42話 最後のレベル上げ
そして私はひたすらレベルを上げる。大岩のモンスターを相手にしながら……。
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【……魔王、気の毒にな……。】
大好きなリノンへ。
……。
……。
やっぱり、そう来たか…。
……てか……魔王気の毒な気が……。
本当に倒すとき、ちゃんと戦ってくれるか、心配になってきたよ……。
……魔王城に戻ってることを祈るよ……。
ところで、裏エンディングの事だけど……。
表エンディングって、リノンは知ってるの?
疑問だったんだ……。
なんでいきなり、裏エンディングの話からになるのかって……。
表エンディングって、どんなのか知ってる?
それにファンファーレ・レイの事も気になるし……。
じゃあ、またね。
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裏エンディング……もう私は決めてるよ?
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【表エンディングは歴代勇者がやったんだよ~☆】
大好きなユウスケへ☆
現在、順調にレベル上げ中なのだ~☆
今でレベル92になったのだ~(^_-)-☆
昨日から、ガッツリ倒したからね♪
もう少しで99になるよ!
……うん、もう少しで……。
……いや、何でもない!!(;´・ω・)
表エンディングは、歴代の勇者がやってたやり方で、魔王を弱らせて最後に、魔王自身が自分を封印しちゃうの。
どの勇者も倒し切れなくて……。
んで、ひと時の平和が訪れました。
って、なるの。
裏エンディングはファンファーレ・レイを覚えた時、夢で教えてもらったの。
魔王は……まぁ、城に戻ったんじゃないかしら?
……居なかったら、承知しないんだからね!(--〆)
じゃあ、またね~☆
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レベルが上がるにつれて切なさが増していく。歴代勇者のやり方とは違うやり方……私はそれを目指すんだから。魔王……待ってなさいよ!
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【裏エンディングを目指さない?】
大好きなリノンへ。
……なんかさ……。
この間、魔王来た時に自ら封印しなくてよかったと思うよ……。
大分弱らせたんじゃない?
もしかして…もう自ら封印してたりしない?(汗)
でもさ……表エンディングだと、僕らはハッピーエンドになるのかな……。
なんとなくだけど……。
僕ら……リノンは、裏エンディングを目指したほうが、良いと思う。
……正直僕にもどうなるかわからないけど……。
賭けてみない?
なんか、そこにヒントがあるような気がするんだ。
最終的にはリノンが決めていいよ?
じゃあ、またね。
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うん……私達のハッピーエンドは表エンディングには無いと思うの。だから……私は別の方法を……ユウスケと一緒になれる可能性に賭けてみたいの。
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【もちろん、裏エンディング目指すわ!!】
大好きなユウスケへ☆
あぁ、大丈夫よ♪
魔王はね、弱らせてって言っても、倒しちゃわないとダメなの。
倒されないと、封印できないらしいの。
だから、きっと魔王は城にいると思うわよ。
それに、まだ平和になってないから、安心して~(^_-)-☆
現在、レベル94だよ~!
あと、5つ!
経験値稼ぎも大分コツがわかってきた感じ。
……まぁ、相変わらずべとべとだけどね☆
……魔王め……もう少ししたらリベンジしてやる…。
待ってなさいね!!!
そうだ。
私ね、裏エンディング目指すの決めてるんだ……。
私も賭けるね!
じゃあ、またね~☆
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私の後悔は無いように……全力を尽くす。ただそれだけ。
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【僕も後悔しないから!!】
大好きなリノンへ。
……平和になってないから大丈夫って、なんか変な気が……。
……まぁ、いいか……。
レベル94か……いいペースだね。
相変わらず、毒針とドレスなの?
……聞かなくてもわかりそうだけど……。
魔王にリベンジは……なんか違う気がするんだけど……。
……魔王の方がリベンジの気もしなくもなく……。
……それもいいや……。
……なんだか、よくわからなくなってきたや……(笑)
裏エンディング……うん、わかった。
僕もどうなっても後悔しないからね。
リノンの好きなようにやって!
