33話 シルビィの魔法
今日は覚えたてのファンファーレ・レイを試し打ちしてみる。対魔王用の魔法だけどその辺のモンスターにも効くはず。そう思い手ごろなモンスターの群れを漁る。程よいモンスターの群れと遭遇し、私はファンファーレ・レイの詠唱をする。頭に流れてくる呪文を口にして、最後に魔法の名前を唱える。
「ファンファーレ・レイ!!」
すると、シルビィの体が光りだし、シルビィの魔力を吸収する。そしてシルビィから流れてきた光が私の手に移り、その光を放出する。そして……その光は……しゅぼん! という音を立てて私の手の前で消える。
「え?」
魔法が発動しない!? もう一度……。私はモンスターの群れを往なしつつもう一度詠唱を試みる。
「ファンファーレ・レイ!!」
また、しゅぼんと言う音と共に、モンスターに当たることなく消えてしまう。それにはお構いなしに襲ってくるモンスターを一時回避のために殲滅する。
「どうして……」
「お姉ちゃん、私なんだかだるい……」
シルビィが顔色を悪くして答える。なんだか私よりも疲れた顔をしている……どうしたんだろう?
「その魔法なんだけど……私の魔力使うのかな……?」
「うん、確かそうよ?」
「……だったら、私魔力ゼロなんだけど……」
「あ!!」
シルビィは女剣士なので、当然ながら魔力は無い。仲間の魔力を使うって言ってたから……この場合、仲間はシルビィのみ。魔力がゼロのシルビィから魔力を奪おうとすれば、シルビィの精神的ダメージは避けられない。そりゃそうかも知れない……。
「お姉ちゃん、私疲れちゃった……」
「シルビィ、ゴメン……今日は宿屋で休も?」
疲れ切ったシルビィを抱えながら、宿屋に戻る。予想外。私はファンファーレ・レイを使う方法について作戦を練り直さなきゃと考えていた。
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【……その魔法なんだけど……。】
大好きなリノンへ。
水族館……そう考えてくれてたなら、僕もうれしいよ……。
リノン、ありがとう……。
僕は魚を見るのが好きだから、一緒に見れると嬉しいよ。
……食べる話は禁止だからね……。
冬休み中はシーズンで高かったので、冬休み開けてから行くことにしたよ。
行ったら、報告するね。
……その魔法なんだけどさ……。
仲間の魔力って今いくつなの?
仲間って、シルビィだけで女剣士だよね?
……ひょっとしたら……今って使えないんじゃないかと、思ったから……。
じゃあ、またね。
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「……」
今日ファンファーレ・レイが使えなかった事と、ユウスケの日記を見て、またシルビィの事ばかり書いていることに、私は機嫌を悪くする。いや、ユウスケの言ってることもわかるんだけどね……。シルビィをベッドで休ませて、今後の方針について考える。このままでは魔王と対峙した時も、ファンファーレ・レイは不発に終わってしまう。
「新しい仲間……かぁ……」
なんか今更感がある。暫くシルビィと過ごしてきた事、二人とも人見知りな事を考慮すると、仲間を作る選択肢はあまり得策のような気はしなかった。どうしようか? 私は想いを巡らせながら、瞼は重くなっていった。
「うりゃぁぁぁ!!!」
私とシルビィはあてもなく、とりあえずモンスターを狩っていた。八つ当たり。そうかも知れない。もどかしい気持ちを戦闘にぶつけて発散している感じ。そうしていると日が沈みかけたので、もう一度宿に戻る。
「う~ん……」
「ごめんなさいね……私が魔法使えれば……」
「そうよね……シルビィが魔法覚えればいいんだけど……」
「う~ん……そう簡単に魔法なんて覚えられないから……」
「簡単に魔法を覚える方法なんてないかしらね」
「明日、ギルドに聞いてみる?」
「そうしようか……」
とりあえず、ギルドで情報が無いか探ることにしてみた。そして交換日記を開く。昨日のユウスケの日記を見なおして、なんだか怒りが湧いてくる。怒りに任せて筆を執る。
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【……前半は見なかったことにして……( ;∀;)】
大好きな
ユウスケへ~☆
……ちょっと、またシルビィが気になるの!?
