43話 決戦
私とシルビィは魔王の城に突入していた。中のモンスターは強敵ぞろいで死闘を繰り広げていた。キメラのモンスター、骸骨のモンスター。振り払うように私とシルビィは進撃をしていく。魔王の城……それはトラップも広さも今までの砦や城とはけた違いで、最上階までは遠い。繰り返す死闘。でもレベルの差で補うには十分すぎるほどで、最上階に着くころでも体力は十分あった。シルビィも同じく。そして最上階の扉にたどり着く。私達は扉の前で最後の休息をとる。
「お姉ちゃん、これが最後だね?」
「うん、シルビィ、回復薬飲んで」
「わかった」
「……」
「……」
回復薬で補給しながら無言になる私達。これが……本当に最後。私とシルビィの冒険の終着点。これで私とシルビィの物語は終わり。そしてこの世界の物語としても終わり。
「これが……本当に最後……なのね?」
「うん……お姉ちゃんは大丈夫?」
「まだ怖いけど、大丈夫だよ」
「じゃあ、扉はお姉ちゃんが開けて?」
「わかった……」
私は扉の前で深呼吸をする。最後の扉。私は意を決して扉をゆっくりと開ける。扉は静かに開いていき、大広間が現れる。圧倒的な存在感を示すその部屋は、物静かで何の気配も感じない。最後の決戦。それにふさわしい雰囲気だった。
「……って?」
ん? 気配を感じない? 魔王は気配を消してる? そういえば玉座には誰も座ってはいない。恐る恐る魔王の玉座と思われるところまでシルビィと近づく。
「お姉ちゃん」
「なあに?」
「もしかして……魔王……」
「……玉座に手紙がある」
何かを言いかけたシルビィ。私は玉座にあった手紙を広げる。そこには震えた筆跡でこう書かれていた。
『しばらく旅に出ます。探さないでください。』
……。
「に、逃げた!?」
「魔王……アレ、よっぽど怖かったんだろうね……」
魔王に同情するシルビィ。私の中ではいろんな気持ちが交錯する。最後と気合を入れたのに。ユウスケにお別れを告げたのに……。魔王に逃げられた勇者? そんなの前代未聞だ。倒すべき宿敵が逃げるなんて……。
「ゆ、許せない!!」
「いや、お姉ちゃんが悪いと思う……」
「絶対に捕まえてやる!! シルビィ! 行くよ!!」
相変わらず魔王に同情を示すシルビィの気持ちを置いてきぼりに、私の魔王捜索作戦がこの後展開される。
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……まだ日記残ってるよ……。
大好きなリノンへ。
交換日記……消えてないよ……?
でも、この交換日記を読んでもらえるか……。
そして、リノンのもとに届くかわからないけど……。
それでも僕はこの交換日記に書くね。
たとえ……返事がなかったとしても……。
……消えたら、別の交換日記買って、書き続けるよ……。
……届かないってわかってるけど……。
僕は……忘れたくないから……。
……うん……届かないってわかってるけど……。
ねぇ……リノン……。
見れたら、返事書いて……。
本当に、本当に、大好きだから……。
リノンの顔…見たかったけど……。
……僕は、リノンに告白してよかったと思ってるよ?
だから……。
大好きだよ……リノン……。
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その日のユウスケからの返事。切なさが満載だった……。