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32話 最終魔法:ファンファーレ・レイ

 魔王の情報を得た私とシルビィは、とりあえずその方角を目指して進むことにした。地図に記された場所はここからはかなり離れている。私の冒険の終着点。そして魔王を倒した後……私とユウスケはどうなるのか……。不安を抱えながら進む。ジャングル地帯も広大で私達はそこからまだ抜け出せずにいた。迫りくるトラの猛攻を蹂躙しつつ、先へ先へと進む。地図によるとこの先に村があるらしい。日の落ちるまでにそこにたどり着くように先へと進む。


「お姉ちゃん! 村が見えてきたよ!」

「うん!」


 村に入り、宿をとり私達は落ち着く。お風呂で返り血を流して部屋でくつろぐ。そして交換日記を開き、ユウスケの日記を見る。


 ------

 【また水族館に行こうと思う。】


 大好きなリノンへ。

 ……うん、怖いもの見たさでも、あれは……なかったよ……。

 でも、店長の料理は美味いから、こっちに来たら、

 ぜひ来てほしいな。


 そういえば、僕も料理を覚えなきゃだったね…。

 いつかリノンがこっちに来た時に、料理上手くなっておくね。


 僕の冒険は、もう一度水族館に行こうと思う。

 もしかしたら、リノンにとっては、つまらない話になるかもしれないけど……。

 今度、別の水族館に行こうと思うんだ。

 良ければ、聞いてほしいな。


 じゃあ、またね。

 ------


 ユウスケの言葉が温かい。交換日記を重ねていく毎に、私の想いが募っていくことがわかる。逢いたい……ユウスケに……逢いたい……。そんな気持ちが溢れ出す。今までの日記でもユウスケと沢山約束をした。向こうの……ユウスケの世界に行って、色々と連れてってもらう。絶対に……約束は守ってもらう。守ってもらいたい。そう……守って……。私の目に涙が溜まる。


「お姉ちゃん……」

「うん……大丈夫」

「うん……」


 私の不安を敏感に感じ取って、心配するシルビィ。きっと……シルビィも複雑な気持ちなんだろう。魔王を倒すための手がかりは入手できた。でもユウスケと逢うための手がかりは見当たらない。私とシルビィ……そしてこの世界の物語はもうすぐ終わる。そして、私とユウスケの物語はまだ終わらないと信じて……。私とこの世界の物語の先にその答えがあると信じて……。


「勇者様、おはようございます」

「おはようございます」

「勇者様のご武運を信じておりますので。そうそう、魔王軍の情報ですがおそらくこの街に行くと手がかりがあるかと思います。そちらに行ってみてはどうでしょうか?」

「ありがとうございます。地図だと……この街ですね?」


 宿屋の主人から情報を仕入れて、私とシルビィは印を付けてもらった街に進む。途中ジャングルのトラを殲滅しつつ、先に、先へと進んでいく。紹介された街はとても大きくギルドもあるようだった。街に着くと宿屋に入り、今日の疲れを癒す。そして交換日記の続きを私が記す。


 ------

 【水族館、覚えたよ!】


 大好きなユウスケへ☆

 うん♪ 料理期待してるね~☆

 ユウスケのお店にも行ってみたいな。


 水族館ね……うん、大丈夫よ?

 ちゃんと、水族館の事、覚えたんだから♪

 ぜひ、聞かせてほしいなぁ……。

 ユウスケが思ったことや、感じたこと……全部……。


 冒険して、成長したって、私も感じたいの。

 魔王城はね、もう少し先のところにあるの。

 私、頑張るからね!!


 このあたりは多いのかしら?