シルビィの事は絶対に話さないからね!!(--〆)
私以外の女の子に興味持ったら承知しないからね!!
もう、ユウスケなんて、しら……。
……ごめん、勢いでここまで書いちゃった……。
書いてて冷静になったら、シルビィ、魔力0なのよね……。
どうしようかなぁ……( ;∀;)
……シルビィ魔法覚えてくれないかな……。
うん、水族館の話、聞きたいな……。
行ったら、是非聞かせてね!
私は魔王城目指して頑張るからね♪
ユウスケ、いつもありがとうね☆
P.S.
試しに魔法を使ってみたけど、
ユウスケの言う通りだった……( ;∀;)
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「……」
途中で怒りは冷めたので、タイトルを書き換えて途中からユウスケに相談してみた。なんかいい方法があればいいんだけど……。本当にシルビィが魔法使えればなぁ……。そうして交換日記を閉じる。私の悩みも解決するよと言っているかの様に交換日記は優しく私も光りに包み込んでユウスケの元に届いたことを知らせる。
「魔法……ですか?」
「はい、どんな魔法でもいいんです。簡単に覚える方法ありますか?」
「そう……ですね。このギルドにはそのような方法は……」
「そうですか……」
「あ、ちょっと待ってくださいね。魔導書を知る老人がこの街に居ましたので……」
「魔導書?」
「はい、読むと魔法を覚える魔術の本です。詳しくはその後老人に伺ってください」
私とシルビィはギルドで情報を貰い、その老人の元へと向かう。魔導書……もしこれで魔法が使えるようになるのであれば、シルビィに覚えてもらって、ファンファーレ・レイも使えるようになるかも知れない。藁をもつかむ気持ちで老人のもとを訪れる。
「これは……勇者様。私めのような老人を頼りにしてくださるなんて……」
「あの……魔導書について知りたいんです」
「そうでしたか。かつてこの世界で壮大な力を持っていた賢者様が封印した魔導書があります。私はその末裔でして……。時が来た時にその力を求める者に託すよう、使命を預かっておりました。失礼ですが、勇者様。腕のステータスを見せていただけぬでしょうか」
「はい、大丈夫ですよ」
「おぉ!! これは……。……魔導書は威力が壮大なため、誤った使い方をされぬよう封印してきておりました。勇者様達ならきっと正しい使い方をされるでしょう。これはその洞窟を封印している鍵です。どうか魔導書の力を上手く使って、この世界をお守りください」
「ありがとうございます。その……魔導書と言うのは、読めば魔法を覚えるんですか?」
「さようでございます。魔力にて造られた本ですので、読めば賢者様が封印した魔法を使えるようになります」
「ありがとうございます! えっと……その神殿は……この地図に印を付けてもらえますか?」
「分かりました。ここになります。ちょっとここからは遠いのですが……」
賢者の末裔と言われるおじいさんに、魔導書が封印されえいる洞窟の情報を貰い、次の目的地を定める。ちょっと遠回りになるけど……仕方ない。私はシルビィに同意を求める。
「ちょっと遠回りになるけどいい?」
「うん、大丈夫!」
「これで、シルビィも魔法覚えられるかもね!」
「……なんかちょっと違う気もするけど」
「ここまで遠いね……どうやって行く? 歩いてでもいいけど……」
「……スルーしたね。まぁ、良いけど。私飛空艇乗ってみたいな♪」
「飛空艇?」
「そう。この街には空飛ぶ船があるらしいの♪ それに乗ればすぐに着くんじゃないかな?」
「それ、楽しそうね! そうしましょ!」
そして、飛空艇の止まる港に行き手続きを済ませる。出発は明日。一旦宿屋に戻り体を休めることにした。休んでいると交換日記が光りだし、ユウスケの返事が来たことを知らせる。私は交換日記を手に取り、ユウスケが書いた新しいページに目を落とす。
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【簡単に覚える方法ねぇ……。】
大好きなリノンへ。
……わかった、前半は見なかったことにしたい…。
けど、もう少し僕を信用してほしいな…。
今日は水族館の宿から書いてるよ。
明日の朝一から水族館に入る予定なんだ。
……確かに…リノンが言うように、こういうのが僕の冒険のような気がするよ……。
リノン、ありがとう。
魔法……剣士って覚えること出来るの?
