41話 魔王
そして……。
「!?」
「お姉ちゃん!!」
日課のように魔王の城のそばでレベル上げをしていると、魔王の城から人影かこちらにやってくる。片翼で空を飛び、全身真っ黒なマントの女性の姿。あれはきっと魔王。てか女だったんだ……。とはいえなぜ? 魔王は城から出られないと聞いているのに……。こんなの予想外。私は魔王を睨む。
「なかなか来ぬから、魔王のわらわが出向いてやったわ!!」
「……」
「お姉ちゃん……やっぱりしびれ切らせてたよ……」
しびれ……切らしたらしい。私がレベル上げして魔王の庭を荒らしたせいかも知れない。私は魔王に向かってゆっくりと語り掛ける。
「ねぇ、魔王さん」
「なんだ?」
「私、レベル99にしたいの」
「なんとなく知ってた」
「今ね、私レベル90なの」
「それは知っておる」
「だからね……」
私は間を開けて、魔王に本心を吐露する。
「おうちに帰ってくれない?」
その言葉に魔王は言葉を失う。気を取り直したかのように魔王は語り掛けてくる。
「……今なんと言った?」
「だから、レベル99になるまで、待っててくれない?」
「なっ、なっ……」
私の言葉に魔王の顔は怒りの形相へと変わる。……当然かも知れない。
「おのれぇ……なめたことを……。もうよい!ここで八つ裂きにしてくれようぞ!」
「だ~か~ら~。待ってって!!」
魔王は私の言葉を無視して剣を振りかざす。私はすかさず毒針でその剣を受け流す。
「いい反応だな! さすがレベル90! 今まで勇者とは違うな!」
「レベル90、なめないで!!」
私は魔王に向かって、毒針を突き立てる。
「やぁ!!!」
「!?」
手ごたえはあり。だけど急所を外した攻撃はなかなかダメージは通らない。流石魔王。でもその目にはちょっと……。その攻撃を見て魔王は私に語り掛けてくる。
「そんな装備でわらわにダメージが通るとでも?」
「……あなた、涙目よ?」
「!?」
涙目を指摘されてうろたえる魔王。私と魔王の口上戦が続く。
「でも、そんな攻撃でわらわを倒せるとでも?」
「……一応思ってるけど?」
「!? なら、ここで葬り去って後悔させてやる!!」
魔王は本気を出したようで、剣で私に切りかかってくる。連撃。私は何とか躱しながら毒針を打ち込む。こちらの連撃。ただ魔王だけあって数発しか当たらない。
「あはは!!!効かぬは!!!」
「せい!!!」
私は毒針の連撃を繰り返す。毒針を貰った魔王は少し涙目を見せるものの、いたって元気。これなら急所に入れても倒れることは無いだろう。私は魔王の肩めがけて一撃を放つ。それとほぼ同時位に魔王は余裕の口上をする。が私の一撃で途中までにさせる。
「ははは!!本気でそれで勝つ……」
「てい!!」
「!?」
肩に一撃を食らわせる。急所に入ったようだった。でも魔王はピンピンしているので、もう少しぐらい弱らせてもよさそう。私は次のラッシュに備える。
「なっ、なっ……」
「急所に入ったみたいね。じゃあ次!!」
私は先程入れた肩の急所をめがけて、毒針のラッシュをする。顔が歪んでいく魔王。私の計画を邪魔するなんて許せない! 程々に痛めつけて帰ってもらうんだから!
「なっ、そこ、ずるいぞ!!」
「魔王に手心は不要!!」
私は問答無用に急所を狙う。きっと毒のダメージも魔王にとっては皆無に近いだろう。だから倒さない程度でダメージを入れ続ける。そして魔王は肩から崩れ落ちる。
「……もうその腕は動かないようね……」
「くっ……」
「どうする?おうち帰ってくれる?」
「くっ、くそぉ…、覚えてろよ!!!」
魔王はそう言うと、痛めた肩を手で押さえながら、魔王城の方に飛んでいった。多分大人しく帰ってくれたんだと信じる。
「お姉ちゃん……やり過ぎなんじゃ……」
「だって、向こうから来たんだもん。仕方ないじゃない?」
「そう……かな?」
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【大変な事が起きたの!!!】
ユウスケ!!
今日はね、大変なことが起きたの!!
あのね、私がレベル90になった時なんだけど……。
しびれ切らした魔王が来ちゃったの!!
それでね、説得しても応じないから、武力行使したの。
毒針で、急所をわざと外して、じわりじわり……って。
そうやってね、弱らせたら、魔王逃げちゃった~☆
でね、逃げ去り際に言ってやったの。
「レベル99になったら、行くから待ってて!!」ってね~☆
魔王もせっかちねぇ……。
じゃあ、またね~☆
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