じゃあ、またね。
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うん、ユウスケも後悔しないなら、私はやるよ? 私の好きなように……。
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【ペンギンは、ゾウのモンスターだと思う。】
大好きなユウスケへ☆
えへへ☆
平和じゃないから大丈夫って、変だったね……。
……私もよくわからないや……。
世界の平和を使命としている勇者が、最後は自分のために、魔王を倒そうとしてるんだもんね……。
な~んか、変なの~☆
……うん、私も後悔しないから……。
もしも……もしもだけど、この日記が消えちゃったら……。
……そうなっても、私の事、覚えててほしいな……。
……なんてね……☆
……レベル96だよ……。
次、頑張るから、99になると思う……。
そうなったら、次決戦だから……。
ペンギン……。
ゾウみたいで銀色のモンスターだと思う……。
じゃあ、またね~☆
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ペンギン……こっちには居ないけど、そっちに行ってどんなのか見るんだから。
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【すべての命運、リノンに託すよ。】
大好きなリノンへ。
……そうか……レベル96かぁ……。
次の日記で、レベル99にするのか……。
わかったよ。
世界のためにも。
僕たちのためにも……。
リノンは力いっぱい戦ってほしいな……。
後悔……絶対しないから……。
僕は、リノンに全てを託すよ……。
……どうであれ、僕はリノンの事を忘れないよ?
出来れば、僕の事も忘れないでほしいな……。
……あはは…まだ次に戦うかなんて、決まってないのにね……。
じゃあ、またね。
追伸。
こちらにはモンスターは居ません。
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モンスターが居ない世界。それは私にとっては不思議かもしれない。私は毎日のように戦っているんだから。きっと……きっと、ユウスケの世界は平和なんだろうな。
そして。今日の戦いで私の左腕のステータスが輝きだす。私はレベル99になった。
「お姉ちゃん……」
「うん……いよいよね……」
そう、いよいよ魔王を倒すとき。正直少し怖い。交換日記が無くなる可能性もある。本当はこのまま引き返したい。表のエンディングで逃げてしまってもいいのかも知れない。でもそれがユウスケと私のハッピーエンドにはならない……百も承知だ。私は裏エンディング……ファンファーレ・レイで魔王を仕留める道を選ぶ。
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【これで最後になるかも……。】
大好きなユウスケへ☆
……うん、レベル99だよ……。
今日はちょっと無理しちゃったから、明日、魔王の城に行くね。
ユウスケ……祈っててね?
私……頑張るから。
もし、交換日記が消えても、私忘れないからね?
……でも、どちらかというと、約束守ってほしいな……。
……ユウスケが約束守れるかは、私次第だけど……。
精いっぱい頑張るから……ね?
もしかしたら、この日記が最後になるかもしれない……。
その時は……笑顔でリノンが平和を取り戻したって、思ってね~☆
……大好きだよ……ユウスケ……。
こんな私と、交換日記してくれて……。
それにね……。
ちょっと無理やりだったけど、告白させちゃったし……。
……ありがとう……。
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「……」
何だろう、涙があふれてくる。本当に……魔王を倒したらこの交換日記も消えるかも知れない不安に押しつぶされそうになる。でも、私は決意したのだから。たとえこの交換日記が無くなろうとも……そして、無くなったとしても後悔しないように、私は最後の言葉だと思いならが日記を綴った。
「お姉ちゃん、今日は一緒に寝よ?」
「うん……」
そう言うとシルビィは私の布団に入ってきて、優しく私を抱き寄せる。私の頭を撫でながら。シルビィは優しく語り掛ける。
「お姉ちゃん、頑張ったね……」
「うん……」
「もし交換日記が無くなっても、私がずっとそばに居るから。私じゃダメかも知れないけどね。後もう少しだから、頑張ろうね?」
そう、私とシルビィの物語はこれでおしまい。もしかするとユウスケとも……。そう思うとまた胸が締め付けられたように苦しくなる。けど……ここは私の頑張りどころ。明日はついに、魔王との決着をつける時だから。たとえ交換日記が無くなろうとも。
「お姉ちゃん、大丈夫。心配しないで? 何とかなると思うから……」
シルビィの優しい言葉を受けながら、私は泣き疲れて眠ってしまったようだった。