以前勉強で覚えるとかも聞いたけど……。
……その方法は時間的に難しいよね……。
都合よく簡単に覚える方法なんてあるかな……。
じゃあ、またね。
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「ユウスケも冒険かぁ……」
ユウスケの冒険も見つかったらしい。私はそんなユウスケを応援したい。交換日記を閉じて、私は瞼を閉じる。そして私の冒険も歯車が回りだす。
「お姉ちゃん! 乗るよ!」
「うん! うわぁ……大きいね!」
「でも、乗れるところは小さいみたいよ?」
「そうなんだ」
飛空艇乗り場ではしゃぐ私とシルビィ。初めての飛空艇。こんな時ぐらいは勇者の顔を捨てて年相応の女の子に戻りたい。めい一杯はしゃごう。旅の事を忘れて……。飛空艇に乗り込み、外の景色を二人で眺める。
「うわぁ……空飛んだ!!」
「街がどんどん小さくなる!」
「お姉ちゃん、雲が迫ってきた!」
「うわぁ……曇ってこうなってるんだ……」
「見て! 大陸が小さく見える! 地図みたい!」
「本当だ!!」
初めて見る空の旅で、二人ではしゃぐ。空に浮かぶ感覚、不思議だった。変な浮遊感。そして進む速度も速いらしく、どんどん大陸の景色を追い抜いていく。しばらくするとはしゃぎすぎて、二人とも眠ってしまったようだった。
「お客様……お客様?」
「あ、はい!」
「到着しましたよ?」
飛空艇の船員さんに起こされて、私は周りを見てみる。すでに飛空艇の止まる飛空艇乗り場についていたようだ。私は隣で眠るシルビィを起こして、船員さんに挨拶をして飛空艇を降りる。
「……寝過ごしちゃったね。お姉ちゃん起こしてくれてありがとう」
「うん……着陸するところも見たかったね」
もう一度地図を確認すると、洞窟の位置はこの街から少し行ったところの村のそばにあるみたいだった。この村を拠点にして、魔導書の洞窟を攻略しよう。とりあえず今日はこの街で休憩。私はシルビィに話しかける。
「今日はここで宿って休みましょうか?」
「うん!」
「そのあとは、この村に行って、洞窟攻略しましょ」
街の宿をとり、休憩をする。飛空艇の中で眠ってしまったが、乗り物の疲れなのか少し眠い。私は交換日記を取り出して、日記をつける。
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【魔導書っていうの探してみるね。】
大好きなユウスケへ☆
……わかった……。
……でも、ついほかの女の子に、とられちゃうんじゃないかな……って。
……ゴメン……。
ちょっと、シルビィの事、書くね。
……出来るだけ、嫉妬しないようにするから……。
なんかね、「魔導書」っていうのがあって、
魔法がけられた本なんだって。
で、1度読むと……と、言うか勝手に、読まされるらしいんだけど……。
そうして魔法を覚えることが出来るんだって。
ちょっと寄り道だけど、その本のありかまで、行ってみようと思うの。
今日はこっちの事ばかりで、ごめん……。
次、水族館の事聞きたいな……。
じゃあ、またね~☆
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ヤキモチの意地悪。でも素直な気持ち。ユウスケの事、他の女の子にとられたくない。ユウスケの考えも私の事で支配したい。少し……前より私元気になったのかな? ユウスケと逢えるかも知れない望みが見つかったから。その想いを胸に交換日記を閉じる。抱きしめた交換日記は私も包んで光り、そしてユウスケに想いを届けたことを知らせる。