 ずーっと、トラのモンスターと戦ってる気がする……。

 なんか、色や強さが違うような気もするけど……。

 今日も、血まみれ娘のリノンちゃんでした~(^_-)-☆


 じゃあ、またね~☆

 ------


 うん……私も成長したよ? これもユウスケが交換日記で支えてくれてるおかげ。ユウスケ……大好きだよ? ぜ~ったいに逢いに行ってやるから! 私達の冒険が終わったら必ず……。私は交換日記を閉じて抱きしめる。交換日記が放つ光に私も包まれる。交換日記の文字だけでは無く、私の想いも伝わってほしい。そう願いながら。


「この街のそばに魔王軍が建てたという城があります。我々も倒そうと何度も試みましたが、ここのモンスターが強くて、私達では歯が立ちません。どうか勇者様、私達をお救いください」

「分かりました」

「おそらく……ここを攻略すれば、魔王の城ももうすぐです。どうかご武運を!」


 ギルドから有益な情報を貰い、魔王軍の城へと進んでゆく。魔王軍の城……これで幾つ目だろう。おそらくはこれが最後の城。レベルが上がってるとは言え、気を抜いてはいけない。私達は襲ってくるトラのモンスターの血を壁に貼りつけながら、城の奥へと進む。最後と思われる扉を、シルビィと一緒に開く。そこには首を3つ持ったモンスターが鎮座していた。モンスターは立ち上がり、私達に向かって語り掛ける。


「我が名はケロベロス。愛しき魔王様に変わり、ここで勇者を亡き者にしてやろう!」

「分かったわ! かかってらっしゃい!!」


 私とケロベロスが睨み合い、シルビィは横からケロベロスを睨む。まず動いたのは私。ケロベロスに向かって毒針を突き立て突進する。続いてケロベロスが走り寄る私に向かって爪と牙で襲い掛かる。シルビィはその様子をうかがっている。私は牙を向けていた一つの首を毒針で横に薙ぎ、首をはねる。ケロベロスは怯む様子もなく、私に爪を突き立てる。爪は私の肩を抉る。


「っ!!」

「お姉ちゃん!!」


 レベル差もあり、私にダメージはほとんど通らない。先ほどとは逆に持った毒針で、2つ目の頭を突く。ケロベロスには痛烈なダメージが入り、流石にこれは効いたのであろう、ケロベロスが一歩後退する。そこでケロベロスが残った頭で語り掛けてくる。


「流石だな、勇者よ」

「あら? ずいぶん余裕ね?」

「ふっ……我の命も残りわずかだ。次の一撃で決める!」


 そして。ケロベロスは私に向かい飛び掛かり、私もケロベロスに向かい突進する。言った通りケロベロスにはもう余裕がなかったようで、大振りの爪は私をかすめる。すかさず私はケロベロスの急所、胸元に毒針を突き立てる。


「お、お見事……。魔王様……ご武運を……」


 その言葉の最後にケロベロスはこと切れる。そして私の腕がほのかに光る。レベルアップだ。今までもレベルアップは何度も経験しており、日常の光景だったが、今回は特別だった。


「お姉ちゃん!!」


 私はそのレベルアップと共に意識を失ってしまった。


「リノンよ……リノンよ……」

「あなた……は?」

「始まりの勇者……とでも答えておこう」

「始まりの……勇者?」

「リノンよ……私が長年待ち望んでいた勇者に育ったな……」

「え?」

「リノンが今のレベルアップで覚えた魔法は、私が魔王専用に作った魔法なのだから」

「……」

「いいか? よく聞け。今まで魔王は私達歴代の勇者が倒す間際に、強制休眠に入ってしまっていたのだ。リノンに託す……いやリノンが覚えた魔法『ファンファーレ・レイ』をもってすれば、今までの厄災であった魔王を完全に消滅させることが出来る」

「……魔王を……消滅?」

「そうだ。魔王は蓄積された悪の意思そのものだ。『ファンファーレ・レイ』は祝福の魔法。魔王を浄化することが出来る」

「……浄……化?」

「そう、浄化だ。だから彼女も救ってやってほしい」

「彼……女?」

「この『ファンファーレ・レイ』は仲間の魔力を使い、その魔力の100倍の攻撃力とともに、浄化させる魔法だ。仲間が多いほど威力は上がる。どうか、世界と彼女を救ってくれ……リノン」


