
追伸
魔王をあまり怯えさせないように……。
また逃げられたら、大変だから……。
------
怯えさせたのは私は悪くない。魔王が勝手に来たんだから。
------
【字、震えてたしなぁ~。】
大好きなユウスケへ☆
ボコボコって失礼な……(--〆)
あっちがちょっかい出してきて、説得に応じなかったのがいけないのよ!
不可抗力です!
正当防衛なんです!
んっと……責任とってくれるなら、安心して魔王を追い詰めるわ~☆
武者修行ね……それは無いかも?
だって「旅に出ます」って字、震えてたもん。
……まぁ……飛空艇で追い回したら、そのうち魔王城に戻るかもね~☆
じゃあ、またね~☆
P.S.
魔王、北の山から南下。
情報をもとに捜索中。
可能であれば、魔王城へ追い込むことも検討。
------
ユウスケの言う通り、最終的には魔王城に居るかも知れない。飛空艇で魔王城に追い込むことも検討する。
------
【魔王追い込み作戦??】
大好きなリノンへ。
……はい、わかりました……。
もうそこはツッコミません……。
てか、リノンの世界に「正当防衛」なんて言葉あるの??
こっちだけだと思ってたんだけど……。
……魔王、すっかり怯えさせちゃったんだね……。
なんかさ…僕が見てると、どっちが悪者かわからなくなってきたよ……。
……いや、ちょっとした冗談だから、まに受けないで……。
とりあえず、派手に追いかけてたら、魔王城に戻る可能性も高いね。
意外と…リノンの飛空艇作戦って、理にかなってるのかも?
じゃあ、またね。
------
もう、頭に来たから買い付けた飛空艇なんだけどね。理にかなってる方法というならうれしいかも。
「お姉ちゃん、このルートなんだけど……」
「ん?」
「私達が魔王に近づいた道のりに似てると思うの」
「あ……そうね」
「もしかして魔王は……」
「最終的には魔王城に戻るかもね!」
「……うん、私が言いたいのはそうじゃないけど、そう言う事にしとく」
------
【魔王の追い込み漁??】
大好きなユウスケへ☆
正当防衛、ちゃんとあるよ?
法律とかはこっちもしっかりしてるよ~。
……魔王……怯えちゃってるのかな……。
そういえば、昔ね、こんなことやった覚えが……。
川でね。
網を仕掛けて、魚をどんどん網の方向に、追い込んでいくの。
魚の追い込み漁ね。
……今、それやってる気分……。
魔王の追い込み漁って感じ~☆
でも、ユウスケの言ったように、本当に魔王城に戻る気みたい。
ちょうど、私たちが魔王城に入るルートと同じ道を通っているから。
明日には、捕まえられるかもね♪
じゃあ、待っててね☆
ユウスケ☆
------
そして。
------
【魔王は魚ではありません!!】
大好きなリノンへ。
正当防衛、びっくりしちゃった……。
そっちにあるとは思わなかった……。
……リノンはやっぱり、魚をとるのが得意みたいだね……。
でも、魔王は魚じゃないからね?
同じ感覚でやらないように!!
……って、飛空艇で追いかけるって、まぁ、それに近いよね……。
魔王城に戻るなら、戦いやすいかもね。
やっぱり、武者修行してたのかな?
それとも、玉座の手紙は武者震いしてかも?
……。
……ごめん、変な冗談言って……。
じゃあ、またね。
------
私達は目撃情報をもとにして、最後の最初の地点。魔王の城に居た。