 始まりの勇者はそれだけ言うと、光の中へ消えていき、私の意識も薄れていく。


「お姉ちゃん! お姉ちゃん!」

「ここ……は?」

「よかった! お姉ちゃんが、お姉ちゃんが……」


 泣き崩れるシルビィ。私は周りを見渡すと、どうやら宿屋のようだった。部屋の飾りつけに見覚えが無いので、私がまだ泊ったことが無い宿屋と思われる。私はベッドから起き上がり、シルビィに話しかける。


「ごめんね……ありがとう」

「ううん、目を覚まさないって……心配して……」


 シルビィを落ち着かせるために、私はシルビィの頭に手を乗せる。泣きじゃくるシルビィは少しずつ落ち着きを取り戻していく。


「大丈夫よ。ちょっと夢見てただけ」

「ゆ……め?」

「そう。私、新しく魔法を覚えたみたい。『ファンファーレ・レイ』って魔法。それを始まりの勇者って人が、色々教えてくれる夢。これで魔王を倒すと、魔王を浄化できるんだって」

「浄……化?」

「うん、私もそこは詳しくわからないけど……歴代勇者達とは違う倒し方が出来るみたいなの」

「そう……なんだ」

「そう……今までとは違うエンディング。誰も見たことが無い結末みたい」


 まだこの魔法の意味は分からない。でも……この魔法で未来が変わる……そんな予感もした。そしてそのタイミングで交換日記が光りだす。ユウスケからの返事だ。私は交換日記を手にすると、ユウスケの日記を眺める。


 ------

 【ついに魔王城が近づいた?】


 大好きなリノンへ。

 うん、料理、約束するよ。

 水族館、本当に覚えたのかな……。

 食べ物屋でも、捕り放題のお店じゃないからね?

 そうそう、海鮮の食べ物屋は調べたから、もし来れたら行こうね?


 魔王城の事、ごめん……。

 僕の事でいっぱいで、話しそびれちゃった……。

 もうすぐで魔王城なんだね?


 今はレベルいくつぐらいなの?

 装備は……聞くまでもなさそうだけど……。


 なんか、生き生きとしているリノンの活躍聞くと、僕の事のようにうれしくなるよ!


 じゃあ、またね。

 ------


「私の活躍……かぁ……」


 もし、私の活躍を見てユウスケが喜んでくれるなら、それはそれで嬉しい。私……いっぱい頑張ったよ? いっぱい苦しい思いしたよ? だから……。今すぐ逢いたいよ……。いや、わがまま言っちゃダメだよね? 私……もっと頑張ってそっちに行くから! ユウスケ。待っててね。


 そして翌日。新しい街に私達はたどり着いていた。いつものように宿に泊まり、体をきれいにして宿屋の部屋でくつろぐ。そして交換日記を手にして、私は綴る。


 ------

 【リノンの日記 最強魔法、その名も……!!】


 大好きなユウスケへ☆

 ……ぎくっ……(;´・ω・)

 ……な~んてね♪


 実は、私、ユウスケの世界ってところも少し調べてみたの。

 ユウスケの好きな水族館ってどんなところかな……って。

 展示してあるお魚を見るだけの場所なんだね。

 ……私の「魚好き」は食べるほうだけど……(´・ω・`)


 でも、ユウスケの好きなこと、私も理解したいと思うんだ……。

 だから、私も連れてってねー☆


 そして!

 なんと、レベル75になって、最終魔法を覚えたのー(^_-)-☆

 その名も、「ファンファーレ・レイ」!!

 仲間の魔力×100倍の攻撃をする魔法で、魔王をこれで仕留めると、裏エンディングなんだって~☆

 これで、私もチーターかな?


 じゃあ、またね~☆

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